支えてくれる君へ
随分時間が経った。骨折の状態で日常生活がままならないので入院生活も自然と長くなった。独り身がこんなにも不便な事なのかとしみじみ思ってしまった。
そんな入院生活での楽しみはやはり仔猫の成長だった。足の具合は変わらなかったが、それでも毛並みは良くなり肉付きも良くなっていった。何より成長速度に驚かされた。僅かの間にどんどんと大きくなっている。
嬉しい。思わず笑顔になっている。
親心に似ているのかな。
もちろん親になったことは無い。この感情が何て表現されるべきモノなのか分からなかった。
ただ地味で辛いリハビリに取り組むモチベーションになったのが有り難かった。待ってる存在が居る。心強い。
こんなにも心が豊かになったのはいつぶりだろう。記憶を辿るが思い出せない。父の帰りはいつも遅く、決まって一人だった。それに慣れすぎてしまって、父が帰って来るのを待つことも、いつしかしなくなった。
誰も居ない暗い家に帰る。僕が眠った後に父は帰宅し、僕が起きる頃に父は仕事に出掛けた。コンビニ弁当などを嫌った父はいつも手作りの料理を作っておいてくれた。それを温め直して一人で食べた。美味しかった、父は料理がとても上手だったのだ。父の優しさに触れてる様で毎日ご飯が楽しみだったのを覚えてる。
寂しさには慣れている。はずだ。
感傷に浸るのを避ける為に、自分も仕事に没頭した。
やっぱり父さんの子なんだな。
折れている肋骨がズキズキと痛んだ。
そうきっと骨折のせいだ。
退院したら仔猫の為に色々揃えなきゃな。頭の中で必要になりそうなモノをランナップする。とはいえ初めての経験なのでいまいち分かってはいない。きちんと調べておかないとな。
きっと賑やかになるだろう。
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