少し震える君へ
走る、走れ。
息が切れる、喉が乾く、心臓が飛び出しそうだ。けれども少しでも早く君を迎えに行きたい。
たまに息の吸い方を間違えてむせる。十分運動はしてるつもりでも、単純に走るとこんなにも目的地まで遠く感じるのか。
自転車で来れば良かったかな。
でも帰りのことを考えたらこれがベストだった気がする。
驚かせない様に息を整えなくては。
唾と息を飲んで、ぜぇぜぇと言う喉を落ちかせる。
もう少し。あと少し。
やっと着いた、茂みをかき分ける。
あれ、居ない。
そこには前日の使い捨ての深皿しか無かった。
驚いてにげちゃったのかな。
少し探さなきゃな、近くだと良いけど。
ふと嫌なイメージがよぎる。
僕が牛乳をあげたばかりに少し元気になって動ける様になったからって、そんな遠くには。
辺りを見回す。行き交う車のヘッドライトが流れては黒を帯びた街を照らしては暗くなり照らしては暗くなる。
どこだ。
嫌なイメージがよぎる。走ったせいでは無い汗が出る。
移動しながら足元をキョロキョロと見回す。傍から見たら不審者極まりないが、気にしてる場合では無い。
ふと視界の端に小さい影が映った気がした。
視線をやる。車道に出てしまっている。
車が来る前に早く早く、危ないよ。迎えに来たよ。
車のヘッドライトが近づいてくる。
やばい。
でも、安全装置で減速するはずだ。
しかし、車は減速する素振りを見せない。小さすぎて反応していないのか。
君は驚いて硬直してしまっている。
無意識に走り出していた。
間に合うか、せめて歩道に投げれれば、駄目だ間に合わない、抱えて、、、思考はドーピングしたかのごとく一瞬で大量の情報を処理している。
激しい衝撃。聴いたことの無い音が聴こえた気がした。
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