第339話 おこってもいいよね (3)
誰もいない校舎の廊下。一人靴音を響かせ歩く男、どうも、のっぺり佐々木改め佐々木大地です。
いや~、いかんいかん、さっきはつい感情的になってしまいました。
だってあいつら人の話し聞かないし、何時までも"ひろし君ひろし君"ってやかましわボケーってつい。これもあんな惨状に人の事をぶち込んだ吉川が悪い。全員ちゃんと撤収したみたいだし、これで良し。
さてはてそれで肝心の校長室は何処かいなっと。
「ちょっと貴方、こんな所をうろうろと何組の生徒さんかしら?」
ん?この流れ、以前やった事がある様な。
「新入生の男子生徒なら今別室に集まってクラス別けの説明を受けているはず。貴方怪しいわね、申し訳ないんだけど手を上げてゆっくりこちらを向いてくれるかしら?」
俺は言われた通り両の手を上げてゆっくりと振り返る。
「短く切り揃えられた艶のある黒髪、すらりと伸びた両足を肩幅に広げ、切れ長の美しい瞳でこちらをしっかりと見据える。腰に当てた左腕の肩には"風紀"と書かれた腕章、彼女こそ私立桜泉学園高等部の守護者、風見屋鈴子先輩その人であった~!」
「あんた、のっぺり!何恥ずかしいナレーション入れてくれちゃってるのよ。大体貴方外部進学生徒の紹介の時いなかったじゃない、どこ行ってたの!初日からサボりって言うなら風紀委員として放置出来ないわよ。」
顔を真っ赤にして高らかと宣言する風子さん。相変わらず仕事熱心でいらっしゃる。
自分その事で校長室へ呼ばれているんですけどね、この学校広過ぎですって。ぜひ校内案内図の設置を提案致します。
「うんうん、その気持ち分かるわ。私も何度も懸案書として議題に上げているんだけど、伝統ある学園の景観が損なわれるとか言って却下されちゃうのよね。」
腕組みをし唸り声をあげる風子さん。流石私立桜泉学園高等部の女子制服、オムネが強調されてとっても素敵な事になっております。
それでしたら地図アプリを導入すると言うのはどうですか?
以前駅の反対側にある女子校の文化祭に行った時にやられていた方法なんです。各クラスの場所も検索出来るし、ルート案内迄してくれて便利でしたよ。
「あそこの学校そんな事迄していたの!?何か負けた気がする。でもそれなら理事会の承認も得られそうね、今度提案してみるわ。」
ぜひお願いします。所で校長室へはどうやったら行けますか?
「それなら私が案内するわ、どうせ近くの職員室に用があるから。」
本当ですか、ありがとうございます。いよ、女子生徒の鏡、桜泉学園の女神様。
「も~、お世辞ばっかり言っちゃって~♪早く行くわよ、ついていらっしゃい。」
スキップしながら先導してくれる風子先輩、ちょろすぎる。ザ・チョロイン。これは早いうちに洋一君とくっ付けちゃわないと、駄目男に貢いでいる姿が幻視出来ちゃう。
この人私がいないと駄目だからってあなたがいようがいまいが駄目男は駄目男だから~。
「ん?何か一人百面相してどうしたの?もしかしてお姉さんにメロメロかな~?駄目だぞ、このお・ま・せ・さ・ん♪」
うゎ~、マジで駄目だこの人。洋一君、頼みます、この人貰ってあげて下さい。
「はい、ここが校長室よ。ま、今後何か困った事があったら風紀委員室へ来てくれれば相談に乗るわよ。」
はい、風子先輩もお忙しい所ありがとうございました。
「いいのいいの、気にしないで。後さっき交換したレインもいつでも送ってくれていいからね~♪」
手を振り職員室へ向かう
もしかして俺って駄目男認定されちゃってるとか?
そうじゃないと願いたい。
"ですから鬼龍院校長、事態はそんな甘い状況ではないんです。事は学園の業務停止に及ぶ可能性があるんですよ!?"
"でもそれはあなたがカツ丼を食べさせて懐柔したんでしょ?だったらいいじゃない、何も問題ないじゃない。
大体うちの優秀な警備員が不審者を排除した、それだけの話し何でしょ?
何か多少の齟齬があった様だけど、そんなの間違えられる様な風貌をしたその子が悪いのよ。大体私は反対だったの、そんな子がこの伝統ある桜泉学園に通う事自体ね。
本当に理事会のお年寄りたちは何を考えているんだか。"
「・・・・・ほう。」
"コンコンコン"
"はい、どなたかしら?"
「外部進学生徒、佐々木大地。只今参りました。」
"どうぞ、入ってちょうだい。"
「失礼します。」
ウッド調の室内、品の良い調度品、鼻腔を擽る爽やかな紅茶の香り。
部屋の手前には警備員の制服を着た者が三名、いつかの警備主任と今朝方の警備員が二人。
部屋の奥にはマネジメント部の吉川とスーツ姿の気の強そうな女性。
「初めまして、私立桜泉学園高等部校長の鬼龍院政子よ。あなたが佐々木大地君ね、今朝は大変だった見たいね。
ま、あなたもこの伝統ある桜泉学園の生徒になれたんだから、これは洗礼みたいなものね。
あなたもこの栄誉を失いたくはないでしょ?今後は大人しく我が校の名前に泥を塗らない様にしなさいね。」
目の前にはもう話しは終わったとばかりに手の甲を振る鬼龍院政子校長。口を開け、ただおろおろする吉川。上から目線でこちらを見下す警備員。上司の顔色を伺い何も出来ない警備主任。
これが私立桜泉学園高等部。
ならもう何も遠慮する必要はないな。
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