第730話 『肥前国内行政機構再編制』

 天正十四年七月十六日(1585/8/11) 諫早城


 純正は毛利家への仕置きと併せて、肥前国内の行政機構と、大日本国内での小佐々領内の呼称について改称・改編を行った。


 まず、小佐々家の統治下にある全ての所領を肥前州とした。海外領土も全てである。大日本国内で小佐々の領土を呼ぶときは『肥前州』である。この呼称については特段異論も出なかった。


 その他の国も統治者が世襲で家名を重んずる傾向があるため、織田州、徳川州、武田州……という風にしたのだ。そしてその下にある、例えば尾張国というものの呼称を県に改めた。


 これは行政上の呼称を変更しただけなので、定着するまでは時間の問題である。



 


 ■中国地方……長門県(以下県)・周防・安芸・石見・出雲・隠岐・伯耆・因幡・但馬・美作・播磨・備前・備中・備後。

 中国総督府・安芸吉田郡山(総督:毛利輝元)。


 ■四国地方……讃岐県(以下県)・阿波・土佐・伊予・淡路。

 四国総督府・伊予松山(総督:大友宗麟)。


 ■九州地方……豊前県(以下県)・豊後・筑前・筑後・肥前・肥後・日向・薩摩・大隅・対馬・壱岐。

 九州総督府・諫早(総督:島津義久)。


 ■関東地方……駿河県吉原湊(租借地から正式に割譲の上領土編入・領域は狭いが経済規模は大きいので県)・東上野県(期限付き)・下野県(北部の蘆名領を除く・南部は期限付き・那須家は小佐々に服属)・常陸県(南部は期限付き)・下総県(期限付き)。

 関東総督府・吉原湊(総督:佐竹義重ならびに宇都宮国綱、那須資綱の輪番制)。


 ■東北地方……越中県・佐渡県(越後沿岸港湾部含む)・松前県(渡島半島部分)・西羽後県(大宝寺領除く)・西陸奥県・東加賀県(大同盟時に小佐々、織田、武田、徳川、浅井の分割統治となったが、小佐々と織田以外は飛び地にて統治困難なため放棄。東部を東加賀県として肥前国に編入)。

 東北総督府・加賀金沢(総督:安東愛季・大浦為信の交替制)。


 ■北加伊道地方……松前県を除く北海道全域。千島県・カムチャッカ県(ベーリング・アラスカ)・オホーツク県。

 北加伊道総督府・小樽(総督:アイヌ統治の経験柄から松前慶広。勤務地は小樽)……領域が広大だが人口が少ないために一地方とする。将来的にカムチャッカ地方・オホーツク地方と昇格予定。現在は支所としてオホーツク(オホーツク県)、ペトロパブロフスク・カムチャツキー(カムチャッカ県)。


 ■沿海地方……沿海県・樺太県。

 沿海総督府・ウラジオストク(総督:伊能忠孝)。


 ■琉球(冊封・保護国)。


 ■台湾地方……台湾。

 台湾総督府・基隆(総督:若林鎮興)。


 ■ルソン地方……ルソン県・ビサヤ県・ミンダナオ県。

 ルソン総督府・マニラ(総督:北川清純)。


 ■東南アジア地方……ブルネイ県(王国の支配外に入植領土化)・スラウェシ県(王国の支配外に入植領土化)・インドネシア県(租借地であるが領土として考える)・ニューギニア県・オーストラリア県。ニューギニアならびにオーストラリアは将来的にオセアニア地方として昇格予定。

 クチン総督府・クチン(総督:籠手田安経)。


 ■インド地方……カリカット県(カリカット・ボンディシェリ・マスリパタム)・セイロン県。

 ヴィジャヤナガル王国と国交を結び盛んに交易を行う。

 カリカット総督府・カリカット。

 

 ■アフリカ地方……ケープタウン県(ケープタウン並びに北西のカリビブ・北東のナタールまで)・マダガスカル県(マダガスカル島ならびに周辺島嶼とうしょ部、マリンディ、キルワ諸島他)マリンディはポルトガルの交易の拠点がモンバサにおかれた事、キルワ島も同じくアラブ、インドの交易が制約されたため、小佐々と交易を行い、統治下に組み込まれた。

 ケープタウン総督府・ケープタウン。



 


「あー無理! もー無理! 面倒くせえ!」


 純正は事務仕事が好きではない。


「こういうのは事後承諾と修正だけ俺にやらせてくれないかな~」


 と居室で愚痴る純正であるが、一緒にいた父親の政種はもう慣れた様子である。仕事の主体が京都に移って、年間の6割以上諫早を離れているのだ。


 たまに帰った時くらい、愚痴っても良いだろう。しかしとても嫡男や家族に見せられたものではない。転生人だという事は、父である政種と叔父の純久しか知らない。


 日本の三分の二と南洋、北方、インド、アフリカまで領土を広げた一代の英雄である。偉大な父親であり続けなければならない、というのはつらいところだ。


 本音を言えば、日本国内で争いがほぼなくなり、身内や仲間が危険にさらされる事がなくなった今、純正の目的は達成できたといってもいい。


 大日本国としての問題はまだまだあるが、優秀な官僚のおかげで少しずつではあるが前進しているのだ。


 ぶっちゃけ、大日本国としてより、肥前国としての方がやりがいがある。


「あのー、純久叔父さんとこの、抜群に優秀な子いたでしょ?」


「ああ、確か佐吉といったか? 然れどもうあの子ではないぞ、二十五だ」


「え? もうそんなになった?」


「お前だって、もう三十八で四十路前じゃねえか」


「うわ、もうすっかりオジさんじゃん。親父はもうおじいさんだな」


「俺の事はもういいんだよ。孫の顔も拝めたし家は安泰。何も言う事はない」


 つかの間の団らんである。そう言えば純正は、前世ではこんなにじっくり父親と話した事などなかった。


「そんなに飽きたんなら、いっその事視察名目で、各地を回ったらどうだ。大身になってフットワークも悪くなっただろ? スペイン戦でフィリピン海域に行ってからもう何年になる? 北方から南方、ああ、それからポルトガルにも大使館つくったんだったら、1回くらい向こうの王様と会ったらどうだ?」


 !


「あ! それはいいかもね。国内は……正直あとは奥州だけだし、多分大日本国に加盟を申し込んでくるだろうしな。そうなってくると、いよいよやることがない。いや、あるんだろうけど、肥前国でやってきた事の繰り返しだからな……うーん。おおいに検討しよう」





 純正は内政が好きだ。端から見ると地味なのかもしれないが、地道にやってきた事が結果に表れるのはうれしい。しかし、同じ事を繰り返すのは、やはり単調なのだ。


 大日本国内でやる事は、肥前国でのこれまでの事を繰り返す事に他ならない。


 ……視察はれっきとした仕事である。報告だけではわからない生の情報を、自分の目で見て、耳で聞いて収集して判断する。1年、いや2~3年はかかるかもしれない。





 史上空前の国内視察と外遊の、始まりである。





 次回 第731話 (仮)『天正大地震』

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