第139話 神屋宗湛と島井宗室
同月 小佐々城 小佐々純正
利三郎!と思ったけど、順番があったから、利三郎は後にした。
「久しいな、道喜よ。」
「はは。大変ご無沙汰いたしておりました。弾正大弼様におかれましては、ご健勝の事、お喜び申し上げます。」
「固い挨拶はその方らしくないの。ん、どうしたその二人は?」
見ると二人の青年がいる。いや、一人は俺と同じくらいか。一人は弥市とおなじくらいだろうか。
「はい、お呼びと伺い、それであればご紹介いたした方が良いと思い、連れてまいりました。」
「神屋宗湛にございまする。」
「島井宗室にございます。」
・・・・・!博多三傑やん!どうした?!
「殿様のこれからに、必要だと思いご紹介いたしました。」
大賀宗九は?まだ、十歳未満だ。
道喜め、いい仕事するなあ。
「して、こたびはどの様なご用向でしょうか?」
米だ、と俺は答えた。
「筑前全体が大友に叛いて戦が起きておるだろう?商人から見てどうだ?」
「そうですなあ。米や塩、味噌などは値上がりしておりますな。あとは甲冑・具足類も買い手が多うございます。」
「筑前ではどうだ?」
「それについては私が。」
神屋宗湛が答える。
「まず米ですが、不作でない時の値段がおおよそ一升で十七文、今が三十文ほどに上がっております。甲冑・具足はそこまで上がっておりません。味噌・塩も同じく、味噌が十四文が二十五文、塩が九文が十七文とおおむね倍に跳ね上がっております。米はあまり食べませんが、味噌と塩はなくてはなりませぬ。昨年の十月に立花様が戦をはじめてはや一年。上がったままで、いまだに変わらぬ値に、民は苦しんでおりまする。これ以上続けば、一揆が起きてもおかしく有りません。」
「なるほど。割りを食うのはいつも庶民。令和も今も変わらぬな。」
三人の顔が俺に集中する。
「あ、うん、ごほん。それで、筑後と豊後はどうだ?豊前は・・・、さほど変わりないか?」
「次は私が。」
今度は島井宗室が答える。
「おっしゃる通り、豊前はさほど変わりありませぬ。例年より多少上がってはおりますが、変動の幅は予想内でございます。豊後は豊作ゆえいくぶん安く、筑後・肥後も大差ありませぬ。」
「あいわかった。道喜よ。」
「はは。」
「二人に米を売ってやれ。味噌と塩もな。塩は腐るほどあるから、相場より多少安くても儲けはでるだろう?二人はそれを筑前で売るといい。ただしあまり暴利はとるなよ。民の怒りは、どこにころぶかわからんからな。それから、しっかりと『肥前の小佐々様が安く売って下さった』と言いふらすのも忘れるな。」
「道喜、新米から売るなよ。保存の事もあるから、申し訳ないが古い米から売ってくれ。」
道喜も儲かるし、二人は儲けて民衆に感謝される。ウィンウィンだねえ。
「初めて引見させて頂いたにもかかわらず、格別のご高配、痛み入りましてございます。」
二人は言う。道喜は横でニコニコしている。
俺を紹介した君は鼻が高いって?まあ確かに、道喜には返せないほど世話になってるしね。今の小佐々の経済は、道喜なくしては得られなかった。やっぱり、人だよね。
「それから三人で豊後、筑後、肥後で米・味噌・塩を買えるだけ買ってくれ。道喜は・・・何をしようとしてるかわかるな?あとの二人は、もし、不安だったら買い付けの資金は全て俺がだそう。これなら損がない。それでどうだ?」
二人は目を丸くしていたが、やがて
「いえ、それでは私ども商人の名折れ。いかがでしょう。費用半分にて、儲けも折半では。」
「あいわかった。それで良い。俺はどっちでもいいからな。これで儲けようとは思っておらん。」
二人は顔を見合わせている。
「もちろん、損はしたくない。しかしそれでも二人の博多の豪商が味方になれば、心強い事この上ない。そうではないか?」
俺は声に出して笑った。二人は狐につままれた様になりながらも、笑顔を見せる。相変わらず道喜はニコニコしている。
「それで、どこで売るのです?」
「筑前で売っても良いが、あまり同じ場所で売っても儲けは出ぬだろう?だから、来年折を見て豊後で売れば儲けは出るだろう。もしくは来年か再来年に出雲・伯耆・因幡・備後あたりで売れば儲かるだろうな。」
「それから肥後だけは別だ。肥後だけは売らずに買い続けてくれ。」
「出雲に伯耆、ですか?それは・・・もしや・・・大きな戦が起こるので?」
三人が俺を見る。
「確実ではないぞ。おそらくだ。」
二人の心配をよそに道喜は、
「ありがたき幸せにございまする。この道喜、お申し付け通り米・味噌・塩の売り買い、承りましてございます。」
二人も慌てて平伏する。
「よろしく頼む。」
三人は下がっていった。
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「利三郎、待たせたな。」
「とんでもございません。してこたびはどの様なご指示でしょうか。」
「なに、北肥後の衆と誼を結びたくてな。」
「北肥後の隈部・赤星・城、それから内古閑と小代に会って、昵懇になりたいとつなぎをつけてくれ。それから、内古閑と小代はどんな人物か観察してきてくれぬか?」
「つなぎをつけるだけで良いので?」
「うむ。今はそれでよい。そうだ、手土産に石けんか椎茸でも見繕って持っていけ。」
「はは、かしこまりましてございます。」
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「千方、まだいるか?」
「は、こちらに。」
千方が現れた。
「千方、尼子の件、頼むぞ。世鬼衆には気取られるなよ。来年から再来年にかけてだから、間延びせずにしっかりな。時期が大切だから、三河守にも重々申し伝えたが、連携して頼む。間違えるなよ?」
「お任せください。」
いつも千方は自信に満ち溢れている。うらやましい。
さて!これでいいかな。細工はなんとか仕上げをなんとかだ。
(↑もはや原型がない)
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