第2話 漆黒の竜騎士
翌朝。朝と言ってもカノンのそれは他の地域と比べて異様に遅い。切り立った
住む場所を選べない連中は、ほぼ終日、陽の暖かみを感じられない者すらいる。
それに比べたら山岳の上を陣取れたヴァイロとリンネの住むツリーハウスは、充分
「ヴァイーーっ!」
「いい加減に起きて下さいませんか」
木の根元から呼び掛けてくる少年と少女の声。ヴァイロの夢にも現れた二人だ。遠慮なく大声を出しているのが、最年少12歳のアズール。
この若さでヴァイロが授けた炎系の魔法を
その
彼女は魔法を
性格がアズールと正反対で、一見ウマが合わない様に見えるが、歳上というマウントを活かして、
グレーの長い髪にやはりグレー系の
それを少し離れた樹々の影から黙って二人を見ているのが15歳のアギドだ。彼は二人と大分
四角いレンズの眼鏡をかけており、腰には2刀の
無口で
青い髪の毛も彼のクールな性格にマッチしている。
三人は今日も
「フワァ……ごめん、待って。今起こしてるとこだから」
彼女はこの若過ぎる三人をまとめ上げると共に、大きな
「ほおらっ!
リンネが
「あ……ひ、昼? 嗚呼、もうそんな時間か」
眠い目を
嫁よりも気が
それ以上の一線を超えられないのは、互いにその気がないのか。
リンネの
穏やかの波の音、しっとりと降る雨音、小鳥のさえずりなんてものすらある。そして生活の足しになる程の
まだある……彼女はハープを
これは当然プロの仕事と
一方、ヴァイロは弟子こそ取るが金は取らない。よって住居を提供しているものの、完全にリンネの稼ぎだけが頼りなのだ。
ヴァイロにしてみれば、どんな
だがそれはこの男が芸術という言葉を知らな過ぎた。
ライブで演奏をしているからこそ、相手の
ただこのヴァイロという男。森の女神『ファウナ』の力をベースに自らが考案した魔法の能力には定評がある。
自分が暗黒神など世間から呼ばれているのは流石に
今日もこうして弟子達が教えを
教える事はもう何もない……というのは言い過ぎ。まだ見せてすらいない上級魔法は確かに存在する。
なれどそれらを教えても、この平和な島では使い道がない。
結果、教える事は何もないに終着する。此処に来て貰っても、出来る事はレクリエーション位なものである。
ツリーハウスの中から聞こえるやり取りに、ミリアだけが複雑な表情で見上げている。
リンネが未だに同居人の一線を超えないのであれば、自分にもまだ芽はあると、
やがて身支度を適当に済ませたヴァイロが、ツリーハウスから降りてくる。その
毎日の出来事なのだが、それを見たミリアが顔を
(いつか自分があの場所に……大体こんなガサツなの、どこが良いのかしら?)
(御覧なさい……ほらっ、
うら若き少女達の争いがある事をヴァイロは認知していなかった。
そんな平和ボケしているやり取りを、アギドは呆れた目で
アズールが背中に何かを隠しながら師の元に駆け寄る。
「ところでさ、見ろよコレっ!」
自分が描いたのであろう絵を見せてきた。真っ黒に塗り
「と、トカゲですか?」
「違うっ!」
「ええ……とぉ、未確認生命体?」
「う、宇宙人じゃねえっ!」
ミリアとリンネに判って貰えず、
「これは黒いっ、ド・ラ・ゴ・ンっ! 竜っ! このカノンにいたら格好いいと思わねえか?」
アズールが自分の描いた絵を
「あ……」
「そ……そうねぇ……」
「フゥ……くだらんっ」
ミリアとリンネはそっぽを向いて、かなり取り合えずな
そんな中、ヴァイロだけが面白そうな顔をしてアズールの絵を
そして絵の中の黒い竜を至る景色に当てはめて、一人で何やらブツブツ言っている。
「……陽の当らないカノンを守護する黒い竜。それに
「ヴァイーっ! 一体どうしたってんだよ!?」
「アズっ、この絵貰うぞっ!」
先程のまでの
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