ChatGPTに難関大学の数学入試を解いてもらった

田中勇道

ChatGPTに京都大学の数学入試解かせてみた

 

 2023年に入ってから巷で話題になっているChatGPT。カクヨムでも創作に利用している方は多いようです。

 小説の本文、タイトルやキャッチコピーを代わりに書いてもらうのもいいですが、ほかの人があまりやっていないことをさせてみようと思い、この作品(ジャンルはエッセイ?)を書くことにしました。

 本題に戻って今回ChatGPTに解いてもらうのは、2005年に京都大学文系で出題された問題です。


 a 3b 3=65を満たす整数の組(a,b)をすべて求めよ


 難易度は難関大入試では比較的易しい方です。高校数学をある程度理解できている方なら完答できると思います。

 問題文を正しく認識してもらうため、式の文字は半角にして次のように打ち込みました。

 

 a^3-b^3=65を満たす整数の組(a,b)をすべて求めてください


 記号「^」は累乗を表わすときに使います。学校で習うピタゴラスの定理a 2+b 2=c 2ならa^2-b^2=c^2となります。


 ChatGPTの解答は次の通り(見やすくするために改行しましたが文自体はそのままです)。


 与式a^3 - b^3 = 65を満たす整数の組(a, b)を求めるには、以下の手順に従うことができます。


 まず、a^3 - b^3 = 65を因数分解します。因数分解すると、a^3 - b^3 = (a - b)(a^2 + ab + b^2) = 65となります。


 次に、因数分解した式を用いて、a - bとa^2 + ab + b^2の2つの方程式を解きます。


 ・a - b = 1, a^2 + ab + b^2 = 65

 ・a - b = 5, a^2 + ab + b^2 = 13


 これらの方程式を解くために、以下の手順を行います。


 ・a - b = 1の場合、a^2 + ab + b^2 = 65をaについて解くと、a = (-b ± √(4b^2 + 261)) / 2となります。

 

 この式から、bが整数である場合、√(4b^2 + 261)は整数でなければなりません。つまり、4b^2 + 261 = k^2となる整数kが存在する必要があります。この式を変形すると、b^2 = (k^2 - 261) / 4となります。

 

 右辺は整数であるため、k^2 - 261は偶数でなければなりません。また、k^2 - 261 > 0であるため、k > √261となります。

 

 これらの条件を満たす整数kに対して、k^2 - 261が4で割り切れるようなbを求めます。そして、そのbに対して、a = b + 1を計算します。


 ・a - b = 5の場合も同様に、b^2 = (k^2 - 13) / 4となる整数kを求め、k^2 - 13が4で割り切れるようなbを求めます。そして、そのbに対して、a = b + 5を計算します。


 以上の手順を実行すると、与式a^3 - b^3 = 65を満たす整数の組(a, b)は以下の通りです。


 (a, b) = (4, 3), (8, 3), (-5, -6), (-1, -6)


 文字数はおよそ670文字。時間は測っていませんが、体感的に一分もかからず書きおえてしまいました。ChatGPT恐ろしい。

 ただ、代入してみればわかるように思いきり間違えています。4つの組すべて題意を満たしません。どこが間違っているのか解答を区切って見てみましょう。符号も見やすくするために半角から全角にします。


 >まず、a^3-b^3 = 65を因数分解します。因数分解すると、a^3-b^3 = (a-b)(a^2 + ab + b^2) = 65となります。


 出だしはOKです。因数分解も正しくできています。


 >次に、因数分解した式を用いて、a-bとa^2 + ab + b^2の2つの方程式を解きます。


 ・a-b = 1, a^2 + ab + b^2 = 65

 ・a-b = 5, a^2 + ab + b^2 = 13


 惜しい。考え方(そもそもAIは思考していません)は悪くない。が、


 ・a-b = 65, a^2 + ab + b^2 = 1

 ・a-b = 13, a^2 + ab + b^2 = 5


 の場合も考慮する必要があります。また、65=(-1)・(-65)=(-5)・(-13)なので


 ・a-b =-1, a^2 + ab + b^2 =-65

 ・a-b =-5, a^2 + ab + b^2 =-13

 ・a-b =-65, a^2 + ab + b^2 =-1

 ・a-b = -13, a^2 + ab + b^2 =-5


 も考えなければいけません。ただ、仮にaとbがともに負の数であっても、負の数同士の掛け算は正の数なのでa^2 + ab + b^2は正の数です。

 

 またaが正でbが負の数の場合、a^2とb^2は正でabは負の数ですが、a^2+ b^2≧abなのでa^2 + ab + b^2が負の数になることはありません(aが負、bが正でもしかりり)。なので、この4パターンは除外されます。では、ChatGPTの解答に戻りましょう。


 >・a-b = 1の場合、a^2 + ab + b^2 = 65をaについて解くと、a = (-b ± √(4b^2 + 261)) / 2となります。


 うーん……。僕の知識が足りていないのか、どのような方針で解こうとしているのかわからない。式の形からして二次方程式の解の公式を使ったのでしょうか。


 おさらいしておくと、二次方程式、ax 2+bx+c=0の解の公式は


 x = (-b ± √(b^2-4ac))/2a


 おそらく、ChatGPTはxをaに置き換え、ax 2+bx+c=0をa^2+ba+(b^2-65)=0に変換。そして、a=1、b=1、c=b^2-65として解の公式に代入したのでしょう(計算結果は一致しませんが……)。

 この先はどう解釈していいか僕にはわかりません。ChatGPT教えてくれ。


 標準的な解き方としては、a^3-b^3を因数分解した後、a-bを2乗してabの値を求めます。

 

 a-b = 1, a^2 + ab + b^2 = 65の場合


 (a-b)^2=a^2-2ab + b^2 より、


 a^2 + ab + b^2-(a^2-2ab+b^2 )=65-1

 3ab=64


 aとbはともに整数ですから、右辺は3で割りきれないといけません。64は3で割りきれないので候補から消えます。同様の理由からa-b =13, a^2 + ab + b^2 =5も除外。


 a-b =65, a^2 + ab + b^2 =1場合は少し面倒ですが一応計算すると3ab=4224となります。そして、4224は3で割りきれます。ab=1408です。


 a-b = 5, a^2 + ab + b^2 = 13の場合


 a^2 + ab + b^2-(a^2-2ab+b^2 )=13-25

 3ab=-12

 ab=-4


 これで候補がだいぶ絞られました。ここで二次方程式の解と係数の関係を使ってもいいのですが、計算量は少ないのでひとつずつ試してみます。


 まずab=-4を満たす整数の組(a,b)は(2,-2)(-2,2)(1,-4)(-4,1)の4組です。

 そして、a-b = 5を満たすのは(1,-4)と(1,-4)です。


 ab=1408は組み合わせが多すぎるので、一旦戻って考え直しましょう。

 abの値はa-b =65, a^2 + ab + b^2 =1から導きました。前述しましたが、負の数同士の掛け算は正の数になります。これは中学数学で習いますね。

 

 ということは、a^2とb^2は正の数でabは負の数だと推測できます。

 しかし、それならa^2 + ab + b^2の値は1以上になるはずです。例えば1と-1なら差は2。これは明らかに矛盾しています。


 よって、答えは(1,-4)と(4,-1)の2組となります。


 結果だけ見ると勉強で使うには厳しいようです。質問の仕方を工夫すれば上手くいくかもしれませんがどうだろうなぁ。


 ただ、歴史小説やSF小説を書く際の資料集めにChatGPTを活用するのはありだと思います。情報が間違っている可能性もあるので注意は必要ですが。

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