死にたい俺が明るくてやさしいお姉さんと入れ替わり、恋をする話
ハルキヤ
1章 替わる日常 ①
死にたい、俺は心の底からそう思っている。
生きたい、わたしは心の底からそう思っている。
死にたい、大人達のせいでこの世界が腐っている。
生きたい、まだわたしはあの子達の笑顔をみていたい。
死にたい、未来にはなにも希望がないから。
生きたい、あのときかからずっとそう思っている。
死にたい、だるい、めんどい、人生はつまらない。
生きたい、痛い、苦しい、それでも人生はたったひとつしかない。
死にたい、こんな世界にいたくない。
生きたい、この世界にい続けたい。
死にたい、死にたい、死にたい。
生きたい、生きたい、生きたい。
僕は死にたい……
わたしは生きたい!
1章 替わる日常
“チャンチャラチャンチャン……”
(うるさいな……)
セットなどしていないはずのスマホの目覚ましを止め、身体を起こす。
違和感、髪が肩にまで当たっている。
違和感、胸が重い。
違和感……ここはどこだ?
見知らぬ部屋はピンク色の装飾で彩られている。ピンクのカーテン、ピンク色の布団。可愛らしいうさぎのぬいぐるみとペンギンのぬいぐるみ、女性の部屋のようだった。それでいて散らかってはおらず、整理整頓ができている。
見知らぬ身体の髪を触ると、ものすごく長い。さらっとして、ふんわりと甘い匂いがする。
胸も触ってみる……こんな柔らかいもんなのか。しかもこの人大きいな。
これは夢……しかし夢にしてはやけにリアルな感覚だ。
いくら元は男だからといって夢の中で女性になりたいなんて思うとは、俺もどうやらそうとうな部分までいっちゃってるらしい。むっつりスケベだなんて思いたくはない。
見知らぬスマホを手に取る。
日付は二〇一七年五月二二日。日付を確認してからカメラで自分自身をみてみた。
「こいつ誰だ?」
見たこともない女性がカメラの中に写っている。
真っ白肌、ロングストレートの黒髪、まつげは細く、くちぶるはつららかで、美人であるが、まだ大人って感じはしない。俺と同じ高校生くらいだ。
スマホの画面を切り替えて、電話帳から名前を確認してみる。
『新道幸与』
聞いたことのない名前だ。夢の中で知らない人の名前なんで出てくるものか普通。しかし現実と捉えるにはなにか確証がもう少し欲しい。
「ちぃ、試すか……」
ほっぺをつねる入れ替わった時のお約束パターンをやってみようとする。軽く力をいれてみようとするがこの身体は思ったよりも力が入らず、目一杯力をいれてみようと意識した。
すうすることでやっと痛みがでてきた。こいつは弱々しい、そんな人間らしい感覚が夢じゃないとも思えてくる。だがこれでは足りない。まだ不十分だ。
『入間生心』、自分自身の電話番号に電話をかけてみる。
「どなたさまでしょうか」
間違いなく俺の声、電話越しで聞くっていうのは変な気分だ。
「その携帯の持ち主、入間生心っていいます。あなたは新道幸与さんですか?」
「おお~わたしの声が聞こえるなんてすごい夢だね」
どうやら電話越しにいるのは本当に新道幸与さんらしい。俺の声で明るい口調で話してくるのすこしむかっとするけど、そんなくだらないことにいらついていても進展はない。夢じゃない可能性を追求することのほうが大切だ。
「今日の日付って解ります?」
相手の話の文脈などは無視。とりあえず質問をぶつける。
「え、五月二二日だけど」
「年数も教えてくれますか」
「二〇一七年」
年月日は一緒。同じ日にいることが確認がとれた。電話がつながるんだし普通といえば普通のことだが、今回に限ってはその普通だという事実が重要になってくる。
「次は、痛みはあるか確認してみてください」
「それなら起きた時すぐに確認したよ。お約束だもんね~つねってみたらすご~く痛かったよ。やけにリアルだよね。痛みあって、お話できるなんて、すごい夢」
「短い茶髪、長身、鷹のロゴが入っている青色パジャマ」
「おお~あたりあたり。高校生の男のくらいかな」
「はい、そうです」
「いいよ~もっこりしてたよ」
「は?」
「ふふん、実は夢だからと思って触ってみちゃったんだ」
軽い女だ。夢でないかと探りをいれているわけだけど、頼むから夢であって欲しい。これ以上あまり相手にしたくない。
「部屋は白い壁で覆われ、パソコン、本棚、机がありますか?」
「お、ビンゴだよ。本当すごい、すごい」
「パソコンのパスワードはkoadu5478。入力していただけますか」
「わ~だめだよそんなの教えたら。夢の中だからってしちゃいけないことはあるよ」
「いいから早くパスワード、入力してもらえますか」
「そこまで言うなら……koadu5478で良かったかな」
「はい」
「なんかさ、入間君はすごい冷静な子なんだね」
「はぁ」
「なんかわたしの声なのにかっこいいよ!」
夢だと思ってすげぇこの状況を楽しんでんな……本当夢であって欲しい。パスワード間違ってくれねぇかなぁ。
「あ、本当に入れた」
これで紛れもなく俺の部屋にあるパソコンだと確定した。どうやら現実らしい。
「状況は理解できましたか?」
「どういうこと?」
ここまで確認させておいてまだ意図を理解していないらしい。失礼だとは思うが、さすがに脳内お花畑なやつだと思ってしまった。とりあえず、事実を述べてきずかせるか。その方が早い。
「これは夢じゃない。俺とあなた入れ替わってるということです」
「いやいや、さすがに夢じゃないでしょ」
「俺だってそう思いたいです。ですが、日付、容姿、部屋の状況、さらにはパスワードを使用することができた。これだけの証拠が揃っている以上は夢だとは考えられにくいです」
「本当に、本当に、夢じゃないんだよね」
「はい」
「え、えええええええええええ」
彼女の叫びが耳鳴りのように響く。うるせいやつ。いらつくやつ。めんどそうなやつ。
なんでこんな事態になったんだ。とりあえず現状をもっと知らないと。
「いちよう朝目覚めた時のこと教えてくれませんか」
「そうだね。知ってもらったほうがいいかも」
新道さんは俺の声で朝の出来事を簡潔に語る。
* * *
目覚ましがなっていない中身体を起こす。朝の陽射しが射し込みいつもより早く起き上がってしまったようだ。あれ、なんかすごい下のほうに違和感がある。
これってもしかして。下のほうをごにょごにょといじってみた。
「ある、なんかあるし!」
男の子の大事な部分を触って思わず声が出てしまった。
うそ本当に男の子になっちゃうなんて、夢にしては大胆だ。
「あれ、ここわたしの部屋じゃない」
部屋の中にはパソコンと机と本棚があり、壁は白く覆われている。華やかじゃない必要最低限なものしかおかない空っぽな部屋で。それは男の子ぽい部屋ともいえるのかもしれない。
立ち上がってみると身長も高いことが解った。ここまで具現化させるとは、わたしの妄想力ってやつは結構すごいな。
どんな子か気になってきた。なにか確認する方法……お、あったあった。
机の上に追いてあった、スマホを手にとりカメラで自分の姿を確認している。
短い茶髪。鋭い瞳。身体はすらっとして少し頼りないけど力は断然わたしよりもあり、背が高い中々のイケメンだ。まだ大人びてなくて高校生ぽいな。
「男の子ぽく腕立てとかしてみていいのかな」
力がなくていつもは苦戦してるのとは大違い。すごい、わたしの身体と違って全然軽い。上下に腕を動かすただそれだけの動きが楽しくて、汗をかくまでやってしまった。
憧れるな、ここまで動けるなんて。
夢だけど、この夢は覚めないでいて欲しい。自由に身体を動かせる充実感がそう思わせた。
「あれ、着信だ」
発信元は不明。もう少し身体を動かしてみたい所だけど夢の続きからきになるから出てみる。
「どなたさまでしょうか」
「その携帯の持ち主、入間生心っていいます。あなたは新道幸与さんですか?」
「おお~わたしの声が聞こえるなんてすごい夢だね」
自分自身の声が電話から聞こえてくる。本当に不思議な夢だ。
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