第16話 白はやがて色付く

 うら恥ずかしい。

 気恥ずかしい。

 小恥ずかしいし、きまりが悪い 。


「……」

「ねぇ? もうそろそろ、起きませんか?」


 私の見上げる先には大男トーマス


「さっき、キミの担当編集者さんに会ったけど。新作の主人公、オレに似ているらしいね」

「……」


「相棒の男はペラン王子殿下に似ているらしいけど……」

「……」


「キミにも似ているらしいね」

「……」


「結婚前に、お義母かあさまに言われたよ。大事な娘を嫁にやるのだから、幸せにしてやってくれとね」

「……」


「タウンハウスの隣の部屋に住んでいたオレが、キミのことをチラチラ見るのが気になっていた、と、いうのもね」

「……」


「キミもチラチラとオレを見ていたから結婚を許した、と、言われたよ」

「……」


「ねぇ? そろそろ起きませんか?」

「……」


「そろそろ、ふたりらしい生活を始めてみませんか?」

「……」


 私はきっと赤く染まっている。


 なぜ、こんな事になったのか?


 それは全て私の不徳が致すところ。


「ねぇ?」

「……」


 大きな手が、私の頬を撫でる。


 見上げれば、光り輝く金の髪。


 澄んだ緑の瞳は優しげで。


 整った顔は愛しい者をみる表情に染まっていた。


「起きて?」

「……」


 近付いてくる顔は、体格に合わせて私よりもだいぶ大きい。


 ……でも、それが嫌じゃない。


 重なり合う唇は、誰に見せる必要もない行為。


 白い結婚が色付いていく合図。


 これ全て、私の不徳が致すところが招いた結果なのだけど。


 いま私は幸せなので、問題ないと思います。

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