余談14 「中卒で職人になれ」と暴言を吐かれた君へ

だったら今頃俺なんかは輪島にでも行って輪島塗職人にでもなってるわ。でも伝統工芸職人が絶滅危惧種になってるのはなぜなんだい?


食えないからだよ!


というか食えたら地方→都会なんて人口流動にならないわ!逆に都会→地方になるわ!


それにこの国は文系の修士以上にも学歴差別があるけど同様に中卒にも差別があるし、伝統工芸品ほど英語でのやりとりが多いから中卒で通用する世界なわけないんだ。ECコマースだってやるし。つまりね……ここでも頭のOSが「昭和」でアップデートされてないわけ。


個人事業って複式簿記とかもやるわけだよ。馬鹿に出来る仕事じゃないの。確定申告とかもあるわけ。常識で分かるよね?青色申告って何さ?


というかそんな道で本当に食えるのならとっととブラック企業辞めて地元に帰って職人の道を選ぶじゃん。世の人がそうしないのはなぜなんだい?


そうだよ。数年間(下手すると一生涯ずっと修行と称してタダ働きされられる)無給で修行されたあげくにポイ捨てされる究極のブラック個人企業だからだ。だから自治体は補助金付けて有形文化財指定にして伝統断絶を防いでいるけど一向に止まらないわけ。そして無事伝統断絶という道に至るわけだよ。この国は自分の国の伝統工芸品すらも守れないクズの集合体なんだ。


だって、僕社会教育主事だよ? 下手するとそういう伝統工芸品の指導者を公民館に呼ぶ方だよ?


なぜ伝統工芸品の職人達が消えて行ってるのか。なぜ農林漁業の従業者が1980年に約10%も居たのに今や約3%なのか。なぜ地方からこの国は滅んで行ってるのか。なぜ国は必死に「地方創生」なんて言ってるのか。必死に地方創生言いながら人が都会に流れるのはなぜか。人のわがままで都会に行ってるんじゃない。


地方じゃ食えないからだ!


それにこの道で本当に食えるのなら「美術学部伝統工芸学科」なんてもんが出来るよ。本当にイタリア製とかフランス製並みのブランド品を構築できる国ならばね。ほら、ここで美大の話と繋がるだろ?本当に伝統工芸職人で食えるのなら「美大卒は職がないよねー」なんて言われるわけがない。だって、伝統工芸品は「アート」だからだ。陶器・漆器・織物とか全部これアートだからね?


最終学歴で中卒が同期の約1%しかいないのにはちゃんと理由があるんだ。それにそんな道が現実的にあるのなら偏差値50以下の高校生が高校3年の卒業時に絶望する顔付なんか見せないって。この国は弱者から潰れて行ってる。それどころかFラン卒でも故郷に戻ってそういう道を普通に選べるはずだ。


本当にそういう道で飯が食えるのなら、ね。


でも地方の現実は65歳以上の住民が40%超なんてのがざらともう社会的に破綻してる自治体ばかりだ。そういう自治体を「消滅可能性自治体」という。日本製の伝統工芸品が仮に全世界に受けるのならここに若い職人が居なきゃおかしいだろ?君は15歳で社会の現実を知らないからそうやって騙されるわけ。現実はそうはなってないことにさすがの15歳の君でも気が付くだろ?


それどころか精神障碍者雇用の受け皿にもなる。だって、一人仕事なんだしね。そうならないのはなぜなんだい?精神病院って実は患者さんが退院近くなると作業療法士と患者が共に陶器を作るんだ。でもその陶芸スキルは残念ながら全く活かせていない。だから退院直前に覚えたスキルが死んでしまう。社会のシステムが昭和40年頃からアップデートされてないんだ。君は「作業療法士」という職業を知っていたか?こういうことをするわけ。半文系専門職ってやつだね(文系学生の場合は作業療法学科を受ける場合英語、国語、生物の3教科で受験する。生物1教科だけ我慢して勉強してくれ!ただ生物は化学・物理と違って丸暗記可能科目だ!文系の君でも選択出来る!)。


そういうことを言われたのであればこう言い返せ。


「作業療法士を目指す。だから4大に行かせてくれ」と。


ちなみに僕は高校時代に「作業療法士」という専門職の存在を全く知らなかった。なぜ教えてくれなかったんだというぐらいにだ。ちなみに作業療法学科は普通にFランでもある。それでいて普通に就職出来る。もちろん国家試験も1回でちゃんと通る(普通に4大で勉強すれば)。でも15~18歳じゃ見えない職業ってやっぱあるわけだよ。だって、一般人と接する職業じゃないんだしな。というか俺の時代は4大では作業療法学科がほぼほぼ無かった。皆無に等しい。4大志望の当時の僕がそういった専門職の存在を知るわけねえよな。でも今はあるから安心してくれ!


君がこの系統の暴言を親や社会から吐かれたとき「作業療法士」というもっと現実的な職業があることを知ってくれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る