第18話
(泉くん、私って文字書ける?)
《問題ありません。マスターは『言語理解と習得』というスキルがあるので、どの種族の言葉も、文字も読めますし話せますし理解出来ます。》
(あ、そうなんだ。凄いな言葉の壁一切ないとか。書くのは日本語しか書けないんだけど勝手に変換されるのかな?)
《マスターが相手が理解出来る文字が書きたいと思いながら、マスターの世界の文字の日本語で書くと、その国の文字に相手からは見えます。》
凄いスキルだ。
でも、異世界物語での見かける基本的なあるあるスキルだけどね!
ただこの異世界って人族以外にも色々な種族がいるらしいから、私にはこのスキルは大変有り難い。
種族ごとに言葉が違うのだとしたら、その文字や言葉を覚えてからコミニュケーション取れるまでに凄く時間が掛かりそうだ。
そういう面倒な努力をすっ飛ばしてコミニュケーション取れるのは助かる。
だって、その努力を私が途中放棄してしまう可能性は非常に高いし。
「大丈夫です。文字は母に習っていたので、自分で書けます」
にっこり笑ってそう伝えると、お兄さんから紙と万年筆に似たものを渡された。
まだ後ろに人がたくさん並んでいるので、筋肉の人に別の場所へと誘導される。
名前と年齢と性別と種族。
名前は本当の自分の名前の方がいいんだけど、異世界って名で縛るとかあったら嫌だな。ジブリ映画の湯宿みたいな。
《姓名さえ書かなければ対象の名を縛る事はできません。名で縛る契約は奴隷を隷属させる際の契約にもっとも多く使用されています。通常時にそのような危険に遭う確率は少ないかと思われますが、これから先、マスターの特別な力を知った欲深き邪悪な者が、愚かな計画を企てないとは言い切れませんので、自衛の為に名だけを記載するようにしておいて下さい。》
(あー、やっはり名で縛るとか存在するんだね・・・・・・魔法の世界、こわ。了解、じゃあ泉くんの言う通りに名だけ書いておく。年齢は幼いと銅貨一枚らしいんだけど、私の本当の年齢書いちゃったらさ大人って事で高くなったりするかもしれないし、どうしようかなー)
《マスターはドラゴンなので本当の年齢でもドラゴンでは赤子のような年齢ですが、人族で通すつもりなのでしたら、見た目はこの世界の十歳から十二歳くらいでしょうか。それくらいの年齢を書けば問題ありません。ちなみにこの世界の成人は十五歳です。》
(うーん・・・・・・十歳でいいや。性別は女・・・・・・っと。種族は人族で。あ! 年齢と種族詐称しちゃってるけど、こういうのも嘘発見器のような不思議なクリスタルでバレてヤバいことになったりするんじゃない!?)
《関門で仮登録される時のみこのような書類を書いて通しますが、実際にギルド登録となると名と種族だけの登録で犯罪歴だけが重視されますので、問題はないかと。マスターが身分証を作成となると偽装は見破られますので真実を書かなければなりませせんが、ギルド登録が身分証として通用するようですので作成せずとも生活していく事は出来そうです。マスターがこの世界で婚約や婚姻して家族を持つ事になるならば身分証は必要となります。》
(えー、結婚とかないない。だって私ドラゴンだよ? 家族はもう泉くんとマシロが家族のようなものだからこれ以上は要らないかな)
《・・・・・・そうですね。》
「書けました!」
ハキハキ元気よく報告すると、筋肉さんに記載済みの紙を渡した。
「おお、綺麗な字を書くじゃないか。お母さんがよっぽどしっかり教育してくれたんだな。読みやすくていい字だ」
「ありがとうございます!」
どうなることかと色々不安だったけど、無事に仮登録カードを渡されて関所を通過する事を許可されたのだった。
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