世界最強の司書さんは楽しく本を読んでいたい

ダークネスソルト

第1話・世界最強の司書さんは本を破った人に罰金を払わせる

「お客様、返却されていた本が破れていました。お客様は保険にも加入していませんので、罰金として金貨1枚のお支払いをお願い致します」

 身長は180センチほどでスラっとした体型、黒髪黒目で丸ぶちの眼鏡をかけた20歳位の青年もとい国立図書館の司書の男が面倒くさそうにそう言った。


「は?金貨1枚払えだと。そんなお金払うわけないだろ。ふざけんな」

 その言葉に対して筋骨隆々でスキンヘッド、みるからに乱暴そうな男が怒鳴り声をあげる。


「ここは国立図書館ですお静かにお願いします。それと金貨1枚のお支払いは絶対です。速やかにお支払いください」

「は?知らないね。そんなこと、俺は絶対に金なんて払わないからな」

 乱暴な男はそう怒鳴ってから出口へと大股で歩き出す。


「毒魔法・麻痺」

 司書の男が魔法を短縮詠唱で発動させて乱暴な男を麻痺させて動かなくさせる。


「身体が動かない、お前何をした。俺が誰だが分かってるのか?俺はBランクの冒険者ゲボルグ様だぞ。こんなことをしてただで済むと思うなよ」

 麻痺により首から上しか動かせないにも関わらず威勢のいい声を上げる男。


 それもその筈、Bランク冒険者というのは冒険者の中でも上位1%しかなることが出来ない上位者の称号であり。それ相応の強さを持つという証であるのだから。


 しかしゲボルグは気が付いていなかった。そんなBランク冒険者である自分を簡単に麻痺という魔法にかけられという規格外の力に。

 そしてそれに気がつけなかった時点で、いや大人しく金貨1枚を払わなかった時点でゲボルグの運命は最悪の方向に決まっていた。


「何だ、お前冒険者だったのか。それなら話は早い。転移」


 ――――――――――――――――――


「ハア。ユウヤまた本を破った上にお金を払わない馬鹿がいたのね」

 司書の男もといユウヤが転移した先で、綺麗な赤髪と双丘を持った美女がため息をつき心底面倒そうにそう呟いた。


「ああ。そうだよ。全く持って俺の仕事を増やさないで欲しいよ。面倒くさい。俺の読書タイムが減るじゃないか」


「そんなこと言われても、私だって注意はしてるけど、冒険者一人一人に監視を付けるなんて出来ないのだから無理よ」


「まあ、それでもそうだな。まあいいや、それよりもいつものアレを頼む」


「そうね。じゃあ。そこの冒険者、名前は確かえっと、Bランク冒険者ゲロルグだっけ?」


「違う俺はゲボルグだ。というか何でギルドマスターがこんな所にいるんですか?俺今さっきまで図書館にいた筈じゃ?」

 ゲボルグは周囲を見渡し困惑する。

 そこは本に囲まれた国立図書館ではなくギルドマスターが冒険者を管理するために使う管理室なのだったからだ。


「ああ、それは俺がお前をギルドマスターの部屋まで転移させたからだ」


「転移って、それ使うのに長い詠唱と専用の魔道具を使う筈じゃあ?」


「ああ。普通はそうだ。でも詳しい理論を知ってれば詠唱破棄して簡単に使うことが出来る。

 といっても本を粗末に扱う愚者には理解できないだろうがな。

 それよりもお前ギルドマスターからのありがたいお言葉は聞かなくていいのか?」

「というわけでゲボルグ、貴方に3つの選択肢を上げるわ、一つ目は大人しく罰金を支払い、謝罪をしてギルドの塩漬け依頼をこなす。二つ目は冒険者の資格を剥奪。最後は今この場で死体に変わる。どれがいい?」

 ギルドマスターは妖艶な笑みを浮かべながら鬼のような3つの選択肢を突きつけた。


「ちょっと待ってください。何ですかそのペナルティーは一つ目もきついのに、二つ目と三つ目は余りにも理不尽じゃないですか。俺のやったことと言ったら本を破っただけですよ。たかが本を破った程度でこんなことになるなんて」

 ゲボルグはそうギルドマスターに弁明をする。しかしこれがゲボルグの人生1番の失敗であった。


「あ?おい。お前今、たかが本を破った程度と言ったな?ぶち殺されたいのか?」

 その瞬間ゲボルグは神を見た。

 ただ善なる神とかではない。邪神だ。邪悪で悪意と殺意と憎悪に溢れる恐ろしい神だ。

 絶対に自分では敵わない最強の存在であり。絶対に逆らってはならな至極の存在、そしてそんな存在を敵に回し殺意をもたれ睨まれた。

 ゲボルグはその恐怖から脳が防衛本能を働かせて気を失わせようとし倒れる。しかし神はそんな優しいことは許さなかった。


「治癒魔法・気絶回復」

 気絶しようとしたところを無理やり覚醒させられるゲボルグ、そしてそのまま髪を掴まれて持ち上げられる。


「おい。ゲボルグ。あんたに5つの選択肢をやろう。

 一つ今すぐ金貨1枚を払い、お前が破った本に100回土下座をした後、ギルドマスターの望むままに塩漬け依頼をこなす。

 二つ目俺に火魔法で焼き殺される。

 三つ目俺に水魔法で窒息死させられる。

 四つ目俺に首と頭を切断されて殺される。

 五つ目お前の意識を本に閉じ込めてからお前の肉体お前の目の前で破壊してから殺す。さあ、どれがいい?」


「それって選択肢実質一択じゃないですか。もちろん、文句なんてございません、一つ目一つ目でお願いします」

 ゲボルグはそう情けない声を上げながら懇願する。今現在のゲボルグに逆らうという選択肢はなかったのだ。


「そうか。そう言ってくれると信じてたよ。それじゃあ、転送。さてじゃあお前の破ったこの本に土下座をしな」

「は、はい。あ、それとこちら金貨1枚です。どうぞお納めください」

 ゲボルグは震えながら胸ポケットから財布を取り出して虎の子の金貨を取り出してユウヤに渡す。そして本に土下座を始める。


「ハア。いつ見てもユウヤの力は凄いな。さてじゃあ、後はこちらで処理をしておくから、また何かあったらいつでも来てね」

「ああ。分かってる。カレンも何かあったら言えよ。カレンには日ごろからお世話になってるし俺が解決出来る範囲ならサクッと解決してやる」

「あら。それは嬉しいわ。でも取り敢えず今の所は大丈夫かな」

「そうか。じゃあ俺は戻るわ。転移」


 ――――――――――――――――――


「さてと、じゃあ本の整理整頓をサクッと終わらせて読書タイムと行きますか」

 国立図書館に戻ったユウヤをそう言うと、無詠唱で念動力魔法を行使し本を宙に浮かせて元の場所に戻していく。

 そして10分程で全ての本を元の場所に戻すと椅子に座り本を読み始めるのだった。



――――――――――――――――


 先生「先生怒らないから連載作品書いてるのにほっぽりだして新作書いてる馬鹿手を挙げなさい」


 ダークネスソルト「はい」


 先生「連載作品も書けよ、何新しいの書いてるんだよ。ぶっ殺すぞ」


 ダークネスソルト「ちょっと、怒らないって言ったじゃないですか」


 先生「な訳あるか、この馬鹿。読者に申し訳ないとは思わないのか」


 ダークネスソルト「だって、週間ランキングトップ10とか入りたいんだもん。広告収益稼いでバイト辞めて、書籍化だってしたいんだもん。だからいっぱい小説かいて、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるやってるんだよ」


 先生「そんなに世の中甘くない、読んでくれてる読者がいるだろ。裏切りやがってこの愚か者」


 ダークネスソルト「でも、だって・・・」


 先生「でももだってもありません、いいから、今連載してる駄文を書きなさい。今は人気が出なくても何かの拍子に大きく人気が出る可能性だってあるでしょ」


 ダークネスソルト「確かにそうですね。・・・でも、新作小説の方が人気出る可能性あるじゃないですか」


 先生「馬鹿野郎。あまりそうやって浮気してると読者離れが進むぞ」


 ダークネスソルト「でも、でも、僕は何とかモチベーションがあれば、少しずつですが書いてますよ。それは大学にバイトで忙しいですけど、それでも頑張って書いてますよ。先生は僕を褒めるべきです」


 先生「だが、褒めぬ。もっと頑張って面白い小説を書きなさい。じゃなければダークネスソルトに価値はない」


 ダークネスソルト「先生は鬼ですか」


 先生「ああ、鬼だ」


 ダークネスソルト「という訳で、今から小説を書きますが、まあ定期的にスランプに陥って、モチベーションを行方不明にして書けなくなりますからね。はい。ごめんなさい」

 

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