第6話 妙な電話

夫は彼から、郵便受けの外に付けたナンバー錠の数字を聞いていたので、数日経ったらどちらかが見に行こうと話していた。重要な書面も来ることがあるので頼まれていたからだ。妻は夕食の準備を終えたので、彼の家に行こうと準備していると、電話が鳴った。

「ああ! 久しぶりね。声を聞くの! 」

「本当、前は良くこっちに遊びに来ていたから、会えていたけどね」

「孫も受験やらで、行ったってね・・・邪魔でしょ? 」

高校時代からの女友人だったが、関東に住んでいて、何年も会っていなかった。普段は天候が荒れたときなどに、お互いの安否確認のメールをしている仲だった。

「二人ともいる? 」「あーまだ帰ってきてないの」

夫とは中学、高校と一緒なので、付き合いは彼女の方が古いのだ。夫人は一度彼女に、「若い頃、夫のことをどう思っていたのか」と質問したところ「異性と思ったことがない」という、あっさりとした返事だった。夫からも全くそうで、そういう男女間もあるのだと面白く思っていた。

「あのさ、自衛隊のK君覚えている? 」

「覚えているよ、新婚時代に会いに来てくれた。でもそれからは会ってない」夫の友人で、妻も高校時代、彼を校内で見たことはあったが、話をしたのはその時が初めてだった。

「そうだよね、あのね、会いたいんだって、久しぶりに。電話番号教えていい? 」

「ああ、わかった。でもあの人、仕事中は携帯取らないから」

「じゃあ、自宅の方がいいかな? まだ固定電話あるの? 」

「うん、一応ね、そっちを教えようか」

「お願い、けっこうすぐかかってくると思うよ」

 友人は仕事のようにテキパキと話を終え、特に別の会話はなかった。以前彼女から、防衛大の卒業生であるK君、もうK氏と言った方が良い年齢である彼が、かなり出世したという話は聞いていた。帰ってきた夫にそのことを告げると

「へえ、会ってみたいが、でも何故急に? 地元に帰ってきたついでかな」その疑問を深く考える間もなく、本人から電話があった。

「懐かしいなあ! 」お互い楽しそうに話しているのを聞きながら、彼女は単純な、フッと思いついたノスタルジーなのかとそれこそ一瞬は考えた。夫は日取りを決めて、家で会う約束をしている、それがやはりとても素早いので、電話が終わるなり

「何かちょっと変な感じ」「何で? 」

「電話が早く終わりすぎるような」「男はそんなもんだって」

「だって彼女も」「あいつは男っぽい、夕方は忙しいだろう」

 それ以上このことを話さなかった。一週間後という期日もおかしいと、夫人は感じながらも。


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