003話 2078年の機体
俺は自分がどこまでテクナの部分があるのか、セリュリアに調べてもらうことに決めた。
セリュリアは俺をスキャン機器の前に立たせ、体全体を丹念にスキャンし始めた。
しかし、何度スキャンしても詳細な情報が得られない。
セリュリアは首をかしげ、再度スキャンを試みるも結果は変わらなかった。
「これは奇妙ですね、ジンさん。どういうわけか、あなたの体の詳細情報がスキャンできません。」
とセリュリアは困惑した表情で言った。
「それって、どういうこと?どこがテクナかわからないってこと」
「はい。ただ、こちらのスキャナーは特別なものではないですが、一般的な機器の検出はできるはずなのですが。」
「じゃあ、ナチュアってこと?」
「いえ、そうでもないと思います。まず首元のインターフェースがナチュアではあり得ないこと。」
「また、ナチュアの場合でもスキャンした場合、その結果が表示されます。」
「いまは、まず生体とは認識しているものの、なんの反応も示さないのです。」
「それは危険なことなの?」
「現時点では、危険だとは言い切れませんが、確かに通常ではありません。私が知る限りでは、こんなことは起こりません。」
「ただ、結果を純粋に捉えるのであれば、テクナでもナチュアでもない。もしくは、何かしらの原因でスキャンが阻害されているということだと考えられます。」
セリュリアは慎重な口調で語った。
不安が募るばかりだった。
その後、何度もスキャンを試みるものの、依然として俺の体に関する情報は得られなかった。
セリュリアは俺の不安そうな表情に気付き、励ますように言った。
「心配しないでください、ジンさん。私たちもこの問題を解決するために、全力で調査します。何かわかったらすぐにお知らせしますね。それまで、焦らず無理をせず、少しずつこの世界に慣れていきましょう。」
俺はセリュリアの言葉に少し安心して、彼女に感謝の言葉をかけた。
「ありがとう、セリュリア。本当に助かるよ。君がそばにいてくれるだけで、心強いよ。」
だが、冷静に状況を俯瞰してみた。
「俺は”幽境の詠図”の研究室にいたんだよな?」
「はい。そうです。」
「その集団は、なんの研究をしているんだ?どういう宗教なんだ?」
「それは、明らかにはなっていません。」
「宗教としては、信者たちは自然主義を重んじており、新しい世界を求めるために様々な過激な行動を行っているカルト宗教です。」
「この体はそいつらに研究されていたとすれば、やはり何かしらそいつらにされていることを考えることが普通かもしれない。」
「ユイが助けた理由は、あなたが重要な存在であることを分かっていたからです。その理由もなにかその研究が裏にあるのかもしれません。」
「セリュリア、ありがとう。この体について知りたいと思う。そしてこの世界をもっと知りたい。色んな情報を集めるのに手伝ってくれ。」
「もちろんです。私もユイが命を懸けて守ったジンさんを守りたいです。」
「あとは、ジンさんがテクナの体になれることもサポートすべきだと思っております。」
「そうだね、ただ今日はもう疲れたよ。時代ボケしているのかな、すごい眠い。」
「そうですね、ではベッドがありますので、そちらでゆっくりお休みください。」
2078年のベッドは、
個々の体温に応じて最適な温度を調整できる温度調整機能や、
無重力ポジションと呼ばれる、身体に負担がかからない姿勢で寝ることができる機能で、
身体の緊張が解消され、リラックスした睡眠ができるものが搭載されている、
と翌朝セリュリアから聞いた。
正直、気絶するように寝たから機能など気にする余裕なかった。
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