第6話『残穢』小野不由美著 を読んで

『残穢』小野不由美著を読んで    笹葉更紗


 『残穢』は小野不由美によるホラー小説だ。一つの怪異譚の原因を調べていくうちに次々と出てくる新たな怪異譚。そしていくつもの怪異譚はやがてとある大きな怪異

に根差すものだとわかってくる。


 ホラー小説でありながら、その真相に迫るプロットはミステリ小説的でもある。


 小野不由美さんの夫は言わずと知れた綾辻行人さん。ミステリ界の重鎮でそのことも関係するのかもしれない。


 昼休みの食堂で竹久と『残穢』の話で盛り上がった。


「すごいよなあ、夫婦二人で小説家なんて。おれも結婚するなら小説家の奥さんとかがいいかな。あ、でもその前に自分が小説家にならないと意味ないのか」


 なんてつぶやいているところ瀬奈は聞いていた。


 ――放課後。



「ねえ、今から更紗の家いっていい?」


「うん、別に構わないけれど?」


「一緒に映画見ようよ」


 そう言って持ってきたDVDが件の『残穢』の映画だった。


「だって一人で見るの怖いんだもん」


「怖いなら見なければいいのに」


「怖いから見るんだよ。怖い怖いと言いながら見るから楽しいのよ」

 

 瀬奈はあいかわらず「きゃあきゃあ」言いながら楽しそうに映画を見ていた。

 ウチは、原作を読んでいたので話半分で見ながらお茶菓子を並べる。お煎餅や柿の種や、貰い物の大手まんぢゅうもあったので映画に夢中の瀬奈のところへ差し出す。


「あ、大手まんぢゅうこわい! 大手まんぢゅうこわい!」


「もう、映画が怖いのか、大手まんぢゅうが食べたいのかどっちなのよ」


「違うよ。これはさ、落語のまんじゅうこわいだよ。こう言っておいたらアタシに大手まんぢゅうくれるかなって思って」


「もう、そんな変ないい方しなくてもあげるわよ。たくさんあるんだから」


「やったあ!」


「まったく。瀬奈の食欲のほうがよっぽど怖いわ」

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