第2話 迫害と旅立ち

私、エミはこの魔法と魔術の世界でエミール家として生まれた。エミール家は代々魔術よりも魔法を優先として教育を施し私の兄、王家一級魔法使いにまで育て上げた実力ある貴族だ。だが私にはその魔法の適性が無に等しかった。


私の元に明るい日光の日差しが差して、小鳥の囀りが私の部屋に響き渡る。朝の少し肌寒い風が部屋に流れ込み、部屋を包むように吹き始めた。


「さ、寒い。。ん、んーーー!」


私はいつも変わらない時間、いつもと変わらない身支度を終え、部屋から出て右側の広く長い廊下を歩く。そこ先には大きな扉があり私は扉のノブに手を伸ばし扉を開ける。


大体30人ほどは座れる長方形に長いテーブルの先には父上、その右隣には母上、左隣にはハル兄様が座っておられた。私は急ぎ自分の座席へと座り朝食を待つ。


「エミ、鍛錬の方はどうなんだ」


「はい父上、鍛錬の方は物心ついた頃から続けております。ですが、まだエミール家には遠く及ばないですが……」


そう、私は今年で16歳になり、物心がついた頃から、魔術を鍛錬し続けていた。私はハル兄様のように王家直属の騎士となり階級をもらうために。


「そうか、エミは今年で16歳だ。ハルが16歳の時にはすでに、王家3級魔法使いまで成長していたのだがな」


「まぁまぁ父上、エミも鍛錬を疎かにしているわけでもないのですから、ここは見守るっていうのはどうでしょうか?」


「はぁ。ハルも分かってはいると思うが、エミール家は、代々魔法使いとして名を残している貴族であり、娘が魔法を使えないと世間にでも知られたら家系に泥がつくのだぞ?」


「はい、存じております」


私は何も父上に発言することはできなかった。私が無能であることは子供の頃から自覚していたため、私の欠点でもあるからだ。


「そんなことよりもエミ、私達は今日王都に用事があるため少し屋敷を空けます。ハルも王家一級魔法使いの仕事もあるそうなので、お留守番頼みますわ」


「承知しました。母上」


そこから沈黙の空気が食卓場を包み、物静かで、ただ食器が食べる際に接触し、音が響く音だけが鳴っていた。私は食事を終えると、自分の部屋で魔術の勉強をし、日が沈むまで稽古という稽古を積み重ね練習をした。そして日没後私は暗闇の中1人で食事をしている時だった。微かだが草木が霞む音、誰かの声、そして足音が近くに来る音がした。私は自分の部屋に駆け込み私の唯一の相棒、源刀(刀)は魔力を注ぎ込むことにより刀に魔法を付与する。いわゆる魔剣だ。だが、魔法とは少し違いあくまで源刀を所持している時のみ発動可能で、私自身は魔術の知恵と技術しか持ち合わせていない。私の相棒源刀に魔力を注いだ。


「我は汝を時から解き放して悪を滅ぼす者なり、

空間認識ッッ!」


刀が金色に光り輝き敵の気配を源刀から感じた。私は庭へと出向き、相手を誘い込むことにした。1分もしないうちに黒いフードを被った人達が10人ほど私に向かって歩き始めてきていた。次の瞬間私の頬に矢が掠り血が垂れ込む。私は腰を低く落として、源刀に魔力を注ぐ。


「我は汝を時から解き放して悪を滅ぼす者なり、

斬撃一刀ッッ!!!


私の一振りでフードを被った人達の胴体が真っ二つに切られ血を吐き出して崩れ落ちていった。しかし、私が空間認識で感じた気配は11人。


「後1人たりない。空間認識では11人全員が食卓の前を囲っていた。だが私の前に現れたのは10人、、

一体どこにいる?」


その時パチパチパチパチとまるで拍手をしている時のような音が私の耳の奥まで響く。私が振り返り、屋根の上を見ると、そこにはフードを被った人が立っていた。


「なるほど、なるほど、鍛錬は疎かにしていなかったのは本当のことらしいな」


フードの人が発した声には聞き覚えがあった。それはまるで男の人の声のようで、とても身近で聴いてた声だった。


「ま、まさか!?」


男と思われるフードの人はフードを取り私を見下ろすようにして、月と一体化してるように恐怖の眼差しをこちらに向ける。


「ち、父上!?なぜここに!王都に出かけたはずではッ!?」


「そうだった、わしは確かに王都に出かけた。だが用事を済ませ屋敷に戻ってきたのだ」


「そして王都の殺し屋と手を組み、お前を抹殺することを命じてなッッッ!!!!」


夜の静かさ、暗闇は私を脅かすようで、私の手は震え始め刀を地面へと落とした。


「お前はエミール家の恥だ!お前は魔法には恵まれておらず、ただの無能。わし、嫌、俺はここでお前を殺すッッ!!!」


父上は暗闇を照らすような赤い赤いどこまでも燃え続けるような炎の塊を手のひらに集め、私の方へ向けて飛ばしてきた。私は魔法使いとは実践経験無かった。私は急いで落ちた源刀を拾い上げ、源刀に魔力を注ぐ。


「我は汝を時から解き放して悪を滅ぼす者なり!

斬撃一刀ッッ!!!」


炎の塊に向けて私は力のある限り刀で受ける。炎の熱で手が焦げるほど痛く、、そして熱い!


「ハハハ!!!お前みたいな魔術しか使えないような無能は俺には勝てないんだよ!!!」


「クッ、、、、私は、私はッ!!エミール家に生まれてきたことを後悔はしてません!!確かに私は無能です。ただ、こんな私をここまで成長させてくれた父上、母上、ハル兄様に感謝の気持ちを忘れたことはありません!!!私はこんな形で決着をつけたくない!!」


「何を今更、俺はお前を成長させた?クククッ!笑わせるな!俺はお前を利用するためにここまで成長させてきた!そして今日を持ってお前を殺すためになッッ!!」


炎の塊はさらに勢いを増し私の源刀が押されつつあった。私はある決意をした。


「父上!私はあなたの戦いを望みたくはありません。ただ!あなたがその気なら私は全力でお相手をするッッ!!」


私はさらに源刀の刃先に魔力を一点集中させる。


「我は汝を時から解き放して悪を滅ぼす者なり!!

雷光修羅ッッッ!!!!」


源刀の刃先から眩しいほどの光の魔力が父上へと襲いかかり、父上の腹を貫いた。父上は屋根から崩れ落ち、その瞬間私は落下地点で父上を受け止める。


「おま…エミ、俺は、、お前を、、ころ…」


父上は最後の言葉を言い終わる前に命が尽きた。

私は父を庭で火葬をし、手を合わせて祈る


翌日、私は食卓に母上、ハル兄様宛ての手紙を置き、この屋敷を去ることにした。




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