我が家のベランダ菜園物語
藍条森也
その一七 春の味覚。アスパラ、ハコ玉、スナップエンドウ!
我が家のベランダ菜園にてアスパラがニョキニョキ伸びはじめた。
アスパラは成長が早いのでうかうかしているとあっという間に大きく育ちすぎで食べられなくなる。そこで、さっそくいただいた。レンジでさっと熱を通して、ポークソテーの付け合わせとしてそのまま皿へ。
ベランダ菜園の品だけあって太さも長さも全部、バラバラ。太い物ほど固いように思えるがそうとは限らないのが面白いところ。むしろ、太いものの方が柔らかくて、細いものは筋っぽかったりする。細いものは生育不良で繊維が多い、と言うことだろうか。まあ、食物繊維は大切な成分だからそれもいいだろう。
採りたてのアスパラはなにもつけなくても、ただそれだけで甘味があって実においしい。ちょっとあると、実に贅沢な気分になれるお得な付け合わせ。
まさに、春一番の甘い味覚。
そう。野菜は本来、甘いもの。
苦いのは実は野菜の味ではない。
これ、実は硝酸態窒素。
毒である。
大量に食べるとヤバい。
もちろん、ゴーヤやシュンギクなど、もともと『苦い味』の野菜をのぞいての話だが。
原因は肥料のやり過ぎ。現在の野菜は大量の化成肥料を与えて手っ取り早く成長させる。そのために、野菜の体内には大量の肥料が蓄積される。このうち、消化されなかった分が硝酸態窒素となって野菜のなかに溜まる。
つまり、多すぎる養分が毒になるのだ。食べ過ぎがよくないのは人間も野菜も同じ。
子供が『苦いからいやだ』と言うなら無理に野菜を食べさせないように。
子供はワガママで言ってるのではない。
本能的に危険ものを避けているのだ。
苦みのない野菜を手に入れてあげよう。そうすれば子供も食べるはず。
そこまでできないというならせめて、食べさせる前に熱湯にさっと通して、流水で洗ってあげよう。それで、硝酸態窒素はかなり抜ける。
くれぐれも『苦いからいやだ』と言う子供に無理強いはしないように。それは、子供に毒を食べさせているのと同じこと。
繰り返すが、肥料を与えすぎない『本物』野菜は甘いのだ。ニンジンなんてタネの時点でもうすでに甘い香りが漂っている。成長したニンジンを土から引き抜くと辺り一面に甘い香りが漂う。生で食べてもポリポリと歯触りが良く、甘い香りが口中に広がる。熱を通すとしっとり柔らかくなって、口のなかでホロホロと崩れる。
その食感たるや、とても野菜とは思えない。市販品では決して味わえない食感。
これはもう、ぜひとも体験していただきたい。ちょっと深めのプランターがあればさほど気を使わなくても――ある程度は――作れるので、ちょっとしたスペースとやる気があったら試してもらいたい。
プランターと言えば我が家のプランターはこの時期、ハコベに占領される。
おそらく、葉物野菜を食べにきていた鳥たちの体にタネがくっついて運ばれてきたのだろう。いつの間にやらプランターというプランターにハコベが生えるようになっていた。
これがもう、ものすごい。
土が見えなくなるぐらいこんもりと生い茂る。
おかげで、ハコベが生えている間、他の葉物野菜を作るのはまず不可能。
最初は抜こうとしていたが、後からあとからいくらでも新芽が出てくるのであきらめた。もとより、ハコベは代表的な食べられる野草。栄養豊富でとくに内臓にいいという。なので、いまでは『タダで』食べられる葉菜としてありがたく頂戴している。
と言うわけで、最近よく作るのがハコ玉。
つまり、ハコベ入りのオムレツ。作り方はいたってシンプル。
まずはハコベの下ごしらえ。
ハコベは野草だけあってアクが強いのか、生で食べてもおいしくない。そこで、さっと熱湯に通して、水で洗い、アクを取る。それから粗く刻んで溶き卵に加え、フライパンで焼きあげる。
たったそれだけ。
それだけで実においしいオムレツが焼きあがる。
これもまた、自分で野菜を育てている身だけが味わえる春の味覚。
さらにスナップエンドウも実を付けはじめた。
これもまた甘味のあるおいしい野菜。アスパラはこれからが本番だし、ハコベもまだまだ食べられる。スナップエンドウが育ったら、メインのハコ玉にアスパラとスナップエンドウの付け合わせを加えて、春の味覚尽くしを作ってみようか。
楽しみである。
完
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