第23話 サンアントンスキー場、再び1

 約3週間ぶりにサンアントンに戻ってきた。年末年始のオンシーズンは終わっており、3週間パスをオフシーズン料金で購入する事ができた。1月末までの3週間、心ゆくまでアルプススキーに専心できる。


 先ずはオーバーグルグルでの山腰ターンの自主特訓成果を試してみるが、上手くいかない。ゲレンデが変わるとこうも違うのか。


 ゴンドラやTバーリフトを使いながら深雪を求める。天気の良い日はゴンドラで頂上に登るとアルプスの山々が見渡せ気持ちが良いが、やがて深雪はなくなる。降雪の日は深雪はできるが頂上行きのゴンドラはしょっちゅう運休する。頂上まで行けば至る所深雪ゾーンなんだけど…。


 ここのスキーインストラクターは俗に『赤鬼』と呼ばれ、サンタさんみたいな上下赤いウェアーを着ている。心なしか、みんな着ぶくれした中年のおっさんばかりのように見える。特に技術的指導をしている姿は見られず、専ら生徒たちの先頭を滑っている。インストラクターと言うよりスキーガイドのように見える。

 

 一度少数グループのプレジャンプで初めてプロペラターンを見た。

 ジャンプ台を使わずにゲレンデのギャップを利用したり雪でミニジャンプ台を作って行うジャンプをプレジャンプと言い、ジャンプした空中でスキー板をヘリコプターのプロペラに見立てて、概ね120度ぐらいの範囲で股関節を使って左右に回転させながら着地するのをプロペラターンと言う。

 数回の試技を見せてもらったがみんなきれいに決めていて凄くかっこ良かった。バンジージャンプやスカイダイビングやスキージャンプは勿論、飛行機や吊り橋さえ苦手な私はプレジャンプはかなり怖い。

 走り幅跳びは何ともないんだけど。この挑戦は又の機会に。

(その後、一度も挑戦していない)


 日本やオーバーグルグルのスキー場と比較するとサンアントンはスキーヤーのレベルがかなり高そうだ。殆どのスキーヤーがギャップのある急斜面を涼しい顔して滑ってくる。

 初級者コースは少ないけれど私のような中級者がもう少し大勢いても良さそうなものだが。


 ゴンドラは全部で2台だが1台分の距離はかなり長い。

 雪の日に上の1台が運休すると降り口では時として視界ゼロになる。ある日何も見えなく滑るのをしばし躊躇っていたら、最後の方で降りて来た人が躊躇なく滑りだしたので後を追っかけて行ったらすぐに視界が開けてきた。

 どうやら、視界が悪いのはゴンドラの降り口周辺だけだったようだ。

 重い雪だが一面深雪で急斜面には苦戦したが十分満足感は得られた。流石に膝は疲れたけど。


 ある日、ゴンドラで若いかなりの美人と一緒になった。彼女はサングラスを掛けていた。


 ゴンドラで一緒になったサングラスの美人と言うと、2年前北海道の旭岳スキー場のゴンドラで一緒になった女優の吉永小百合さんを思い出す。

 そのときは気付かず1時間後レストランで再会し、目の前でサングラスを外されたとき心臓と肺が同時爆発したような衝撃を受けた。

 それからまた30分後、今度はゲレンデでお会いした。後から滑って来た彼女に追い抜かされて、すぐ追っかけて100m先で停止した彼女の横に付けたときの会話。


「あの…、旭岳にはよく来るんですか?」

「2回目。…ここは初めて」


 小百合さんは『北海道の屋根』と言われている旭岳も気に入ったようですが、一番のお気に入りは『北海道のへそ』と言われている富良野なんです。今回、メインの富良野スキー場の前に旭岳スキー場に寄ったのだろうと思いました。富良野スキー場が2回目なのでしょう。


 ゴンドラで遇ったサングラスの美人には、Tバーリフトへ乗り継ぐとき同乗させて貰った。ワシントンD.C.からのアメリカ人でサンアントンで働いているそうである。スキーシーズン終了の4月か5月までの予定らしい。

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