第15話 品定め

 星々が燦然と輝く神秘の夜。

時折遠くから木々が囁く寝静まったの森。

其処にキシ、キシとツリーハウスの階段をゆっくり上る足音が響いた。

そして足音が玄関の前で鳴り止むと、硬く閉ざされてるはずの扉がぎぃ……と静かに開いた。


 「待ってたよ。さぁ、中に入って」


家の主である魔女は深夜の訪問者を笑顔で迎え入れた。


「抜かりはないな」


本来は暖かな優しさに満ちていただろう者の声は、尊大で聞く者の心を凍らせる冷気を纏ってた。


「えぇ、あの子は今頃夢の中さ」

「でも今夜は軽い顔合わせ……」

「いや、品定めって所だから大事にはしないでおくれよ」


 二人は二階に上がり、魔女は客室の扉を静かに開いた。

中には愛する者との再会を夢見る少女が、すやすやと寝息を立ててた。


「これがそうなのか?」

「そう、真面目で優しい良い子だよ」

「だから……余計に心苦しいよ」

「そんな事等どうでも良い。全てはこれの能力次第だ」

「そっちの判断はこれから確認するよ。だから今は大人しく待っててね」

「『リディア』君」


 魔女から名を呼ばれた者の姿が、窓から差し込む星明かりによって浮かび上がる。

それは邪悪な魂に体を奪われた哀れな聖王女の姿であった。



第二章 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る