第12話 魔女の晩餐
ほどなくして奥からぐつぐつと何かを煮込む音が聞こえてきました。
「実はもう料理は出来上がってる状態で、後は温め直すだけだったのさ」
ラミさんは車輪付きの台にパンとサラダが盛られたプレートと鍋を乗せ、僕達の所へ運んできました。
「ラミさん僕も手伝います」
「それじゃテーブルにプレートとスプーン、フォークを並べてくれ」
僕は台からプレートを取ると皆の席に並べました。
「ありがとうカウル君。そして今日のメイン、魔女特製ジビエと森の野菜の煮込みスープだよ」
ラミさんが蓋を開くと胡椒とハーブの辛味と清涼感が混ざった食欲をそそる香りが部屋に広がりました。
お皿に盛られたスープは火の通った野菜や食べ応えのありそうな大きな肉がゴロゴロと入ってました。
「さぁ二人共。存分に召し上がれ」
「良い匂い……頂きます」
口の中に入れると野菜はしっかりと火が通り柔らかくいくらでも食べれそうでした。
お肉は食べ応えがあり、噛む度に肉自身の旨味と共にスープのエキスが味が口一杯に広がりました。
「はふ、はふ、あぁ……これすごく美味しいです!」
「あぁ、スープが体の奥へ染み入る」
「ラミさん本当にお料理が上手なんですね」
「ふふ、料理も薬品の調合と同じ様なものだからね」
「だが……良いよ、もっと、もっと褒めても!」
僕の手は止まらず、スープのお替りまで頂きました。
(……本当に美味しくて体の芯から温まる……それに何だろ?誰かに甘えたい……人肌を求めるこの思いは……)
僕は心の奥から沸き上がった言葉を自然と口にしました。
「ラミさん……何だかお母さんみたいです」
「……」
それを聞いたラミさんは一瞬表情を固まらせた後、ニヤリと口を歪ませ笑いました。
「は、は、は!まぁ……料理も魔女の嗜みよ」
「二人は聖王女の救出を頑張らないといけないからね」
「その為にはまず気力と体力を回復させる事」
「さぁ、もっと、もっと食べて元気になれぇ~」
ラミさんはなんだか上機嫌の様に見えました。
その後も僕たちは三人和気藹々と夕食を楽しみました。
「ふぅ……」
食事を終えた僕は椅子の上で満足感に満たされてました。
「お腹も膨れてリラックス出来たかい?」
「はい……なんだか心がほっこりして気持ちが楽になりました」
「それは良かった」
「人間の体になって新しい体験出来る様になったからね」
「はい……人の体って本当にすごいです」
「ふふ、それじゃ次は……」
「人間が生み出した偉大な発明!この世の天国というものを体験してもらおうか」
「へぇ、天国?うぁ、ちょっと!?」
ラミさんは僕をひょいっと立たさると、嬉しそうに手を引きます。
「君にぜひ体験してほしい。いや人間の体なら絶対にすべきだ!」
「さぁ此方だよ!」
「な、何処へ連れて行く気ですか!?」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみさ!」
そのまま僕はラミさんと屋上へ向かう事になりました。
次回『お風呂の時間』
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