第215話 嫌いよりキツいのは……。
部屋に入ってきたポーラはタイル前公爵を見た瞬間に身体を
まぁそうなるわな。若い時に凌辱された男性。恐怖以外の何ものでもないだろう。ポーラにとって最低評価の男性からの告白。普通に考えれば迷惑でしかないよな……。
でも、タイル前公爵の拗らせた純愛を解放しないとね。そうしないといつまで経ってもポーラも安心して生活を送れない。それでも恨むなら
「あ、あの……。ジョージ様……」
不安そうなポーラ。怯えている美人を見ると嗜虐心がムクムクと湧いてしまう。
あぁ……。また新たな性癖に目覚めそうだ。
「ポーラには悪いんだけど、少し付き合ってくれないかな。それが皆んなのためでもあるし、ひいてはポーラのためでもあると思うんだ」
俺の言葉に顔つきが変わるポーラ。
「皆んなのためですか。それはジョージ様のためにもなるのですか?」
そりゃなるよな。タイル前公爵からちょっかいを出されなくなるんだから。
「もちろんだよ。俺のためにもなるね」
「了解致しました。それで私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「そこにいるタイル前公爵の話を聞いてやってほしい。そしてそれを受けてポーラの素直な気持ちを伝えてあげて」
「わかりました」
そう言ってポーラはタイル前公爵に身体を向ける。
あ、美しい……。
凛とした立ち姿。
ポーラからは恐怖の色は感じられない。力みも無い。自然体なのに力強い。なんだろう、これは……。
タイル前公爵のポーラへの告白は謝罪から始まった。若き日のポーラへの凌辱行為。その後、妊娠していたポーラをバラス公爵家から放逐した事。また金銭的な援助をしなかった事。そして今回の件。
凌辱行為については、若気の至りであった。ポーラと結婚しようとしたが、父親の反対にあい断念してしまった。今思うとこれを1番後悔している。結局、権力が無いからこうなるんだと思い、一心不乱に金を稼いできた。また金銭的な援助をしなかったのは、ポーラを忘れたかったから。しかし父親が亡くなってから、ポーラへの想いが日増しに大きくなってしまった。その想いが今回は暴走してしまった。本当に申し訳なかった。
こんな事ばかりしでかしてきた自分だが、ポーラへの愛は本当だ。厚かましい願いだが、私と領地に来てくれないか。今までの罪滅ぼしをさせてほしい。お金の心配はしなくて良い生活を保証する。そしてもしポーラが良ければ結婚して欲しい。
俺は横で聞いてきたが、なかなか気持ちのこもった告白に感じた。これはもしかしたらもしかするかも……。
タイル前公爵の告白を一言も口を挟まず真剣な眼差しで聞いていたポーラ。
そしてゆっくりと口を開く。
「誠に申し訳ありませんが、謹んでお断りさせていただきます」
それは明白な拒絶だった。
ガックリと肩を落とすタイル前公爵。
「そうだな。酷い事ばかりしてしまった。許してもらえるわけが無いよな」
「許す、許さないって話ではございません。もうそれは私にとってどうでも良い事なんです。私は過去に囚われないで今を一生懸命に生きたいのです。そして未来を見ていたい。私にとって貴方はどうでもよい過去なんです」
どうでもよい過去って……。これって無関心って事だよね。これはエグいわ。タイル前公爵は再起不能になるんじゃないか。
「それなら私と一緒に今を一生懸命に生きてくれないか? 一緒に幸せな未来を作り上げないか?」
おぉ! タイルっち。頑張るなぁ。
土下座して「先っぽだけ! 先っぽだけ!」って言ってる感じか。
うん? これはちょっと違うなぁ。
しかしタイルっちの最後のお願いに無慈悲に首を横に振るポーラ。
「もう私の居場所は決めております。またそこにいると私は無上の幸福を感じられます。そしてそれが未来にも繋がっております。それが私の選択です」
そう言って俺に視線を動かすポーラ。そして頬を赤らめる。
な、なに? これはまさに恋する乙女……。
マジですか!?
そのポーラの視線に気付いたタイルっち。
タイルっちの俺を殺す勢いの視線が復活している。
「なるほど。ジョージ伯爵は既にポーラを手篭めにしておりましたか。自業自得とはいえ、私は今回の件でバラス公爵家の当主の座を降ろされ、領地に蟄居する事になりました。またバラス公爵家の事業からも外されました。この上、このような恥辱を与えられるとは……。ジョージ伯爵はなかなかの嗜虐趣味があるようですな」
タイルっちの低い抑揚の無い声に凄みを感じる。
手篭めにしてるわけないじゃん! 確かに嗜虐趣味に少し目覚めたかもしれないけど、美人の女性限定。決してオッサンを虐めて喜ばんわ! なんか凄い勘違いをしているよ!
「わかりました。ポーラへの想いは今この時を持って捨て去ります。自分の気持ちに素直になって告白をしたおかげでスッキリしました。またこれからの生きる目的を持つ事ができました。ジョージ伯爵には感謝してもしきれません。本日はありがとうございました」
そしてタイルっちは頭をひとつ下げ部屋を出ていった。
あれ? もしかして失敗だった?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どうも葉暮銀です。
度々すいません。更新スケジュールの変更がございます。
ショックです……。
昨日、カクヨムの松川 iさんの【下書きエピソードを書き溜めてから公開すると、新着小説に表示されません。】を読みました。
何と私のやり方では新着小説に表示されていなかった……。
おかしいと思っていました。
カクヨムでもいろいろ試してみましたが、イマイチでした。
くそ! カクヨムの仕様に負けてたまるか! いろいろ実験してやる……。
と、言うわけで1日に大量に更新するとどうなるのか試してみたくなりました。
毎日更新すると言ってましたが、気が変わってすいません。どうぞご了承ください。
来月の6/9(日)に18話更新します。その後は1日1話更新していきます。
現在、237話を書いております。執筆意欲は75%くらいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます