第32話 今後の…

 それから私達は訓練をし続けていた。

 ルイ君は、飲み込みが早く護身術が合ってるようだ。

 兎獣人も、獣人の中では力が弱いほうだしね、それでもルイ君は私よりも力は強いけどね。

 単純な力比べなら既に敵わない。

 日頃の鍛錬の賜物なのだが…。

 気付いたら私は10歳になっていて、ルイ君ももう少しで9歳だ。

 ルイ君の誕生日の前に期末試験があるが、問題は無いだろう。

 

 今日は、ケルノス様が寮の見学にいらっしゃる。

 ルイ君の期末試験が終わったら、郷に一緒に帰る予定のようだ。

 寮を見学した後、来期の入学予定を決める為に街を訪れたと聞いている。

 私としては、ルイ君が無事に卒業出来たら問題無いと思っているが、エリーさんや代官様は期待しているようだ。

 

 「お久しぶりで御座います、ケルノス様。

 どうぞ此方へ御座り下さい。」


 「綺麗な寮だな、ルイは今は試験中か。

 ルイが戻るまで待たせてもらう。」


 私は紅茶を用意して、少量のブランデーも用意した。


 「宜しければ此方もどうぞ。」


 「ワシが酒好きなのも知っておるのか?

 今回はルイも大分世話になったようだ。

 最初は不安だったが、此方に世話になって良かったようだ。

 来期も期待しているゆえ宜しく頼む。」


 「私の力は微々たるものです。

 ルイ様が優秀なのでしょうが、評価して頂けるのなら幸いです。

 微力ながら努めさせて頂きます。」


 優雅に紅茶を嗜むケルノス様だが、結構ブランデーが入っていると思う。

 これならお酒をそのまま出したほうが良かったかな?

 ケルノス様と雑談をしていると、ルイ君が帰って来たようだ。


 「センっ、…ケルノス様。

 本日は、出迎えも出来ず申し訳御座いません。」


 「そう改まらずとも良い。

 その様子だと試験の結果は問題無さそうだな、来期も頑張るがよい。

 ワシは一旦戻るが、明日は一緒に郷に帰ろうぞ。

 今日は寮母殿に報告するがよい。」


 ケルノス様が、お帰りになられるのを見送りルイ君と2人きりになる。

 ルイ君は恥ずかしそうに、報告して来る。

 

 「センちゃんのお陰で、今期の試験は成績が良かったよ。

 ありがとう、センちゃん。」


 「結果を出されたのはルイ様で御座います。

 私がしたことは、たいした事は御座いません。

 それよりも明日帰るのであれば、此方をお渡しいたしますね。

 お誕生日おめでとう御座います。」


 私はルイ君に、紙包を渡す。

 中身は大したことのないものだ。

 自動調整が付いたカエルインナーとナックルグローブ。

 それとエルダートレントのイヤーカフが入っている。

 

 「私が使っているインナーと、同じ素材のナックルガードです。

 ルイ様は武器は使われないので、此方を用意致しました。

 イヤーカフは、魔法触媒になりますのでお試し下さい。」


 「ありがとう、センちゃん。

 大切に使わせてもらうよ、ケルノス様も言ったように来期も宜しくね。」

 

 その日はルイ君の好きな料理でお祝いし、翌朝護衛のライオン獣人の方が迎えに来たのでルイ君を見送った。

 ルイ君を見送った後、私は寮の掃除をしてエリーさんのところに向かった。

 

 「お久しぶりです、エリーさん。

 今日は、学生寮のことですか?」


 「お久しぶり、センちゃん。

 その話もないことはないけど、暫く会ってなかったのだもの、色々お話ししたいわ。」


 「それじゃ、紅茶でも用意しますね。」


 紅茶と茶菓子やドライフルーツを用意してエリーさんとたわいもない話をする。


 「ところでセンちゃん、ルイ君とは何処までいったの?」


 「何処にも行ってないですよ?

 もしかして男女の仲ってことですか?

 其れこそ何も無いですよ。」


 「そうなのね、ルイ君が大分懐いているみたいだから、もしかしたらって思ったんだけど。

 ルイ君も学校で言ってるようだし…。」


 「ルイ君が、学校で何か言ってたとしても私も仕事でお世話していますので何も無いですよ。

 もしかして、何か問題になってます?」


 「ちょっとね、ケルノス様は何も仰らなかったけど、獣人の郷のほうでは引き抜きだなんだって騒ぎになったみたいなのよ。」


 「それはちょっと面倒ですね。

 もしかして私は、担当から外されますか?」


 「それは大丈夫よ、来期も頑張ってもらうけど、男性獣人1人と、郷から1人お世話係を新たに招くから宜しくね。

 それと、来期の新入生は2人に決まったから、ルイ君含めて3人になるわ。」


 「畏まりました。

 新入生の詳細が分かりましたら教えて下さいね。

 獣人族のかたは食事に気を使いますから。」


 「分かったは、後で詳しく人を向かわせるから。

 難しい仕事だけどセンちゃんは楽しんでる?」


 「私も楽しいですよ、同世代の子達と話す機会が余りなかったので新鮮ですね。

 まぁ、私は仕事ですけどね。」


 それから寮に戻り、担当者と打ち合わせをした。

 ルイ君と新入生が入って来るのは2週間後の予定になっている。

 人数が増えるので、寮の部屋割りなどを決めて男女別に分けた。

 お風呂は交代制しておく、獣人さんはお風呂が余り好きでは無いようなので、別に男女別の個室シャワーを用意してもらった。

 清掃の魔法がいい人は、私に言ってもらうことにしよう。

 室内運動場は、要検討と保留になっている。

 今後もし、人数が増えるようなら予算も下りるだろう。

 それと、もう1人の世話役として羊獣人のエバスちゃんではなく、エバスさんを紹介してもらった。

 レフ君が居たらさぞ悔しがっただろう名前だ。

 男性の獣人で、執事然とした格好をしており何となくだが、レイラさんと同じで初代男爵様のニオイがするが触れないでおこう。

 エバスさんは、戦闘は余り得意では無いとのことだが、戦えない訳ではなく勉学のほうが得意なだけなようだ。

 ただ、防御力は高いらしく、護衛術の使い手らしい。

 此方の世界の人達は、自分のスキルを確認する術が無いからなんとなくでしか把握してないから仕方がない。

 本人曰く、戦闘より身の回りのお世話やサポートするほうが好きらしく性に合っているようだ。

 なので、今期の学習はエバスさんに面倒を見てもらいたいとお願いしたところ快く引き受けてくれた。

 正直言って、私もまだまだなんだよね。

 学ぶことは山ほどある、前世の知識で何とかなっているが、此方の世界のことは学ぶことが多い。

 何なら私も少し学習に参加させてもらおうと思っている。


 郷のほうから来る獣人はどんな人が来るかは、まだ決まって無いようだが、世話役なら女性が来ると思う。

 って、フラグを建てるといけないので、部屋は2つ用意しときますかね。


 レフ君にちょっと探ってもらおうかなと思ったりもしている。

 そのレフ君だが、今回何とルイ君に付いて獣人の郷に向かっている。

 レフ君がどうしても付いて行くと言うので許可はしたが、ルイ君の迷惑にならなければいいけど。

 普通、獣人の郷には歩いて6日程掛かるようだが、獣人族は木の枝の上を飛び回り、魔物との戦闘を回避しながら駆け抜けるので2日も有れば着く。

 ケルノス様だけなら飛んで行くので、1日も掛からないとか。

 魔の森は空の魔物も多いので、飛んで行くのはお勧め出来ないのだが、ケルノス様なら関係ない。

 途中、野営を挟むが安全に休める中継地点を作っているそうで問題なく帰れるようだ。

 それもケルノス様が倒したエルダートレントの中身をくり抜いて拠点にしている、贅沢仕様のログハウスらしい。

 ケルノス様の魔力が染み付き、弱い魔物は近寄りもしないようだ。

 強い魔物でも魔力が染み付いたエルダートレントの素材を壊すことは中々出来ないことだ。

 そこには常時何人かの獣人が常駐しているから、不寝番の必要もない。

 そこから先は獣人のテリトリーになっているようで、比較的安全に郷まで行けるようになってるとルイ君に教えてもらった。

 ルイ君には今度一緒に郷に行きましょうと誘われたが、私が行くことは多分ないよね。

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