第六十七篇 テーマ「肌寒い」 ジャンル「伝奇」

 山道を行くと肌寒い風が吹いていた。

 草木も葉も落ちて、秋深いこの時期には仕方がないだろう。

 でも、それだけが原因ではない。


 山中には、古くから伝わる「黒き者」と呼ばれる存在がいると言われている。

 その姿は闇に溶け込んでいて、姿が見えることは殆どなく、ただただ寒気を伝えるような感覚が肌をよぎっていく。

 不気味な存在だ。


 僕はその噂を信じてはいない。

 でも今宵、偶然それと出会ってしまった。


 山奥の隠れ家で一人、小説を書きながら時間が過ぎていると、急に風が荒れ始めた。

 掌でページを抑えながら、窓の外に視線を向けた。


 そこには、闇の中でふわりと揺れている気配があった。

 人なのだろうか、何かの気配なのだろうか。


 閉じた窓を開けて、外に飛び出してみた。

 黒き者を見ようと思っていたわけではないが、今ここにいるとしたら確認したい気がした。


 数秒間、空気を吸ってその気配を感じた。すると、道の先に誰かの姿が見えてきた。

 黒い物体が、浮遊しているかのように風に揺られている。


 近づいてみると、それは黒き者だった。

 ただ風に揺れているだけで、何もしてこちらに向かってくる様子はない。


 それでも、僕は一歩ずつ慎重に近づいていった。

 しかし、近づくにつれて、体が散らかりそうな感覚に襲われた。


 気づけば、黒き者まであと僅かの距離まで来ていた。

 しかし、突然、その存在が左手に襲いかかってきた。


 その直撃は、肌を這いさせた寒気と、身体が飛び上がるような耳鳴りを引き寄せた。

 密集する不気味な気配に怖気付き、僕は自分自身の感覚に錯覚させられた。


 恐怖が強すぎて、意識が遠のく。

 でも、手に入れた恐怖を誰かに分かち合いたくて、奇声を上げてしまった。


 その奇声が、ほどなくして定まった気配となって、山中に響いた。

 すると、黒き者は不気味な光に包まれ、周囲が暴風雨のような状態になった。


 その光に包まれた黒き者は、実体を持つ存在に変化した。


 それは黒き者と呼ばれる存在の姿だった。

 ただし、その姿はあまりに恐ろしく、耐えられずに僕は逃げようとした。


 再び不気味な気配が追い上げてきた。

 簡単に逃がさない黒き者。

 僕は恐怖に走り、断崖絶壁を越えようと壮大な選択をした。


 残念な
















【文字数エラーで続きが表示されなかったのですが、雰囲気的には良いかなぁと】

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