第六十五篇 テーマ「逆光」 ジャンル「ミステリー」

 私は逆光の影響を指導する図書館の職員であり、その日もいつも通りに仕事をしていた。

 しかし、その日は何故か人が来ない。

 いつもならば溢れるほどの人であふれかえっているはずなのに、その日に限ってその数は少なかった。


 それでも私はひとつひとつの本を棚に戻し、時間が過ぎるのを待っていた。

 時計がおよそ六時半を指した時、誰かが入ってきた。

 顔をあげてみると、それはいつも来ている老婆だった。

 私は挨拶をして彼女の持っていた本を借り出帳に記入した。


 老婆はいつもならば借りる本は一冊だけなのに、今回は五冊も借りた。

 私は彼女に聞き返すと、


「家に引きこもっているのは嫌なので、夕方からはここにいたのよ。」


 と彼女は答えた。

 私はそれを聞き、身構えた。図書館の規則で、誰かの滞在時間が長くなりすぎた場合、書籍を借り出さずにその場で読んでもらわなければならないのだ。


 老婆は私に向かって何かを言おうとしていた時、正面から強い逆光が入り込んだ。

 私は老婆と目を合わせ、何かが良くないことが起こっていることが感じられた。


 その夜、図書館の鍵をかけて就寝しようとしていた時、私は後ろから誰かが私の名前を呼ぶ声を聞いた。

 足音を確認するため、私はり逆光がある部屋へと向かった。

 そこには、老婆が倒れていたのだ。

 彼女の口からは血が流れており、胸には刃物が刺さっていた。


 私は動揺して警察に連絡した。

 しかし、私が話すよりも先に、警察の方から私にかけられた言葉に怯えた。


「彼女は手紙を残していたとのことだが、その内容が非常に怪しい。」


 私は早急に手紙の存在を知り、老婆の荷物を探した。

 そして、手紙を見つけた。

 中には「あの日の光が忘れられなかった。あの彼女が私に迫りくるのが怖かった。」と書かれていた。


 私は怖くなり、手紙を警察に渡した。

 後日、犯人が捕まるまで、私は疑われることもあった。

 今でも、あの日の逆光が私にはトラウマとなっている。

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