36日目「72の法則とその精度の確認」
複利法に関する近似法則72の法則についてその証明と実験をする。
72の法則
複利について、元本をA、年利がr、元本が2倍になるための年数をNとすると、r・N≒72
元本をA、年利がrとしたときのn年後の金A(n)は次のような漸化式に従う。
A(0)=A
A(n+1)=A(n)+rA(n)=(1+r)A(n)
この漸化式は等比数列になっているので、簡単に解くことができる。
具体的には、A(n+1)/A(n)=1+rより、A(n)/A(0)=A(n)/A(n-1) A(n-1)/A(n-2) ......A(1)/A(0)
=(1+r)^n 、これで一般項A(n)=A(1+r)^n が導ける。
さて、本題は72の法則についての説明であった。A(N)=2AとなるようなNが満たす方程式を探っていこう。
ここで、疑問を抱いた方がいるかもしれないので補足しておく。A(N)=2Aを満たすようなNはのちにわかる通り、自然数でない場合も存在し、そもそも自然数でない場合の方が圧倒的に多い。つまり、単純な方程式だけではこの問題は表せない。では、こう考えてみるのはどうだろうか。
この問題はA(N-1)<2A≦A(N)を満たすようなNを見つけるものである。
A(N)の単調増加性より、このNは一意にしか存在せず、また、A(N)は発散するので、このNは必ず存在する。
この問題の補助的な役割をするのが先ほどのA(N)=2Aという方程式である。
A(n)を実数まで拡張して、xを実数としてf(x)=A(1+r)^xを考えてみると、0<rより、f(x)は狭義単調増加する。ここで、自然数nについて、定義からA(n)=f(n)が成り立つ。
A(N-1)<f(x)≦A(N)が成り立つことがわかっていて、A(N-1)=f(N-1)、A(N)=f(N)であるので、f(N-1)<f(x)≦f(N)が成り立つ。つまり、N-1<x≦Nが成り立つ。これによって、Nを完全に特定することができた。つまり、結局は先に記述したような方程式を解けば良いという結論に至った。
話を戻そう。A(N)=A(1+r)^N=2Aであるので、(1+r)^N=2が成り立つ。rは定数であることに気を付ける。Nを求めたいので、両辺にlnを適用する。すると、Nln(1+r)=ln2が成り立つ。これでNを求められるようになった。
しかし、ここで問題なのは、ln(1+r)の値をいちいち求めるのが面倒であることだ。
幸いにも、rは0と1の間の値に収まっている。グラフ作成サイトなどでln(1+r)-rについて確認してみると、r=0のところでベッタリとグラフが張り付いたようになっていることが確認できるはずだ。
つまり、rが0に近ければ、ln(1+r)≒r
これを代入すると、N・r=log2。
log2=0.6931...であるので、100倍した時に約数が多い(rによる割り算で整数になりやすい)0.72で近似してやるとNr=0.72が導けた。
実際のNの値はN=ln2/ln(1+r)であるが、この近似式によるNの値は、N=0.72/rである。では実際のNと近似したNはどれほど離れているのかというと、実際のNをNとおき、近似したNをN'と置くとr=0.0784の時点でN/N'=1でありr=1の地点ではN/N'=1.3、r=0では定義されないので、r=0.001の地点について調べてみると、N/N'=0.96と、rが1に近いと少し精度は悪くなるが、それでも1.3倍程度と、良い近似になっていることがわかった。特に、ln(1+r)≒rの近似の性質上、rが0に近いと良い精度の近似になるとわかった。
72の法則を一般化してみよう。
72の法則を一般化した問題
元本A、年利rとする。元本が年利のみで1≦α倍以上に初めてなる年Nを求める。
nを年数として、A(n)をn年後の元本とする。A(n)=A(1+r)^nと表せる。xを実数として、f(x)=A(1+r)^xとする。A(n)とf(x)は狭義に単調増加する。A(N-1)<αA≦A(N)となるNを求める。このために、f(p)=αAとなる実数pを求める。A(1+r)^p=αAより、(1+r)^p=α、両辺lnを取って、pln(1+r)=lnα、1≦αより、適切な解が存在して、p=lnα/ln(1+r)が導けた。ln(1+r)を近似してrとすると、p≒lnα/r
72の法則の導出には様々な面白いところがあった。テイラー展開でのある程度の近似を用いるなど、人間がパッと計算しやすいようにする工夫が見られた。
近似というのは、事象を人間にもわかりやすくするため、もしくは解決の糸口を見つけるための工夫である。それが見られた72の法則は近似を知る糸口としてもとても良い法則だと思う。
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