第7話 死者のダンジョン 1

「……カエサル隊長」

「何だね? アダマ君」

「このダンジョンに潜るの……本気ですか? 」

「あぁ。本気だとも」


 それを聞き俺は顔を引きらせた。


 朝、さらわれるかのように馬車に詰め込まれてついた先は『難関』で有名な『死者のダンジョン』と呼ばれるところだった。

 実際に潜ったことはないがアンデット系の魔物が多いと聞く。

 加えるのならば現在ここは立ち入り禁止のはず。


「何で立ち入り禁止のダンジョンを使っているんですか?! 」

「あぁそれは独立ダンジョン攻略部隊によって攻略が進んだからだ」

「! 」


 それに驚き目を開く。


 死者のダンジョン。

 ここはその難易度に加えて死亡率も非常に高い。それにアンデット系の魔物とあってか魔石以外に旨味うまみがない。

 諸々もろもろの理由から国が買い取り立ち入り禁止にして管理していたはずだが、まさか独立部隊が攻略を進ませていたとは。


「といっても進んだのは十階層までだ」


 そう言いながら今日も黒い軍服でばっちり決めているカエサル隊長が三つの石を渡してきた。


「これは帰還石! しかも三つも?! 」

「ダンジョン攻略で得られる利益を考えればこのくらいの優遇ゆうぐう措置そちは当然」

「いやいやいや当然ではないですよ。この三つで普通の家なら一けん建ちますよ! 」

「なに? ならばこの三つを売って私との愛のを作りたいのか? 」

「よし皆行こう」

「つれないねぇ。まぁいい。いざという時の為に私がここにいる。死にそうになったら帰還石を使え」

「……魔物を外に出したら駄目でしょう」

「私が潰すから問題ない」


 どれだけ自信があるんだ、と思いながらも我らが隊長殿を見る。

 腕を組み軍服を羽織はおるその姿は何故か頼もしい。


「貴君らの任務は中にいる魔物を引きしつつ魔石を採ってくること。それ以上でもそれ以下でもない! 」

「「「はっ!!! 」」」

「では行け! 」

 

 その言葉と共に俺達は禍々まがまがしい扉に体を向け、俺達はダンジョン内へ入っていった。


 ★


「アダマ。予定通り頼む」

「範囲防御外に出るなよ」

「分かっている」


 その一言と共にシグナは消えるように走って行った。

 光の道を作りながら進んでいるがあれは魔法剣か?

 が見惚みとれるひまもなくスケルトンが襲ってくる。

 それを超硬化で固めた拳で殴り頭部を破壊した。


「まだ打ったらダメなのですか? 」

「魔力を温存おんぞんしておいてくれ」

「分かりました」


 入った瞬間スケルトンの大群に襲われた。

 一階層はスケルトンを主体とした物量で押してくると、カエサル隊長は言っていた。

 その通りになったが、今までに体験したことのない魔物の軍勢には驚かされる。

 そう思っている間にも十体ほど拳で潰していく。


「多いな」

「やはりわたしが消し飛ばしましょう」

「ちょ?! シグナ。一旦戻れ! 」

「え?! 」

「大いなる風に絶望しろ! 岩石竜巻ロック・トルネード


 詠唱が聞こえてきた。

 後ろを振り返りエリアエルを見ると茶色と緑色の魔法陣が浮かび上がっていた。

 ひゅーっと風を感じた。

 スケルトン達の方を見ると巨大な茶色い竜巻が巻き上がっていた。


「ま、まじか」


 竜巻にスケルトンが巻き上げられている。

 巨大な岩石がスケルトンを粉々にして行っていた。

 これシグナ、無事か?

 心配しながらも終わるのを待つ。


 ゴン!!!


 岩石が飛んできたのを拳で砕く。

 何発か落とした後竜巻は消え去り、そしてスケルトンの群れはなくなっていた。


「し、死ぬかと思った」


 シグナの声が聞こえてくる。

 少し遠くを見ると彼女が俺達の方に近寄って来た。


「無事だったんだな」

「アダマの範囲防御が無ければ死んでいた」

「早速役に立ったようでなによりだ」

「あぁ正直ここまでの強度を持っているとは思わなかった」


 そう言いながらシグナは無傷の体をあちこち見る。

 しかし——。


「最初は魔法を打たない約束だったはずだが? 」

「そこに魔物の集団がいる。これだけでわたしが魔法を放つ理由になります」

「いやいや、そのせいで死にかけた人がここにいるんだが」

「つ、次から気をつけます」


 そう言うエリアエルの言葉を信じ、魔石を拾いながら、何もいなくなった一階層を俺達は降りた。


 ★


「ハハハハハハ! 燃えて燃えて燃えてしまえ!!! 獄炎インフェルノ


 五階層。俺とシグナの前で多くのゾンビが燃えている。


 後ろで燃やしているエリアエルをかばうように俺とシグナは立っている。

 炎から逃げてくるゾンビ達をシグナが魔法剣で切りくと、俺は左から来るゾンビに回しりをかました。

 

 四階層までは比較的すんなりと通れた。

 魔物の数が少なかったこともあるが、エリアエル自身が自重じちょうしたのも大きいだろう。

 しかしそれもつかの間、五階層へ降りると彼女の欲求は爆発した。


 現在、まるで性格が変わったかのようにエリアエルは魔法を連打し迫りくるゾンビを焼き殺している。


「……よく今までエリアエルは地上でこれをやらなかったな」

「時々魔法の練習としょうして訓練場に魔法を叩きこんでいたからな。それで暴走することはなかったのだろう。だが今の彼女を見ると本当にギリギリだったみたいだ」


 シュッ!


「あれだな。冒険者にさせたらダメなやつだ」


 ゾンビにアッパーをり出しながらシグナに言う。


「同意だ。すぐに暴走して人を巻き込む状況が見える」


 シグナは逃げて来たゾンビを切り裂いて俺に言った。


「何も残らなさそうだ。差し詰め文章にするのならば【彼女が魔法を放った後、そこには何も残らなかった】と付け加えられる風景が出来上がりそうだな。しかし……、それにしても大丈夫か? 」

「何がだ? 」

「いや熱くないのかと思って」

「……そう言えば熱さを感じないな」


 ゾンビを炎の方に蹴り飛ばす。


 首を傾げるシグナを見ると、焦げ一つ付いていないし、汗もかいていなさそうだ。

 彼女は殆ど下着と言っていい装備を着けているが焦げ一つ——傷一つすら——付いていない。


 エリアエルが放っている魔法は上級魔法。しかも見たことのないような火力を誇っている火属性魔法で、ゾンビが一瞬で蒸発する姿を見ると信じられないほどの温度と言うのは分かる。


 恐らく俺は耐性系スキルの影響で熱さを感じないのだろうと思うがシグナはスキルを持っていないはずだ。

 ということはどうやら俺の範囲防御は耐性も仲間に付与できるということか。


 そう思いながらも周りを見る。

 もう火から逃げようとしているゾンビはいない。

 少し顔を上げると火の壁が消え去ろうとしている。


「焼き尽くしましたよ。さぁ次に行きましょう」


 エリアエルが本当に言い笑顔でそう言った。


———

 後書き


 こここまで読んでいただきありがとうございます!!!


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