番外編1-3



「ハ、ハロルド?近くないですか?」



「どうして?俺たちは結婚してるし近くてもいいでしょ?」



「う……それはそうですけど……。」



 ある日ソフィアが帰宅すると、先に帰っていたハロルドに迫られ、ソフィアは扉に背中を付けたままそこから動けないように退路を塞がれてしまった。ハロルドは不機嫌な表情のままソフィアを見つめている。どうしてこうなったのか、ソフィアは戸惑いの色を浮かべた。




◇◇◇◇



 ソフィアとハロルドがギクシャクし始めてから十日ほど経った。ハロルドは、ソフィアとの関係修復に頭を悩ませていた。仕事中もあまり集中できず、公爵に「どうせ休日もたんまり余っているんだ。さっさと帰りなさい。」と気遣われてしまったほどだ。



 流石に反省したハロルドがとぼとぼと使用人宿舎へ向かっていると、離れたところで休憩中であろうソフィアを見掛けた。周りには複数名の男の使用人たちがいる。



 ハロルドと籍を入れた頃から、ソフィアは職場でも柔らかい雰囲気となった。それに釣られて男の使用人たちがソフィアへよく話しかけるようになった。



 彼らも冷徹執事の妻であるソフィアとどうにかなりたいなんて思ってはおらず、ただ可愛く穏やかな女性とお喋りしたいだけ、という様子で色めき立つような雰囲気ではないのだが、それでもハロルドは面白くない。しかも最近自分にはめっきり見せてくれない笑顔を彼らには見せているものだから余計に腹立たしい。



 ハロルドの怒りのオーラを感じた男たちは、そそくさとソフィアから離れた。急にいなくなった男たちにソフィアは戸惑っていたようだがハロルドの視線には気付いておらず仕事へと戻って行った。




◇◇◇◇


「ハロルド……?」



 不安そうに見上げられ、ハロルドは眉間に皺を寄せた。自分は怒っているし、悲しいはずなのに、ソフィアのそんな顔を見れば胸が痛くなる。



「はぁぁ……。」



 大きな溜め息を吐いた後、ハロルドはソフィアをぎゅうぎゅうに抱き締める。



「ごめん、ちゃんと話そう。」



「ひゃっ!」


 ハロルドはソフィアを抱きかかえ、ベッドへと移動した。ソフィアを膝に乗せ、ぴったりと抱き寄せたまま離れようとしない。彼の不安を感じ取ったソフィアは観念し、何を思っていたのかを話し始めた。




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