第23話



※ 更新が遅くなり申し訳ありません!引き続きお楽しみいただければ幸いです。



◇◇◇◇



「ソフィア。お疲れ様。」



 蕩けるような笑顔を携えて、ハロルドはいつもの定位置でソフィアを待っていた。



「ハロルドもお疲れさまでした。……今日、どこかに食べに行きませんか?」



 ソフィアは、ハワード公爵からの依頼を遂行すべく、ハロルドを夕食に誘った。ハロルドは、ソフィアの誘いに目を見開いた後、頬を綻ばせた。



「……っ、ああ、行こう!」



「ハロルド?」



「……ソフィアから夕食の誘いなんて初めてだから。」



 嬉しい、とストレートに告げられると、ソフィアの顔まで熱くなる。婚約してから、帰り道にいつも夕食を誘うのはハロルドだった。また、一人の時間も必要なソフィアは、その誘いを断ることすらあった。誘っただけで(しかも自分の意志ではなく、公爵の依頼のための誘いだ)こんなに喜んでくれるのなら、もっと早く誘えばよかった、とソフィアは後悔した。



「ソフィア?難しい顔してどうしたの?」



「ハロルドにしてもらっていることばかりで、反省していました。」



「俺がしたいからしてるだけだよ。反省なんてしないで。」



「でも……。」



 今度からはもう少し誘いますね、というソフィアの言葉を聞いて、ハロルドはへにゃりと笑った。



 公爵家から程近い、食事処に到着し、二人は席に着いた。まだ夕食には少し早い時間で、他の客は殆どいない。



「空いていて良かったですね。」



「ああ。何を食べようか?」



 そんな会話をしていると離れた席に、若者たちが楽しそうに過ごしている様子が目に入った。その中にひと際目を引く、美丈夫がいた。ソフィアが、青年とバチリと目が合い、彼はひどく驚いた表情を見せた。「……イアン?」とソフィアの口から小さく呟かれた名前を、ハロルドは聞き逃さなかった。





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