第3話
カレンの家に到着すると、顔色の悪い両親が迎えてくれた。応接室に通されて早々にウィリアムは、カレンの両親に対してガバリと頭を下げた。
「大切なお嬢さんを長い時間引き留めてしまい、申し訳ありませんでした。」
「は、はぁ…………。」
ウィリアムは伯爵家で、カレンの家よりも爵位が高い。そんな相手に深々と頭を下げられ、カレンの両親は居心地悪そうにしている。
「順番を間違えてしまい、申し訳ありません。カレンとは以前からお付き合いさせて頂いております。どうか婚約の赦しを頂けないでしょうか?生涯大切にすることをお約束致します。」
よくもこんな嘘がペラペラと言えるものだとカレンは感心した。両親を真っ直ぐに見据える眼差しも、時折カレンに微笑みながら染める頬も、誰が見ても愛する人との結婚の赦しを乞う青年にしか見えないだろう。
「まぁ、ウィリアム殿の事は幼い頃からよく知っているが…………本当にカレンのことを愛しているのかな?不躾で申し訳ないが、君の噂はよく私の耳にも入ってくるよ。」
カレンの父も王宮職員だ。父の疑問は尤もだとカレンは心の中で頷いた。
「ご心配させてしまい、申し訳ありません。どうしても王太子付きということで目立ちやすいようで、噂のタネになりやすいのです。王太子からの命を受け、調査を目的とした任務の中で令嬢と話すことがあり、それだけで勘違いされ、噂が大きくなっているようです。」
「そ、そうか…………。」
父は半信半疑の様子で目をパチクリさせている。カレン本人はというと一ミリも信じていない。美しい令嬢達に囲まれて楽しそうにしているのを目撃するのも、その令嬢達にやっかまれるのも、カレンの日常だからだ。
「ご両親のご心配も尤もだと思います。私が婚約者が出来れば、王太子は調査の為に令嬢と関わるような任務は全て外す、と約束して下さっています。不安にさせてしまい申し訳ないのですが、どうかこれからの私の行いを見て判断して頂けないでしょうか。」
ウィリアムは、また深々と頭を下げている。
ウィリアムはその後もカレンへの愛を訴えていたが、結局急な話ということもあり、またカレンの両親の戸惑いもあったので、ウィリアムの両親も交えて話し合いをすることとなった。
話が終わり、カレンが玄関で見送るとウィリアムはカレンの額に唇を寄せた。
「ちょっと!ウィリアム!」
「大丈夫だから、安心して。愛してるよ。」
小声で囁き、愛おしそうにカレンの頭を撫で、名残惜しそうにウィリアムは去って行った。
(一体何なの?!)
本当の恋人のように振る舞うウィリアムに、カレンは混乱を極めた。
(これじゃあ、まるで……………。)
触れられた場所が何故熱を持っているのか、カレンは気付きたくなかった。
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