第19話(絵あり)「木星の流れるプール」へ、遊びに行こう!

#近日ノートに、挿し絵があります。

本文と一緒にご覧ください。

近日ノート☆4☆、☆5☆です。




今日は、みんなの休みが重なったので、

エマが楽しかったから、行ってみて、

とエドに教えてくれた、

「木星の流れるプール」へ、

行くことなった。

「ここにはカフェがあって、エマがスポンジケーキがおいしいって、言っていたよ」

エドが言った。

「僕の好きなやつだ。エマは、いつも素敵な情報をくれるね。どうやって、知るの?」

リアムが聞くと、

「『土星の環リンク』も『海王星のダイヤモンド狩り』も『木星の流れるプール』も、エマの友達が教えてくれたみたい」

エドが言った。

「そうかぁ、エマには情報通の友達がいるのか。いいね」

リアムが、ニコッとした。

「土星と海王星に行けるってなった時も驚いたけど、まさか、木星に行ける日が来るとはね」

レオが言うと、

「うん、驚いた」

ステファンが言った。

「そうだよね、木星に行けるなんて、すごすぎる」

リアムから、ワクワク感があふれていた。

僕は、無意識にレオを見ていた。

ファイカプの近くにいた僕達に気づいて、

スクエアが現れた。

「どこへ行くの?」

と聞かれたので、

「中型のプカプで、木星まで」

と頼むと、カプカを出現させてくれた。

リアム、エド、ステファン、レオ、僕の順にカプカと一緒に出現した階段をのぼって、

側面にあいた、人型の出入り口から

乗り込んだ。

「何? さっきから、視線をすごく感じるけど」

レオが、ニヤニヤしながら言った。

「え、あ、ほら」

僕は、レオの肩にホコリがついているかの

ように、はらうフリをした。

でも、レオは、お見通しだった。

「残念だけど、エルザは今日、勤務だよ。僕が木星に行くことは知っているから、『スカイが行くなら行きたかった』と言って、不機嫌だったから、今度、連れていってくれない?」

僕の顔が、熱を帯びた。

「本当にエルザが、僕と行きたいって言ったの?」

「うん、言っていたよ。連れて行ってくれないの?」

レオがまた、ニヤニヤして言った。

「う、うん……は、早く、乗ろう」

僕は、レオの背中を押して、

カプカに乗り込んだ。


木星への行き方は、

土星と海王星への行き方と同じで、

月や火星、浮遊コロニーのファイカプから、

中継浮遊コロニー経由で行く。


全員がクッションに座ると、

カプカの出入り口がふさがった。

最短ルートの検索が終わると、

「出発します」

スクエアが言うと、カプカが動き始めた。

中継浮遊コロニーを、いくつ経由したのか

分からないけど、出発してすぐに、

木星の浮遊コロニーJP5に着いた。


「浮遊コロニーJP5」は、

月と火星のように、惑星本体とつながって

いるわけではなくて、木星のそばに設置してある浮遊コロニーで、

ここには、ファイカプとカフェ、

木星へと続く一方通行のオーヴウォークが

2本ある。


木星を、望遠鏡ごしや図鑑などに掲載されて

いた写真で、見たことがある人は、

縞模様のイメージがあると思う。

色の濃い部分を「縞」、

色の淡い部分は「帯」と呼び、

赤道に沿って、縞と帯は、

交互に存在している。

縞と帯は、風向きが反対で、色の違いは、

含まれる有機化合物の違いによると

推測されている。



カプカを降りると、

目の前に、壮大な景色が広がっていた。

「すごい! 何これ……お、大きい!」

「これが、木星……」

「木星の表面が揺らめいている」

僕達は、土星と海王星を初めて間近で見た時

同様、驚愕した。

木星を呆然と見ていた僕達は、

「今日が、初めてですか?」

声をかけられて、振り返った。

「もしかして、エマの友達のタピア?」

エドが言うと、

「そうです。覚えていてくれたのですね、嬉しいです。地球上ぶりの再会ですね。今日は、エマに勧められて?」

ニコッとして、タピアが言った。

「本当だね、地球上ぶりの再会だ。エマに、ここを教えたのは、タピアだったの?」

「そうです。土星の環リンクから、海王星のダイヤモンド狩り広場を経て、木星に異動になりました」

「そうだったのか」

「あの……素朴な疑問があるのですが」

僕が言うと、

「何ですか?」

タピアが言った。

「地球にいた時に、宇宙についての本を読んでいた、僕の記憶が確かなら、木星は、ガス、気体の惑星だったと思うのだけど、プールというのは、どういうことですか?」

「説明しますね。ここは、木星の気流を利用した『流れるプール』です。まずは、これを着てください」

タピアが僕達に、服をくれたので、

今着ている服の上から着ると、

はじめは大きすぎるサイズだったけど、

徐々にちょうどいいサイズに

変化していった。

海王星専用のボディースーツ同様、元々着ていた服は、袖口から出てこなかった。


まぁ、ヒューマンボウルの体の僕には、

元々、着ていた服なんてないけど……。


「えっと……」

タピアが僕を見たので、

「僕は、スカイです」

名前を伝えた。

「スカイの見解通りで、木星はガスの惑星ですが、海王星同様、ここにも専用のボディースーツがあって、これを着ると、気体を捉えることができるので、水の中にいるかのように、気体の中で泳ぐことができます。木星の中では、脱がないでくださいね」

タピアが言うと、

「えっと、気体なのに、泳げるの? 気体が液体になるの?」

リアムが混乱していた。

そんな様子を見ていたステファンが、

「気体が液体になる、その認識でいいと思うよ」

と言った。

リアムはそれを聞いて、

理解ができて、嬉しそうにしていた。

「恒例になってるから、参考までに聞きたいのだけど、脱ぐと、どうなるの?」

エドがニコッとして、

タピアに聞くと、

「脱ぐと、木星の中心に向かって、ひたすら落下していき、岩石と氷でできた木星の中心部分にぶつかります。私やスカイのようにヒューマンボウルの体なら、頑丈なので大丈夫ですけど、生体ヒューマンでは……大量の血を見ることになりますよ。絶対に脱がないでください。でも、万が一の時は、木星の気体の層の中間にセンサーを設置しているので、ここを通過すると、AIキュープがすぐに来て、助けてくれます」

ニコッとして言った。

「それなら、よかった」

リアムが、安心した様子で言った。


タピアに、「私と同じ」と言われた時、

グサッ!

と心に、何かが突き刺さった。

今の僕が、タピアと同じ体の種類、

ヒューマンボウルなのは、

紛れもない事実だけど、

本当は違う、一時的に借りているだけだ、

分かっているから言わないで……と、一瞬、不快感を覚えた。


「だからって、まさか脱がないよね? リアムは以前、絶対に脱がないで、と言われたのに、土星で『保温シールド』を脱いだ男だからね。海王星では、脱がなかったけど」

ニヤニヤしながら、エドが言うと、

「あ、当たり前だろ、脱がないよ。死にかけたもの、同じ轍は二度は踏まないよ」

リアムが、口を尖らせて言った。

「だったら、いいけどね」

エドが笑った。

「みなさん、仲がいいですね」

タピアも笑った。

僕は、ふと、思ったことを聞いてみた。

「土星と海王星もだけど、どうして木星でプールをしようと思ったの?」

「私の上司、AIヒューマンのポプ室長が、木星の気流の流れを見て、地球上にあった、流れるプールみたいだな、と思ったそうです。冥王星、天王星などでも、何か天体の特色を活かした娯楽施設が作れないか、ポプ室長は今、考えています」

人間だったら、こんな奇抜な発想は思いつかない、さすがAIだな、と僕は思った。

「確か、地球再生化のために尽力して、と言われていたと思うけど、遊ぶ場所を考えているのは、なぜ?」

エドが聞くと、

タピアが笑った。

「何か、おかしなことでも言った?」

エドが、あたふたした。

「すいません、私と同じだったので。私もそう思って、ポプ室長に聞いたら、『地球再生化計画が一番大切だけど、それだけでは味気ないので、生きる上で、少しの娯楽は必要だ』と言っていました」

タピアが、ニコッとした。


まただ……サミュエルさん、ルーカス室長と表現は違うけど、

「存在意義」ということなのかな?

この言葉が、頭の中に浮かんだ。


「それでは、どうしますか? プールへ行きますか? カフェに行きますか?」

タピアに聞かれた僕達は、

どうするか相談して、

まずは、プールへ行くことにした。

「木星の流れるプールは、模様ごとに上昇、下降の流れと、表面は左右に流れています。仰向けになると、頭が向いている方向へ体がイカダのようになって、沈むことなく遊覧することができます。それと、三日月の形をしたスライダーがいくつか設置してあるので、滑ってみてください。木星から飛び出る! というスリルが味わえますよ」

タピアが言うと、

「スライダーがあるの!?」

リアムとレオが、瞳をキラキラさせた。

「スタンプラリーもやっています。参加しますか? すべてのスタンプを集めると、なんと、参加賞が貰えます」

「参加賞!? 何が貰えるの?」

リアムとレオがまた、

瞳をキラキラさせながら言った。

タピアがニヤリとしながら、

「それは……」

リアムとレオの顔を見ながら、

言うのをためらうと、

「それは……何!?」

2人が、早く教えてよ!

という感じで、前のめりになった。

「それは……集めてからのお楽しみです」

ウィンクして、タピアが言うと、

「えー!? 教えてくれないの? 気になるよ」

教えて欲しい、と騒いでいたリアムとレオに

「何が貰えるか、楽しみはとっておいた方が、いいと思う」

ステファンが言うと、

しばらく2人は考えて、

「確かに……気になるけど、そうだね。何が貰えるか分からない方が、楽しみだね!」

レオとリアムが、元気よく言った。

「本当に2人って、単純だよね」

エドが笑ったので、

「そうだね」

僕も笑った。

「では、参加するということで、いいですか?」

タピアに聞かれた僕達は、

「はーい」

元気よく、返事をした。

「では、左右どちらでもいいので、片方の手首を出してください」

タピアが言ったので、

僕達はそれぞれ、片方の手首を出した。

「これが、スタンプラリーに参加するのに必要な腕輪です」

ひとりずつ、順番に、

タピアが手首に着けてくれた。

「何これ?」

「動いているよ!」

腕輪は、青色がベースで、

星が、 たくさん散りばめられていて、

ゆっくりと回転していた。

「タピア、すごくキレイだね」

エドが言うと、

「そうでしょ。腕輪は、スタンプラリーの台紙です。使い方を説明しますね。三日月の形をしたボタンが動いているので、探して押してみてください」

タピアが言った。

腕輪を回しながら、三日月を探して押すと、

三日月から、3Dホログラム製の板が

出現して、そこには、

「木星のスタンプラリー」と書かれていた。

「おぉ、すごい」

僕達は、驚いた。

「もう一度押すと、台紙は消えます。各スライダーと大赤斑のどこか1か所に、スタンプ台が設置してあるので、探してみてください。全部、押せたら、私や係の者に腕輪を見せると、参加賞が貰えます。説明は以上になります。あ、新しく人が来たので、案内してきますね。右に左に、下に上に、自由に流れてください。楽しんで、いってらっしゃい」

タピアが、両腕を高くあげて、

左右に大きく振って、見送ってくれた。



僕達は、木星の中腹に設置してある、

プールの出入り口になっている、

「浮きイカダ」、木星の流れるプールで

使われている簡易のイカダ風の設備へ向かうために、オーヴウォークが敷いてある、

スロープに入った。


「大赤斑」とは、

木星の南半球にある、約25000km、

地球が2つ入ってしまう大きさの、

反時計回りの高気圧の嵐のこと。



「ここから、入ってください」

スロープで登ってきた僕達に、

係の人が言った。

「ここから?」

近くで見ると、木星の気流の流れは、

うねっていて、とても不気味に見えた。

「大丈夫ですよ。最初はみなさん、飛び込むことを躊躇しますけど、ほら、見てください。楽しそうでしょう」

係の人が、泳いでいる人を指さした。

「確かに……でも何だか底が見えないし、怖いな……」

不安そうに、

プールをのぞきこんでいたレオの背中を、

「大丈夫だよ、ほら」

エドが思いっきり押すと、

「うわぁ」

レオが勢いよく、プールの中へ落ちた。

ジャボンッ。

「エド、なんで押すの!?」

レオが怒って言うと、

エドもプールの中へ飛び込んで、

「大丈夫だったでしょう?」

笑いながら逃げた。

エドが、下降気流に入ると、レオも入って、

右に流れると、レオも右に、

逃げるエドを、レオが追いかけた。

レオとエドが浮いているのを確認して、

大丈夫だと思った僕とリアムは、

手をつなぎながら、一緒に飛び込んだ。

ステファンは、

両足から、そっと、プールの中へ入った。

「スタンプラリー、しないのかな?」

リアムが、遠ざかっていく、レオとエドを

見ながら言った。

「気がすんだら、戻ってくるよ」

ステファンが、呆れた様子で言った。

「うん、そうだね。僕達は、僕達で楽しもう」

僕とリアム、ステファンは、

仰向けになった。

「不思議だね、本当に気体かな? 水しぶきがあるよ」

リアムが両手で、

水面をたたきながら言った。

「これは、どうひっくり返っても、液体だよね」

「うん、気体とは思えない」

僕とステファンも、

気体とは思えない「水」を手でさわりながら

言った。

「不思議だね……」

3人で、そんなことを言いながら、

気流の流れに身を任せた。



しばらく流れていると、

2つほど離れた縞模様に、

人だかりがあることに気づいた。

「もしかして、タピアが言っていた、スライダーかな?」

「そうかも、行ってみよう。スライダーを滑って、スタンプを押そう」

追いかけっこをしていた、レオとエドに

テレパをして、合流した。

僕達は、縞模様の表面の左右の流れに

乗りつつ、仰向けになって移動して、

人がたくさんいる場所を目指した。

予想通り、人だかりができていたのは、

スライダーだった。

プールから、スライダーが設置してある

浮きイカダにあがって、列に並んだ。

「スタンプ台は、どこだろう?」

辺りを見渡していると、

「キャー」

悲鳴が聞こえて、そちらを見ると、

スライダーの降り口から、

勢いよく人が飛び出してきた。

「え!?」

果てしない、宇宙空間に、

放り出されている!? と驚いていると、

急角度で曲がって、

木星のプールへ着水した。

「あぁ、よかった……」

「驚いたね。飛んでいってしまうのかと思った」

「あ、また飛び出して来た!」

先ほどと同じように、放り出された!

と焦っていたら、また急角度で曲がって、

木星のプールに着水した。

スライダーを滑っている人で、

誰ひとり、宇宙空間に放り出されたままの

人はいないから、大丈夫だと思うけど、

タピアに話を聞いた時は、

楽しみだ、という気持ちしかなかったのに、

スライダーを滑る順番が近づいてくると、

僕達は、不安になってきた。

「怖くなってきた……」

「そ、そうだね。大丈夫かな? 滑っても」

「あの勢いのまま、宇宙空間に飛ばされないよね?」

僕とリアム、レオ、エドが不安そうに、

スライダーを滑っている人を見ていると、

「見ている限り、安全なスライダーだと僕は思うけど、心配なら、どういう仕組みか聞いてみようか? そうしたら、安心できるよね?」

ステファンが、落ち着いた様子で言った。

「そうだね、仕組みが知りたい」

僕達が、うなずくと、

「あの、このスライダーは、どういう仕組みになっているのですか?」

ちょうど近くにいた係の人に、

ステファンが声をかけた。

「この浮きイカダの床面には、特殊な磁石が設置してあって、みなさんが着ている、ボディースーツにも特殊な磁石が織り込まれているので、スライダーから飛び出しても、この特殊な磁石同士が引き合うので、必ず戻ってこられます。万が一の時は、キュープボールもありますし、大丈夫ですよ」

係の人が、ニコッとした。

「なるほど、それなら安心だね」

僕達は、安堵した。



話しているうちに、僕達の番がきて、

スライダーのそばで、誘導係をしていた人が

「ひとりで滑るなら、こちらから。みなさんで滑るなら、こちらからどうぞ」

と言った。

僕達は相談をして、

せっかくだから、みんなで滑ることにした。

一列に並んで座って、手をつないだ。

「いってらっしゃい」

背中を押されて、

勢いよく僕達の体は、スライダーを滑った。

「わぁーい!」

楽しくて、叫んだ。

でも、次の瞬間、

悲鳴に変わった。

「うわぁ!」

僕達の体は、スライダーの降り口から、

勢いよく飛び出した。

うしろを振り返ると、

木星からドンドン離れていっていて、

足元を見ると、

真っ暗で、吸い込まれそうだった。

「助けて!」

このままでは、果てしなく広い宇宙空間に

飛び出して、あてもなく永遠に漂うことに

なる、と絶望を感じたその時、

僕達の体が、

ピタッ、と止まって、

急角度で、木星へ向かって動き出した。

ジャボンッ。

木星のプールへ着水した。

「みんな、どこ?」

エドが水から顔を出した。

誰もいなかったので、

探そうと潜ろうとした時、

水中から、次々とみんなの顔が出てきた。

「よかった」

エドは、ホッとした。

「怖かったね」

「うん。見た目よりも、遠くまで飛ばされていた気がする」

「大丈夫だ、と言ったくせに、嘘つき! と係の人に一瞬、思ってしまった」

僕達は、スライダーを滑った感想を

言い合った。


「あ、スタンプ台かな?」

着水した場所とスライダーが設置してある

浮きイカダの間に、水ではなく、

宙に浮いている機器を見つけたので、

僕達は近づいてみた。

「これ、腕輪にそっくりだね」

浮いていた機器は、球体をしていて、腕輪と

同じように、青色がベースで、たくさんの

星(恒星)が、ゆっくりと動いていた。

「あ、ここにも三日月があるよ」

「押してみよう」

エドが、動いている三日月を押すと、

ブィンッ。

機器と同じサイズ感の白色でキラキラして

いるイイイイスターが、機器の頭上に出現

した。

「台紙を、イイイイスターの中へ入れてください」

電子音声がながれた。

「これが、スタンプ台みたいだね」

レオが、嬉しそうに言った。

各自、腕輪の三日月を探して押して、

スタンプの台紙を出現させた。

そして、

スタンプ台の頭上に出現した、

イイイイスターの中に腕ごと入れると、

ペッタンッ。

「腕を抜いてください」

電子音声が聞こえた。

「スライダー7」と表記された、

イイイイスターの輪郭をしたマークが台紙に

押されていた。

「おぉ、スタンプひとつ目、ゲットだね」

リアムとレオが、嬉しそうに言った。

「スライダー7ということは、少なくとも、あと6か所は、スタンプを押す場所があるってことかな?」

「そう言えば、大赤斑にも一か所スタンプ台があるって、タピアが言っていたよね?」

エドが言うと、

「うん、言っていた。少なくとも、あと7か所はあるね」

リアムが言った。

「まずは、大赤斑のスタンプ台を探そうか? スライダーのところは、比較的すぐに見つけられそうだけど、大赤斑は、大変そうな気がする」

ステファンが言ったので、

縞模様の表面の左右の流れに乗りつつ、

仰向けになって、

大赤斑を目指して、移動した。


大赤斑の手前の縞模様まで来た時、

悲鳴が聞こえて、仰向けから向きを変えて、

声がした方向を見ると、

大赤斑の渦に飲み込まれている人がいた。

「あの中に、スタンプ台があるの?」

静かなトーンで、エドが聞くと、

「あれは、大赤斑だから、あるはずだよ」

ステファンが、静かに答えた。

渦の中心まで、グルグル流されていった

人達が、

ジャボンッ、バシャッ。

水中に沈んでいった。

すると、AIキュープがやって来て、

沈んだ人をアームでつかんで、

水中から持ち上げて、

大赤斑の渦の流れの外へ運んでいった。

「どこにあるのかな? 見つかるかな? 無理だよね……」

リアムとレオが、早くも諦めかけていた。

「タピアがあるって言ったのだから、絶対にあるよ。参加賞はいらないの?」

エドが、ニヤリとして言った。

それを聞いた、リアムとレオは、

「参加賞……いるよ、何か知りたい!」

急に、やる気を出した。

「本当に2人は単純で、かわいいね」

エドが笑った。


「どうやって探す?」

僕達は、大赤斑の渦の流れの影響を受けない

ギリギリの場所まで近づいた。

「スタンプ台を探しているの?」

突然、声をかけられた。

「そ、そうだけど」

と答えると、

「教えてよあげようか」

と言ったので、

「どこにあるか、知っているの!?」

リアムとレオが、興奮気味に聞くと、

「渦の流れに乗って、スタンプ台が、グルグルと動いていたよ」

と言った。

「本当!?」

「うん。1回もスタンプ台をつかむことができなくて、大変で……私達は、諦めた」

残念そうに言った。

「そうか、やっぱり大変だよね……教えてくれてありがとう」

僕が言うと、

「みなさんは、頑張ってね」

と言って、仰向けになって、流れて行った。

「とりあえず、流れてみる?」

ステファンが、

みんなの顔を見渡して言った。

「そうだね。渦の中にあるって言っていたしね」


僕達は、渦の中へ入った。

「手をつなごう!」

流れは見た目よりも早くて、バラバラになりそうだったから、手をつないで集まって、

背中合わせになって、流れた。

「スタンプ台ある?」

「何も見えないよ」

僕達は、別々の方向を見ていた。

「うわっ」

ズボッ。

いつの間にか、渦の中心まで流されていた

僕達は、ひとりずつ、

水の中へ引き込まれていった。

渦の流れが激しくて、どちらの方向が、

水面なのか分からなくて、水の中でもがいて

いた僕達を、AIキュープがつかんで、

大赤斑の外へと運んだ。

そして、また渦の中へ入って、

AIキュープに運ばれて……数えきれない

くらい、同じことを何度も繰り返した。


僕達は、大赤斑を呆然と眺めていた。

「もう、諦めない?」

リアムがついに、弱音を吐いた。

「見て、あの渦の流れ。本当に、憎らしい」

レオが、遠い目をして言った。

「本当にあるの? 地球2個分だよ。ヒントなしで、どうやって、この広大な範囲を探せっていうの?」

僕は、どうしようもないこの状況に、

イライラしてしまった。

「そうだね……ここは、後回しにして、先にスライダーへ行かない?」

エドが言うと、

「そうだね、気分転換しようか」

ステファンが言った。

みんなで仰向けになって、

スライダーを探しに行こうとした、その時、

「た、大変!」

レオが慌てた様子で、

流れ始めていた僕達に言った。

「どうしたの?」

仰向けをやめて、レオを見ると、

指をさしながら、

「あそこ、見て! スタンプ台じゃない!?

黄色くキラキラしているよ 」

興奮気味に言った。

「本当だ、キラキラしている」

僕達は急いで、大赤斑の渦の中へ入って、

キラキラしている部分を目指した。

でも、また渦の中心へと流されて沈んで、

AIキュープに運ばれて……を繰り返した。


どうすれば、あのキラキラした部分に

たどり着けるのか、分からなくて、

呆然と黙って、大赤斑を眺めていたら、

「あのさ、気づいたことがある」

ステファンが口を開いた。

「どんなこと?」

リアムが聞くと、

「たぶんだけど、スタンプ台が近くにあると、腕輪が青色に光る気がする」

ステファンが、腕輪を見ながら言った。

「やっぱり? 実はそれ、僕も思っていたよ。腕輪が青々と光っている気がした」

エドが、興奮気味に言った。

「それ、ヒントだね! 気づかなかったよ」

リアムが、一本取られた、という感じで、

笑いながら言った。

「これでスタンプ台が、この地球2個分の広い範囲から、見つけられそうな気がしてきたね」

僕達の中に、希望が見えて、

やる気がみなぎってきた。

「よし、行こう!」

みんなで気合いをいれて、

腕輪が光るかどうか、確認しながら、

大赤斑の中へ入った。


背中合わせになって、360度、

監視を始めた。

しばらく腕輪には、なんの変化も起こらな

かったけど、ふいに、その瞬間は訪れた。

「腕輪が光った!」

レオが叫んだ。

そして、僕、リアム、エド、ステファンの

腕輪も、青々と光り出した。

「近くにあるみたいだね、どこだろう?」

辺りを見渡すと、

「あそこ!」

リアムが指をさして、叫んだ。

スタンプ台は、渦の中心へ向かって、流れて

いた。

僕達は、それぞれで泳ぎながら、

追いかけた。

手が届きそうで、届かない、

もどかしい状態が続いた。

「あぁ!」

もう少しで、さわれそうだったのに、

遠ざかってしまった。

そして、

僕達は、次々と渦の中心へ、沈んでいった。

みんなは、どこだろう?

と思ったら、青々とキラキラするものが、

水中に4個、見えた。

みんな、近くにいるみたい、よかったと

思った瞬間、視界の隅で、黄色にキラキラ

光る、スタンプ台と思われる光を見つけた。

それは、渦の中心の複雑な流れの影響を

受けながら、比較的、狭い範囲を上下左右に

動いているようだった。

ここにいれば、

スタンプ台を捕まえることができそうだ!

普通の地球人の体だったら、

水中にずっと留まることはできないけど、

今の僕達は、肺呼吸をしているわけではないから水中にずっといても、平気だけど、

AIキュープが来たら、水中から出されて

しまうので、せっかく見つけたのに、

また見失うことになる。

ここを離れたくないな……僕達は一生懸命、手を伸ばして、複雑な流れに乗って動く

スタンプ台を、必死につかもうとした。

ズボッ。

AIキュープのアームが、水の中へ入って

来て、リアムが持ち上げられた。

続いて、別のAIキュープのアームに、

レオ、エド、ステファンも持ち上げられて

しまった。

もう、僕しかいない……あと少しなのに……。

「うわぁ」

ついに、僕もAIキュープのアームに、

つかまれてしまった。

持ち上げられた瞬間、

偶然、グルッと、渦の流れに乗って、

上昇してきたスタンプ台に、手がふれた。

僕は慌てて、両手でつかもうと思ったけど、

AIキュープのアームが、僕の体の正面と

背中にあって、絶妙に邪魔だった。

このチャンスを逃したら、

もう見つけられない!

僕は、必死に両足と片手で、

球体のスタンプ台をつかもうと奮闘した。

その結果、

なんと、奇跡的につかむことができた。

「やった!」

AIキュープの持ち上げる上向きの力と、

渦の下降する下向きの力で、

僕の体に、なかなかの水圧がかかってきた。スタンプ台をつかんでいる、

僕の両足と片手の力が、

早くも限界に近づいたその時、

ジャバンッ。

水中から、僕の体が出てきた。

AIキュープは、大赤斑から離れて、

リアム達がいる場所へ向かっていた。

「みんな、見つけたよ!」

僕が叫ぶと、

「スカイ、すごいよ!」

「ありがとう!」

リアム達のいる場所へ着く寸前、

僕の両足と片手の力がついに限界を越え、

つかんでいたスタンプ台が落ちた。

それに気づいたリアム達が、

落下していったスタンプ台を受けとめようと

急いで泳いでくれた。

僕を下ろしたAIキュープは、

どこかへ飛んでいった。

「スカイ!」

リアム達が、僕のところへスタンプ台を

持って、やって来た。

「渦の中から、スタンプ台を捕まえてくれてありがとう」

「落下したスタンプ台を受けとめてくれてありがとう」

僕達は、お互いに感謝しあった。

スタンプ台の中から、

三日月を探して、押すと、

ブィンッ。

イイイイスターがスタンプ台の頭上に

出現した。

「台紙をイイイイスターの中へ入れてください」

電子音声が流れた。

各自、腕輪の三日月を探して、

スタンプの台紙を出現させて、

イイイイスターの中に腕ごと入れると、

ペッタンッ。

「大赤斑」と表記された、イイイイスターの

輪郭をしたマークが台紙に押されていた。

「スタンプ、2個目ゲットだね」

リアムとレオは嬉しそうに言ったけど、

「やっとスタンプ、2つ目か……」

僕は、疲れきった表情で言った。

「最大の難関を突破したから、あとは大丈夫。スライダーのところにあるスタンプ台は、簡単には見つかるよ」

ステファンが、僕を励ましてくれた。

「この調子で、残りのスタンプも押しに行こう!」

リアムとレオは、ノリノリだった。

僕達は、一度滑って安全だ、と分かったので

木星に点在していた、タイプの違う

スライダーを滑って、スリルを味わいつつ、

スタンプを押してまわった。


スタンプを全部、押し終わったあとも、

楽しかったので、

何十回もスライダーを滑って遊んだ。

「遊び過ぎて、少しお腹が空いた」

エドが言った。

「そうだね、少し休憩しよう」

僕は、うなずいた。


僕達は、プールからあがって、

下りのスロープへ入った。

「疲れたぁ」

リアムとレオは、大の字になって、

オーヴウォークの中に倒れ込んだ。

僕とエドとステファンは、

オーヴウォークの縁にもたれて座った。

リアムとレオは、大の字に倒れ込んだまま、

僕とエドとステファンは座ったままの格好で

体が浮いて、動き始めた。


本来は、行きたい方向に体を傾けないと

移動できない仕組みだけど、

スロープやコロニートンネルのように、

一方通行になっている場合は、

体を行きたい方向に傾けなくても、

オーヴウォークの中に入るだけで、

指定されている方向へ、

体を自動で運んでくれる。



カフェの出入り口は、木星や四角などの形を

したものを重ねて作ったアーチ状になって

いたので、くぐって中へ入った。

「ようこそ、『木星のカフェ』へ。空いている席へどうぞ」

僕達に気づいた係の人が言った。

机もクッションも木星の色をしていて、

浮いていた。

カフェは、オープンテラスになっていたので

どこの席に座っても、

大迫力の木星が見えるようになっていた。

カフェには、小さな木星の建物があって、

頂上に煙突が2本あった。

片方の煙突からは、

材料が入った調理ボウルが出てきて、太陽に

向かって行き、

もう片方の煙突からは、調理が終わって、

太陽から戻ってきた調理ボウルが、入って

行った。

僕達は、5人で座れる席を探して、座った。

出入り口にいた人とは、別の係の人がやって

来て、

「どれにしますか?」

メニューが載っている、特殊な映像でできて

いる6角形の板をくれた。


そこには、木星の縞模様が忠実に再現された

スポンジケーキと、木星の衛星をイメージ

したアイシングクッキーが数種類、

木星の大赤斑を模した、赤色の渦を巻いて

いるフレーバーつきの水の3種類があった。


「どれにする?」

「どれも気になるから、試してみたいけど、そこまではエネルギーが減っていないから、みんなで分け……」

エドが、言葉をつまらせた。

「ス、スカイは、僕と水を分けよう」

レオが元気よく言ったので、

僕も合わせて、元気よくうなずいた。


心にまた、

グサッ!

と何かが、刺さった。

みんなが気遣ってくれているのが、

分かるから、余計にモヤモヤした何か、

負の感情が、込み上げてきた。


係の人に、木星のスポンジケーキをひとつ、

木星の衛星の柄をしたクッキーを5枚、

大赤斑を模したフレーバー付きの水を3杯、

頼んだ。


5分ほどして、係の人が、調理ボウルを縦に

7個積み上げて持って来て、

「必要な物は、そこにある、ラノスイリトファジェロで、出現させてください」

机の上に調理ボウルを置いて、立ち去った。

机に埋め込まれていた、木星仕様の

ラノスイリトファジェロの画面の表示を見て

必要な物を、必要な本数分押した。

すぐに、ナイフ1本とフォーク4本、

ストロー5本が、

機器の頭上に次々と出現した。

それを手に取ると、使いやすいサイズに

自動で変化した。

調理ボウルの上から、リアムがナイフで

木星のスポンジケーキを4等分に切った。

「すごい!」

スポンジケーキは、中身も忠実に木星の内部

構造を再現していた。

「いただきます」

僕以外の4人は、元気よく言った。

「おいしい! 木星って、こんな味だったのか」

リアムがまた、トンチンカンなことを言ったので、

「リアムって、本当におもしろいやつ」

エドが笑った。

僕は、自分の前に置かれた、変な色をした

スポンジケーキの入った調理ボウルと、

変な色をしたクッキーが入った調理ボウルを

無意識に見つめていた。


変な色をしている原因は、

カラフルな固形物を、そのままかくはんして

ドロドロにしたからだ。

みんなと同じものを頼めても、

みんなと同じ状態のものは、食べられない。

そういえば、唯一、ひとつだけあった……

水だ。

これだけは、みんなと同じ状態だ。

ひとつでも、同じ状態のものがあって

よかったな……あはは。

自暴自棄になりそうだった。


スポンジケーキを食べようと口を開けた

レオが、ぼうっとしていた僕に気づいて、

口をゆっくりととじて、手に持っていた

スポンジケーキをさしたフォークを、

そっと机の上に置いた。

「スカイ、喉が渇いたね。水を一緒に飲もう」

レオが、大赤斑を模したフレーバーつきの

赤色の水が入った調理ボウルを手に取って、

半分に割って、片方くれた。

「ありがとう」

「スカイ、ストロー……そのまま口をつけて、豪快に飲もう!」

ストローを僕にくれようとしたレオが、

僕には口がないから、ストローが使えない

ことに気がついて、慌てた様子で言った。

「う……うん」

僕は、調理ボウルを口に運ばずに、

最近お馴染みになった、右耳あたりから、

投げ込むスタイルで、大赤斑を模した

フレーバーつきの赤色の水を飲んだというか

エネルギータンクに入れた。

「リンゴの匂いかな?」

レオが言った。

「そんな気がするね」

僕は、苦笑いをした。


あ……苦痛だ。

みんなで食事をする時間が、こんなにも苦痛

だったなんて、生体ヒューマンだった時には

思いもしなかった。


食事をすませた僕達が、カフェのアーチ状の

出入り口をくぐったところで、

「どうでしたか?」

タピアに声をかけられた。

「おいしかったし、楽しかったです」

元気よく、全員で答えた。

「それは、よかったです。実は、ここにも土星のように、お土産があります。ファイカプの手前に立方体の機器が浮いているので、欲しい物があったら、ひとり、ひとつ貰っていってください。あと、カフェのテイクアウトのメニューもあるので、よかったら、ひとつお持ち帰りしてくださいね」

タピアがニコッとした。

「木星のお土産!? しかもテイクアウトできるの!?」

「それはぜひ、貰っていかないと」

「それはそうと、タピア、腕輪が光ることをなぜ、教えてくれなかったの!? 教えてくれていたら、もっと、スムーズに大赤斑の中のスタンプ台を見つけることができたのに」

エドが頬を、プクッと膨らませて言うと、

「ポプ室長の受け売りですけど、提示された答えだけを見て、真似をするだけなら、プログラムされたことだけを遂行するAIと同じだから、知的生命体、地球人の存在意義が揺らぐ。知恵を絞って考えてこそ、生きている証にもなるし地球人は進歩する、だから、腕輪が光ることは、説明しなかったの」

タピアが言った。


まただ……存在意義。


「地球人というか、人間はAIとは違うし、生きているから、真似ができるよね? 違うのかな?」

リアムが、首をかしげた。

「タピア、難しい話はよく分からないので、参加賞をください」

レオが笑って言うと、

「参加賞!? 本当だ、ください」

首をかしげていたリアムが、

嬉しそうに言った。

「では、三日月のボタンを押して、スタンプの台紙を見せてください」

僕達は、各自、腕輪の三日月を探して、

押した。

スタンプの台紙が出現して、

すぐに形が変化した。

「何これ?」

「これが、参加賞の万華鏡ですよ」

タピアが、ニコッとした。

「万華鏡?」

僕達は、驚いた。

「万華鏡って普通、筒みたいな形をしているよね? これは、すごく小さいし、変な形をしているよ」

それは、手のひらよりも、ふたまわりほど

小さい、厚さが2cmくらいの六角柱の形を

していた。

「どこでもいいので、2か所つまんで、自分好みの大きさになるまで、伸ばしてください。そうすれば、穴が見えると思うので、のぞいてみてください。全宇宙が、もしかしたら見えるかもしれませんよ」

タピアが言ったので、

「全宇宙!?」

僕達はまた驚いて、叫んだ。

出現した万華鏡を手に取って、

タピアに言われた通り、2か所をつまんで、

伸ばして、穴を探して、のぞいてみた。

「あれ? これ、太陽系だ!」

「え!? 僕は違うみたい。なんか、恒星がすごい数、キラキラしているよ。もしかして、銀河かな?」

「僕のところは、ブラックホールだ! 隣にある惑星から大気が、吸い込まれている場面だよ、すごい!」

僕達は、それぞれの万華鏡をのぞきあった。

「ポプ室長が言ったままを伝えると、『アムズが、今まで通ってきた膨大な道のりを、ひとつの全宇宙を、月から見える景色を、望遠鏡で録画したものを見ることができるようになっている』だから、見える景色は、万華鏡をのぞくタイミングによって、違います」

タピアが言った。

「アムズが通ってきた道? 地球から月までのこと? ひとつの全宇宙ってどういうこと?」

「地球から月までは、膨大と言うよりは、まだ近距離だよね?」

ステファンと僕は、ポプ室長の言葉の真意を読み取ろうと、考えていたけど、

「へぇ、すごいね!」

リアムとレオは、単純に感心していた。

悩ましげな僕とステファン、

陽気に万華鏡をのぞきながら、

嬉しそうにしているリアムとレオを、

はたから見ていたエドは、

「対照的で、おもしろいな」

僕達、4人を見ながら笑っていた。

僕達は、タピアに木星専用のボディスーツと

腕輪を返して、挨拶を交わした。



ファイカプの方へ歩いていくと、

宙に浮いている機器があった。

その画面には、

お土産とカフェのテイクアウトのメニューが

表示してあった。


お土産の項目には、

木星の気流が本当に流れているキーホルダーと、

木星と木星の衛星4つ、「イオ」、

「エウロパ」、「ガニメデ」、「カリスト」が縦に連なった、天井に吊り下げるタイプの飾り、

木星の大赤斑が実際に動いている、木星の

形をした大きさが自由に変えられるラグ、

木星の形をした、宙に浮いているフタつきの

小物入れ、

今回は、お腹と背中の模様が木星になって

いて、片方の耳に木星のリボンをつけた、

リサの等身大のぬいぐるみがあって、

僕達は、お互いに顔を見合わせて、笑った。

「これは、決まりだね」

「リサのぬいぐるみは、お土産の定番だね」

満場一致で、リサのぬいぐるみを貰って、

僕達は、カプカに乗り込んだ。

月のファイカプに着いて、カプカから

降りた。

「また地球環境モニター室でね」

それぞれ家があるコロニートンネルへ、

オーヴウォークで向かった。


僕は、浮遊コロニーM02に着いて、

リアムと別れたあと、家には入らずに、

レオにテレパをして、月の広場に来て欲しいと頼んだ。


「スカイ、どうしたの?」

「ごめんね、急に……」

僕が言うと、

「暇だから」

レオが笑った。

「実は……」

僕は、両手で包み込んでいた物をレオに

渡したいのに、躊躇していた。

もじもじしている僕を見ていたレオが、

「それは、何?」

僕の手を指さした。

「えっと……」

僕の顔は、真っ赤になった。

「何? どうしたの?」

レオが首をかしげた。

「あの、これ! エルザに!」

僕は、持っていた物を、レオの両手に持た

せて、走って、オーヴウォークへ入って

移動した。

「え!? スカイ、ちょっと待って! これは、何?」

困惑していたレオだったけど、

すぐに状況を理解してくれた。

「エルザにこれをね……自分で渡せばいいのに。その方がエルザは喜ぶのに、困ったスカイだね」

レオは、嬉しそうに笑った。


僕は、みんながお土産のリサのぬいぐるみを

出現させている間に、別の機器で、

カフェのテイクアウトのメニューの、

マカロンにはさまれているクリームが木星の模様を再現している、「木星のマカロン」の

中から、

「イチゴ味の淡い紺色の木星のマカロン」を

選んで、出現させて、エルザとシータに

あげたいと思って、こっそり持ち帰って

いた。


その日のうちに、エルザからテレパがあって

「すごく嬉しい、ありがとう。おいしかった」

と言われて、僕はとても嬉しくて、

照れくさかった。


○次回の予告○

『「あの日」のエドワードとステファン』
































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