東京電脳戦記~新時代の危険な遊戯~
嶽内 輪音
序章 アキハバラ電脳事変~前編~
雲ひとつない青空。
そう言う天気に相応しい快晴である。
ここはトウキョウのアキハバラ。
電化製品から怪しいモノまでなんでも揃っている街。
だが、今日のアキハバラは一味も二味も違う。
今から5年ほど前にゲーム会社・センチュリーコーポレーションが開発した現実リンク型ゲーム。
RPGからシューティング、レースに音ゲーといったゲームを1つのゲームに集約し、プレイヤーであるアバターはプレイヤーと共に成長していくこれまでにないゲームシステムで瞬く間に大ヒットを遂げ日本、世界でも大人気のゲームとなった。
今日はそのイベント。
歩行者天国のあらゆる箇所にゲームのブースが設けられ、日常的にも賑わっているアキハバラの歩行者天国は、より一層賑わっている。
「ROBOT WARSのブースでは、設定資料集を先行発売していまーす!」
「本日スペースフロンティアのブースにおいて数量限定のシリアルコードを配布しています!早い者勝ちですよ!」
「カフェブースでは、魔法聖戦のポーション型ドリンクを販売していまーす」
「ストリートヒートブースでは、自動車会社とコラボしたマシンを展示中です!」
そんな喧騒で賑わうイベント会場の中央に置かれたステージ。
ステージの元には、埋め尽くさんとばかりの人だかりができている。
センチュリーコーポレーションのREAL WORLD開発部の主任である
緑色のロングジャケットに髪にヘアピンと、ゲームの開発者にしては少し奇抜すぎる見た目の彼は自信に満ちた瞳をしていた。
「REAL WORLD5周年記念の目玉となるビッグプロジェクト、それは現実とゲームを融合させた新ゲーム、『
「プレイヤーはREAL WORLDのアバターを操り、現実世界へと侵攻していく悪の軍勢へと戦いを挑むゲーム。今回のゲームのキモとなるのは『プレイヤーとアバターの絆』!絆の力で、世界を守りきれ!!」
芳樹によって発表された新たなるシステムの宣言により、高かった会場内のボルテージがさらに高まる。
「REAL WORLDをここまで発展させるとは、まさに想定外でしたね」
「当然です。だってうちのチームの開発主任ですよ?」
「そうでしたね、開発主任の名は伊達ではありませんからね」
会場の様子を遠くから見つめる2人の影。
グレーのスーツに身を包んだセンチュリーコーポレーションのCEO・
「社運をかけた一大プロジェクトを私ら若手のチームで構成するって言われた時は、正気の沙汰かと思いましたもん」
「ははは。時にはマイナスに飛び込んだほうがいいこともあるんですよ。『迷ったら、遊べ』私の格言にして、我が社の社訓でしょう?」
迷ったら遊べ、自由を尊重するセンチュリーコーポレーションのただ1つの社訓である。
その社訓の基に、ある時は神ゲーを、ある時にはクソゲーと呼ばれるものまでを作り上げてきた。
それだからこそ、REAL WORLDという社運を賭けたプロジェクトを若いチームに委ねられたのだ。
「それもあるんでしょうけど、主任の場合はゲームに対する想いはとてつもないですからね」
「えぇ、入社の面接試験からもその雰囲気を醸し出していましたからね。私も彼を一目見た時に感じましたよ。彼ならば、ゲーム業界の未来を変えられる。とね」
「社長の言った通りでしたね。本当にゲーム業界の未来どころか、日本をゲーム大国に押し上げるとは…」
「それに、彼にはまだ頑張ってもらわないといけませんからね。我が社の、いや私の未来のためにも」
「社長?それって…」
「ふふふ、冗談だよ」
芦屋がぼそっと言った一言に天草は怪訝な表情を浮かべ、その意味を問いただそうとするが、どうやら彼なりの冗談のようだ。
全く、この人の考えていることは読めないや。
そんな呆れた考えを浮かべ、天草の視線は再び会場に移った。
「未だに開発途中ではありますが、ここで実演というカタチでお見せいたいましょう」
会場内では、土御門が開発途中のVIRTURIZEのシステムを実演が始まろうとしていた。
タブレットを操作すると、彼の眼前には3体の古風ローマの兵士のようなホログラムが映し出される。
このキャラは剣闘士を題材とした格闘ゲーム・スパルタニクスのキャラクターだ。
敵キャラが現れて1秒後、土御門の隣に武者の姿をしたアバターが現れた。
アバターの頭上には、残り体力を示すHPゲージとスキルゲージ、さらには必殺ゲージが浮かんでいた。
「このように敵とエンカウントをすると、即座にプレイヤーのアバターがホログラムとなって実体化します。戦闘コマンドは、プレイヤー自身の声です。『コジロー!剣技でねじ伏せろ!』」
「御意!」
土御門のボイスコマンドにより、コジローというアバターは腰に提げた日本刀を抜刀、敵キャラに駆け出し、Xの字に切り裂いた。
斬られた1体の敵キャラは即座に消滅した。
その一瞬を狙い、もう1体の敵キャラが槍を手にシンゲンに奇襲を仕掛ける。
「刀で防御してカウンター!」
土御門は再びボイスコマンドをコジローに送る。
コマンドを受け取ったシンゲンは槍の攻撃を刀でガードし、槍を弾き飛ばす。
ガラ空きの胴体に横一閃。
一撃を喰らった敵キャラの1体は消滅する。
「アバターはプレイヤーのボイスコマンドを受け取ることで、必殺ゲージをチャージします。そして、必殺ゲージをマックスまで貯めると…『いけ、コジロー!飛燕ノ舞!』」
「我が秘剣、とくと味わえ!!」
その台詞と共にコジローは刀身を掌にかざすと刀身が白銀に光る。 駆け出し、すれ違い様に相手の胴に一閃。
「コジロー流剣技、奥義!飛燕ノ舞!」
さらに振り向きざまに上から下に刀を振り下ろす、そして最後の一撃と言わんばかりに今度は下から上に刀を振り上げる。
これが、コジローの必殺剣・飛燕ノ舞である。飛燕ノ舞を真っ向に受けた敵キャラは、火花を散らしながら大きく爆散をする。無論、この火花も爆炎もホログラムだ。
想像以上のクオリティだったのか、観客も思わず息を呑んでいた。
「…とまぁ、具体的なシステムとすればこんな感じです。もっとシンプルにわかりやすく言うと、操作キャラとなるアバターはプレイヤーのボイスコマンドと呼ばれる音声認証で様々な技を繰り出しバトルをする。というのが大まかな流れです。あくまで開発段階なので、これよりも高いクオリティを追求し、皆様にお届けできればなと思っています。さらに…」
土御門はさらに解説を進めるために、コジローのホログラムを解除しようとした。
だが、解除コマンドを押しても全くコジローは動じることがなかった。
まさか、こんなところまで来てバグか?
土御門は少し怪訝に思った。
その時だった。
琥珀色をしたコジローの目が真っ赤に変わった。
「こノ時ヲ待ッていタよォ」
赤眼のコジローの口からこんな言葉が言い放たれた。
先程までの凛々しい武者の声ではなく、どことなく少年のような声だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます