第一三章:胸に眠るヒーロー揺り起せ

(1)

『駄目、エスカレーターも止まってる』

 まずは沙也加ちゃんから無線連絡。

『エレベーターもです』

 続いて沙也加ちゃんの彼氏の虎男さんから連絡。

 優那ゆなちゃんが囚われてるらしいビルに突入したのはいいけど……。

「ここって何階建てだっけ?」

「地盤の問題が有るから十五階建ての筈だ。まぁ、夢洲ここの地盤だとギリギリで……」

 強化装甲服パワード・スーツが解説。

「嫌な予感しかしないな」

 新しく仲間に加わった「魔法使い」系の人がコメンする。

「どうせ、ギリギリはギリギリでも、ギリギリでアウトって、オチなんだろ」

「『大阪』政府は公表してないが、震度4の地震が来たら確実にマズい事になるらしい」

「『大阪』を支配してる連中がテロリスト扱いされてる理由が良く判った。あいつらは、武力を使わず、何もしなくても人を殺す」

「あ……あの……まさか、本当に……」

 広島の魔法少女チームのリーダーらしいが冷房が切れててクソ暑いのに、真っ青な顔色かおで、そう訊いてきた。

「歩いて上まで行く」

「待って、この靴じゃ……」

 そう言って指差したのは……あたしが「魔法少女」だった頃にも履かされてた、見栄え重視のかかとがやたら高い靴。

「何で、そんな靴履いて来た?」

 強化装甲服パワード・スーツが当然の質問。

「だって、今日は本当はイベントだったから……」

「あ、非常階段見付けたよ〜、こっち♪」

 その時、沙也加ちゃんの脳天気な声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る