「ほんの小噺でございます」

晴れ。

『なまはげ連続殺人事件』




田園広がる山合い。


その奥、

森に佇む 一軒の食堂。


三人組の強盗が入り、

店主夫婦は

ナイフを突き付けられる。

奥の部屋から見ている食堂の幼い娘。


恐怖に震える食堂の娘は、

助けを求めて、一心に祈った。


『なまはげ助けて!!』


・・・物語は

こうして始まる。



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近頃頻発している

殺人事件。

現場には

必ずが残されていた。




報道だけではなく

各TV局では

『なまはげ連続殺人事件』と銘打って

報道特集を組むほどに

話題の事件となっていた。



「ああ、ステキだわ!

   カッコイイ!なまはげ!」


うっとりした表情でTVの特番を観る女性。

成長した食堂の娘だ。



すっかり大人になった食堂の娘。

現在の住居は随分と豪華だ。

邸宅と呼んでも差し支えなかろう。

部屋ごとの壁には、

金のなまはげの面が

神々しくもライトアップされ

飾られている。



「今日も 

 わたしを見守っててね 

 金のなまはげ!

 大好きッ!」



手を合わせ。

祈り。

その表情は

アヤシイ微笑みを称え。



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連続殺人事件の現場に

なまはげの面と包丁。

毎回 なまはげの面の種類は

入れ替わるのだという。



新聞や雑誌の

事件記事。 

見掛ける度に歓喜する食堂の娘。

スクラップ帳もかなり厚くなった。



ニュースのなまはげ速報を聞く度に

大人になった食堂の娘は

事件現場へ駆けつける。



「ここでも わたしのなまはげが!

 きっと

 悪いヤツをやっつけてくれたんだわ!

 ・・・かっこいい」


はぁはぁ。

うっとり。

紅潮する頬と、潤む眼差し。


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話題の連続殺人事件ー

『なまはげ連続殺人事件』は

連日ニュースを賑わせる。

連続殺人事件の被害者は

俗に言う「悪いヤツら」ばかりなのだ。

悪人だけを狙う なまはげ。

ヒーローとして大人気だ。



「わたしのなまはげが大人気!

    なんてステキなの!

    みんなが夢中!」



大人になった食堂の娘は

連日 歓喜の渦に舞い踊る。


人生の全てを

なまはげに捧げること。

大人になった食堂の娘は

そう決めていた。


まずは。

なまはげの為に

その栄光を称える場を作らなくてはいけない。


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「悪いコトすると

 なまはげが来るぞー」


今では子供でも知っている。

悪人は次々と消されて行く世の中だ。


しかし、

悪の根は

倒しても倒しても

雑草の如く

すぐに生えてくるものなのだ。


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刻一刻と

なまはげを称える場の建築は進む。


最初に完成させるのは

なまはげ祭壇だ。


なまはげ速報は

今や世界で熱狂するニュースとなった。

今日一番のニュースは

海外の巨大テロ組織のボスが死亡。

現場には

いつもの様に

なまはげの面と巨大な包丁が置かれていた。


「祭壇の中央には

 この立派な なまはげの面を飾りましょう」


ニュースを横目に

大人になった食堂の娘は

特注の超巨大なまはげ面を見つめている。

なまはげ面は

ギラギラと光輝いていた。


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光輝く面を

遠くから見つめる影がある。

大人になった食堂の娘は

まだ その姿には気づいていない。













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