某ハムスターの野望





『文字を打って会話をしたい!』


ハムスターの彼は

大いなる野望があった。


チャットは

文字を打つと 

声を出さなくても会話できる。


そのシステムを理解した彼は

どうしてもチャットで会話をしたかった。


キーボードは

かなり難易度が高い。


キーを1つ打つだけで

ハムスターの身には

ひどく難しい。


マウスにいたっては

ボタンを押しながら動かすのが

大変すぎた。


使い方が判るのに

上手く出来ない。


何度も試し、

練習すれば出来るかも。


そう思い数日必死にがんばって。



何度やっても無理だった。


悔しい!!


何度やっても キーが押せない!


使い方が判っているのに

使えない!


「押したいキー 言ってくれたら押すよ」


おとうちゃんも

おかあちゃんも

そう言ってくれる。


自分でキーを押して

話がしたいのだ。


悔しくて たまらない!


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キーボードに四苦八苦して

どうしても

押したいキーが押せなくて

悔しがって転げまわるハムスター。


手足 バタバタ。

眉間にしわが寄る。


たぶん「ちくしょー!」とか

言っているんだろう。

他の仔が驚いて振り返る。

「どうしたの?」と

おとうちゃんやおかあちゃんに

聞いてくる仔もいる。


使い方を教えたら

一回で覚えてしまった。

理解してるのに出来ない。

さぞ悔しいことだろう。


賢い故の苦悩。


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次の日

おとうちゃんは

帰宅時に

タブレット端末を買ってきた。


「これだと お話できるかも知れないぞ」


安物だから、遊んで壊してもいい。


タッチパネルは

ハムスターの手にも反応してくれた。


「キーボードじゃないけど

 これなら ちゃんと押せるな」


数人が興味を示した。



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おとうちゃんは「と」


おかあちゃんは「か」



まだまだ 上手く出来ない操作もある。


それでもタブレットは

彼の願いをかなえてくれそうだ。

























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