第64話外交問題~外交官side~
会場に入った瞬間、私は息をするのを忘れてしまった。
皇族とはこうであると言わんばかりの帝国皇太子と貴族の見本のようなブリリアント様。
振る舞いの全てにおいて気品高く優雅であった。
ほんの少し首を傾げた動作。
それだけでも如何に計算された所作であるか解る。
美しい。
その一点に尽きた。
顔の美しさならこの中でユリウス陛下が圧勝だろう。だが、真の美しさはそうではない。それがありありと分かる光景だった。
どれだけ美貌を誇ろうと未だに最低限の立ち居振る舞いしかできないユリウス陛下では格が違うのだと見せつけられた気がした。
呼吸一つでさえも気高さが解る。
これが帝国の皇族か……。
この国に来て外交交渉に明け暮れる日々。
ブリリアント様に直接会うことは叶わなかった。その代わりに皇族の数人との面会は叶った。
彼らの話からブリリアント様は帝国で非常に人気な方だと知る事が出来た。商売を通して外交にも造詣が深く様々な改革案を出される聡明さを持っていると。賞賛と共に言われた言葉が頭から離れない。
『シャイン公爵家を手放してくださってありがとうございます』
嫌味とも取れる言葉だが、それを言った皇族からは感謝の気持ちを感じたのだ。
掛け値なしの賛辞なのだと思った。
いっそ嫌味な方が余程良かったとすら思えた。
夜会での女性達の会話。
そこから解るブリリアント様の活躍。
次期皇太子妃は目前というのは本当だろう。
帝国の皇室の血を引くブリリアント様。
彼女の価値はよく解っていたのに。
帝国は益々反映している。
飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
その一端を担っているであろうブリリアント様。
彼女が王国にいれば……。
悔やんでも悔やみきれない。
ブリリアント様が考案したダイヤモンドカット。
それは今ではブリリアントカットシリーズとして世界に広がっているという。勿論、帝国のバックアップあってこそのものだ。それでもブリリアント様主導の元、技術の発展をさせたそれらは紛れもなくブリリアント様の功績である事は疑いようがない事実なのだ。
今、ブリリアント様の胸元を飾っているハート型のピンクダイヤモンドのブローチ。あれも世界中で愛されるデザインとなるのだろう。我が国がもっと上手く立ち回れば帝国の栄光は王国のものだったかもしれない。そう思うとやるせなくなる。
後に、私が思っていた通り、ハート形のデザインは「ハート・ブリリアントカット」と名付けられた。その輝きから世界中の女性が羨むダイヤとなった。そして皇太子妃となられたブリリアント様がそのデザインの由来の話を語った事によって、愛を誓う婚約指輪にそのデザインを取り入れることがブームになるのだが、これはもう少し先の未来の話。そしてそれは更に後になって「ハートブリリアント」という名前のアクセサリーブランドが誕生するまでの歴史の話でもあった。
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