第44話三年前~ユリウス王子side~
来月からリーベル共和国に留学する。
アダマント王国の西側に位置する友好国で、王国とはまた違った政治体制をしている。国には王や貴族が存在しない。平民だけの国。政治家や国のトップを選挙で決める新興国。
『ユリウス、そなたは文武が優れ、容姿端麗。王の器だと父は思っている。だが、同時に思い込みが激しく視野が狭いところがある。人の感情の機微に疎いところもな。学園に入って学友たちと交わり学び、経験する事で他者の気持ちを汲み取ることができるようになると思っていたがどうもそうではない。そなたが貴族を軽視しているのも知っている。ああ、何も言うな。そなたは確かに才ある者だ。だが、己の感情に素直過ぎる。人としては正しい姿かもしれんが、王族、それも次期国王がそれではいかん。感情をコントロールすることを覚えねばな。ブリリアント嬢と交流する事で学んで欲しかったが……どうやらそれは逆効果のようだった。そこでだ、そなたには三年間留学してもらう。そこで、様々な人々と交流し、人脈を広げるのだ。それが何れ、そなたの助けとなる。他国では、そなたは“国賓”としてもてなされる。王国の代表だという自覚をもって行動をするように。よいな』
交流か。
父上が仰るのに従うが、愚鈍な人間とは関わるつもりはない。だが、この留学は確かに僕にとっても王国にとってもプラスとなるだろう。
リーベル共和国は新しい国だけに様々な政策を取っていると評判だ。それに、軍備にも力を注いでいるとも聞いている。勉強になるはずだ。
留学の話をする時の父上はどこか悲しげだったが、僕のことを思っての行動だと理解していたから受け入れた。
何れ僕の側近になる者達も一緒に付いてくると言っている。頼もしい限りだ。
なにより、小娘の顔を見ずに済む。
公爵令嬢として大きな顔をしているが、将軍たちの間では不義の子なのではないかという話もあった。その理由として一番に挙げられるのは、小娘の容姿だ。両親のどちらにもない黒髪と黒い目。母親が帝国皇女であるがために表立って言えないでいるのだとか。将軍たちに言われるまで気付かなかった自分が情けない。言われてみれば小娘は父親にも母親にもない「色彩」を持っている。王家を謀る不届き者を未来の王妃になどできん。ましてや、あの母娘には黒い噂があると言うではないか!
いつか必ず奴らの化けの皮を剥いでやる!!
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