第39話四年前~ユリウス王子side~


 ああ、あの男叔父は自分の外見の良さを分かっていた。微笑むだけで大概の女性たちは頬を染め、黄色い声を上げていた。貴族の女共は叔父の本性も知らずに愚かにも貢いでいた。あんな男に貢ぐなど金をドブに捨てるようなものだ!案の定、叔父に飽きられ捨てられた女の中には自殺未遂をした者もいたな。

 当時はバカな女達だと呆れたものだった。

 だが、話はそれだけで終わらなかった。女達の親や親族が一斉に叔父を訴え、裁判に負けた叔父は多額の慰謝料と賠償金を支払わされた。支払い能力のない叔父は何時ものように母上に泣きついてきた。最終的には父上が金を工面したが、あの時は母上共々貴族達からの嫌味と嘲笑の的になった!何故、叔父の不始末が僕達にまで及ぶのか理解できない!!!

 僕と母上は関係ないだろ!!!

 他の妃の使用人たちですら堂々と嗤っていた。

 

 当時の屈辱。


 それを思い出したていた。

 

 

『貴様、僕を馬鹿にしているのか』


『馬鹿になどしておりませんわ。寧ろ、褒めておりますわ。ユリウス殿下は、うちの劇団の将来有望な女優すら霞んでしまう美しさですもの。眉間に皺など寄せずにニッコリと微笑んでごらんなさいませ。大抵の人間は殿下の言うがままですわよ。陰口を叩く貴族子弟たちの口すら封じ込めてしまわれると言うのに』


『この僕に貴族どもに媚びを売れと言う気か!!』


『殿下。誰も媚びなさい、などとは申しておりません。微笑んでみせるだけで良いと申してあげております』


『同じ事では無いか!』


『全然違いますわ。学園で気に入らない男子生徒をいきなり殴りつけるより、遥かに有効的だと申しているんです』


『なっ!?』


『何に驚いているのですか?ユリウス殿下の学園での問題行動は社交界で有名ですわよ。学園に通われている学生は親に手紙で色々と書きますのよ。その中で、殿下が誰を殴ったかも書かれていたんでしょう。王太子は学園で暴力沙汰ばかり起こしていると評判ですわ』


『奴らは母上の悪口を言っていたのだぞ!公務もできない出来損ないの側妃だと!!』


『事実ではありませんか』


『なに!?』


『怒る要素が何処にあるというのですか? 寧ろ、殿下が相手に暴力を振るう事で事実と認識されていますわ。本当のことを言われて言い返す事ができずに暴力に走った、と話題になっているほどですわ』


『な、なんだ……と……』


『学園側も大変ですわね。ユリウス殿下が王太子でさえなければ退学処分できますものを……。ユリウス殿下はもっと周りをよく観察するべきですわね。長期休暇はシュゼット側妃の館に入り浸っていらっしゃるようですしね。茶会やサロンに参加なさるのも王族の務めですわ。殿下の場合は、シュゼット側妃の分まで貴族との付き合いをなさらないといけません』



 ……

 …………

 ………………本当に腹の立つ女狐だ。

 茶会などに出て何になる? 茶や菓子、着飾る事しか喋らない奴らの中身のない会話をするほど無駄なことは無い。くだらない作法も多いしな。僕が王になったら貴族共の無駄な作法など簡略化してやる!

 


 




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