第16話七年前~ブリリアントside~

「この騒ぎは何だ!?」


 騒動を聞き付けた国王陛下と王妃殿下が予定よりも早くお越しになられました。お二人の後ろにはユリウス王子もいらっしゃいます。顔色が悪いわ。無理もありませんね。生母が芝生に座り込んで涙を流しながら謝罪を繰り返していますし、元凶の叔父は……あら?失神しているわ。意外に精神が脆いようですね。


「国王陛下、並びに王妃殿下におかれましては、御機嫌麗しゅうございます」


「ルキウス!これは一体どういうことだ!? 何故、シュゼットは泣いているのだ?……倒れているのはアラン・モントール伯爵か?」


「陛下、このモントール伯爵が妻である帝国皇女に対して無礼を働いたのです。その罪を咎めていたところです」

 

「何を言っておるのだ?帝国と我が国の友好条約は結ばれて久しい。その帝国の皇姫殿下に無礼を働く愚か者は我が国にはおらん!」


 その愚か者が目の前にいらっしゃいますわ。

 あのお母様が激昂なさったのです。よほどの不敬を働かれたのでしょう。


「俄かには信じられん。モントール伯爵がシャイン公爵夫人(帝国皇女)に向かって不敬を働いたのか?」

 

「はい。事実でございます」

 

「まさか、そのようなことが……信じられぬ……」

 

「証拠もございます」

 

「証拠?」

 

「はい。宰相、持ってきてくれたかい?」

 

「こちらです。公爵閣下」


 宰相からなにやら小さな箱のような物をお父様は受け取りました。あの小さな物はなんでしょう?


「こちらは小型魔導具による撮影機でございます。これにより現場の状況を記録しております」


 お父様はその小さな箱型の魔道具を操作して中に収められている画像をお見せになりました。そこに映し出されたのはモントール伯爵と取り巻きらしき数名の男性達がシャイン公爵邸を襲撃する企みを話し合う姿が収められていたのです。どうやら彼らは帝国との貿易に失敗して莫大な借金を背負ってしまったらしく、帝国皇女を妻にしたお父様を逆恨みしての犯行に及ぼうとした模様。話の中に、お母様を亡き者にして帝国に混乱を招くという物騒なものが含まれていましたので、この場にいた全員が驚きの声をあげていました。そして、最後に、お母様を拉致して陵辱した後、殺すという内容も含まれていました。また、帝国皇女が産んだ公爵令嬢である私も幼女趣味の変態に売るつもりで、拐う計画を立てていたことも分かりました。この段階で気絶した女性は三分の一。倒れたい理由はよく分かります。


 しかも、事が露見しても自分は未来の国王の叔父。王太子と側妃が何とかしてくれると宣まっています。アホとしか言いようがありません。露見した場合、帝国が攻めてくるに決まっているでしょう。そうなれば王国は一溜りもありません。


「これは……」

 

「帝国に……」

 

「なんてことを……」

 

「この……不届き者が……」


 現実がみえている人々は蒼白になっています。国王夫妻も真っ青で、この場の雰囲気は大変重苦しいものでした。

 まぁ、当然のことですわね。

 沈黙を破ったのは、ユリウス王子でした。


「父上!モントール伯爵とその一味を処刑すれば良いではありませんか!それで終いです!!」



「ゆ、ユリウス、何を言い出すのだ?!」


「そうではありませんか!犯罪者を厳重に処分するのは王族の義務です!」


「お前は意味を理解して言っているのか!!!」


「勿論です」


「バカ者!!そうなればお前もシュゼットも只ではすまん!!」


「何故ですか!犯罪を犯したのはモントール伯爵とその一派です。僕と母上は関係ありません」


「何を申しておる!!モントール伯爵はシュゼットの実の弟。関係ないはずがなかろう!!」


 国王陛下の仰る通りです。

 自分達親子には関係ない?そんなもの通るはずがありません。実の弟、実の叔父ですよ?自分達が関係ないと言い張るのならモントール伯爵の関係者は一体誰になると言うのでしょう。それとも、モントール伯爵一人の罪だと言いたいのでしょうか?罪を知らなかった自分達は無関係だとでも?それはあまりにも虫の良い話でございますわ。そう訴える事が許されるのは平民階級であって、貴族はそうはいきません。もし、貴族が無関係を主張するとしたら離別関係にある場合に限ります。


 もしかして理解されていないのですか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る