第11話八年前~ブリリアントside~
悪い予感と言うのは当たるもの。
私の心配は的中していました。
「今日は母上と久しぶりに会う予定だったと言うのに。あの母娘のせいで会えなくなってしまったではないか!それも貴族の遊戯に付き合わされるなど堪ったものではない!!」
「ユリウス様、お声を落としてください。聞こえてしまいますよ」
「ふん。他の連中も煩く喋っているではないか。僕達の声など聞こえるものか」
「シュゼット様も残念がっておりました。今日の日をそれは楽しみになさっておいででした」
「母上と会う貴重な時間を削ってまで参加する意味が分からん。こんなもの時間の無駄使いだろう」
「シャイン公爵令嬢が主催なさった音楽会はユリウス様のために開催なさったと聞き及んでいます。参加されている方々もユリウス様と同年代の子女も多くいらっしゃっています。恐らく、交流会の意味も含まれているのでしょう」
「余計な気遣いだな。貴族と言ってもどうせ高位貴族ばかりだろう。ボンクラどもと交友関係を広げても意味がない。次期国王として必要なのは優秀な臣下だけだ。あの小娘はそれが分かっていない」
「お言葉が過ぎます。ユリウス様」
「本当のことだろ。そもそも僕はあの小娘を婚約者だと認めていない。父上が勝手に決めたものだ」
「……国王陛下のお気持ちを考えれば当然のことかと」
「だから、僕の気持ちは無視されると言うわけか。ふざけた話だ」
「陛下はユリウス様に後見人を付けたいとのお考えなのです。それがシャイン公爵家ならこれ以上にない後ろ盾となるでしょう」
「だから、何故そうなる。後見なら母上だけで十分だ。わざわざ公爵家に後見してもらう必要はない」
「シュゼット様の御実家は伯爵家ですが、貴族階級の中では新参者の扱いになっております。それに、シャイン公爵家のお力があれば殿下の王太子としての地位はより盤石なものに出来ると陛下はお考えなのでしょう」
「ふん。くだらんな。結局は父上の為の婚約か。反吐が出る。王妃の猶子になったせいで王宮での生活を強いられているんだ。……全てはあいつのせいだ!」
「お声が大きいですよ」
「心配するな。誰も聞いていない」
「ですが、どこで誰が聞かれているとも限りません。ユリウス様が王位に就くことが叶わなくなるかもしれません」
「そんなことはない。僕以外に誰が王になれるというんだ。父上の子供は僕一人だぞ?」
「それでもです。ユリウス様の立太子を快く思わない者達もおります」
「分かっている。そんな連中は、いずれは排除するつもりだ。その為にも今は我慢してやるさ」
「……程々になさいませ」
「分かってる。お前は本当に心配性な奴だな」
「申し訳ありません。ですが、ユリウス様の身を案じての事ですので」
「分かっているさ」
王子達の会話。
それが誰にも気付かれていない筈がありません。
彼らは公爵家を、そして貴族を馬鹿にし過ぎです。
公爵家の使用人たちがそこらかしこに居るというのに迂闊にも程があるというもの。
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