博多時間

 南の方に行くほどに時間感覚がルーズになる。沖縄時間なんかは有名だけども、福岡にも博多時間というものがあったりする。


 沖縄時間は数時間単位と聞いているが、流石に博多時間はそこまでではない。それでも東京から福岡に移住したての頃は戸惑った。飲み会で6時集合と言っても6時には誰も集まらない。時には自分一人だけだったりする。


 流石にコース予約で飲み放題で時間制限があったりすると、それなりに集まりはいいのだが、それでも遅れてくる人間もいる。その率が東京の比ではない。


 なぜなんだろうと理由を考えると、まず公共交通機関の違いがあると思う。東京では移動の中心は地下鉄である。東京二十三区内であれば、ほぼ地下鉄で辿り着けると思う。福岡はと言えば地下鉄路線は数本しかない。それに代わるものと言えばバスである。バス網はかなり充実していると思うが、時間が読めない。


 自家用車の所持率も東京に比べて随分と高いと思うが、こちらも時間は読みにくい。飲み会に関しては車は関係ないが、博多時間は飲み会だけではなく様々な所に存在する。打ち合わせでも何時何分という感じでは無くて、朝イチとか昼イチ、夕方ごろなどというアバウトな約束が、結構違和感なく取り交わされたりする。


 つまり時間が正確な地下鉄や鉄道による移動と違って、時間が読みにくいバスや自動車での移動が、博多時間というものに繋がっているのではないかと推測する。考えてみれば沖縄にもモノレールが一本存在するだけである。


 移動時間が読めない場合、ある時刻に間に合うようにしようと思えば早めに行くしかない。結果待ち時間が出来てしまう。以前いつも数分は遅れてくる福岡の人間に、遅れる理由を聞いたことがあるが、答えはジャストに到着するつもりで来るからとの事だった。それではかなりの確率で遅刻するだろうなと思った。


 しかしもしかしたら、それぐらいおおらかな社会の方が生きやすいのかもしれない。

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