ルージュの伝言

 ユーミンの有名な歌で『ルージュの伝言』という歌がある。中年以上にはお馴染みで、ジブリ映画の挿入歌にもなったので若い人でも知っている人は多いと思う。


 浮気心を抱いた、同棲中の彼か旦那に怒って、伝言を残して女が家から出て行くという結構ありそうな話ではある。ポップな曲調に騙されがちだが、歌詞をじっくり読むと結構怖い。


 まず伝言方法が、机の上に書置きを残すとかではなく、バスルームの鏡に口紅で書くという手段をとっている。口紅だから長文を書けるわけでもなく、きっと『裏切者』『浮気者』あたりの単語だろう。もっと激しく『死ね!』かもしれない。


 自分の身になって想像してほしい。ある日家に帰ったら、嫁なり彼女なりの姿はそこには無く、バスルームの鏡に多分真っ赤な口紅で何かしらが書かれているのだ。最初は血で書かれたと思うかもしれない。


 しかも女の行く先は男の母親の所だという。浮気心を抱いた本人に向かって文句を言うわけでもなく、母親に告げ口に行くのだ。電話ではない。直接乗り込んで文句を言いに行くのだ。


「お宅の息子さんは私に対してこんな不誠実な事をしている…」みたいな事を面と向かって母親に言うのだろう。

「つきましては口頭で注意して頂けますか?」などと、半強制的に電話を掛けさせるんだとも言っている。


 もし自分がその男の立場になったらと思うと寒気がする。そうして女は結局は家に戻るつもりである。別れるつもりなど最初から毛頭ない。もしかしたら部屋の姿見ではなく、バスルームに書いたのは後で掃除しやすいからかもしれない。


 ちなみに『真珠のピアス』もかなり怖い。

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