創造
(これだけの力を手に入れても、まだ俺は“植村ユウト”に届かんのか……!?)
自信のある剣術勝負で押し負け、炎の魔剣も失ってしまい“神坂ロイ”の中で僅かに残っていた理性が屈辱を感じる。丸腰となった彼のもとへ、好機を感じ取った植村が襲いかかっていく。
「ここまできて、負けてたまるかああああっ!!」
ゴウッ!!
「……っ!?」
“神坂ロイ”が雄叫びをあげた瞬間、彼の背中から炎の翼が出現し周囲に強烈な火属性の衝撃波を発生させる。植村も瞬時に輝剣を光盾モードに変えるが、その風圧で遠くまで吹き飛ばされてしまった。
それを見て、無数の火球を召喚するロイ。ここまでは“クリムゾン・スプレッド”のモーションと同じだったが、その無数の火球を彼が天に掲げた掌の上に集めて一つに融合させていく。
“神坂ロイ”の頭上に生成される小さな太陽のように巨大な豪火球。これこそが【獄炎】の力を得たロイの使う最高位火術にして、最大の威力を誇る奥義……“クリムゾン・フレア”であった。
その巨大な火球を目の当たりにして、植村は焦っていた。防御や回避に専念すれば、自分だけ助けることは可能だろう。
しかしあれだけの術式となると、その余波が周囲に
全員を無事に生還させるには、あの豪火球を何とかして無効化させなくてはならない。しかし下手に攻撃を当てて相殺しようとしても、半端な攻撃では
(どうする……?)
そんなことを考えてる間に遂に完成してしまう“クリムゾン・フレア”。そして、植村に向かって放たれる炎の最上位術式たる豪火球。
悩んでいる暇はない。植村が決断した選択肢は、同じく唯一所持している最上位術式を使うことだった。
「ネメシスガンド!!」
召喚される四基の竜頭。そこから更に敵が“クリムゾン・スプレッド”を融合させたように、植村も四基の竜頭を一つの巨大な竜頭へ融合させた。
“入神意モード”だからこそ成功させることのできた術の改変。そして、その竜は植村を守るように立ち塞がると巨大な口を開けて“クリムゾン・フレア”を迎え撃つのであった。
「小賢しい!剣では負けたとしても、術では負けんぞ!!」
植村の術式に危機感を感じたのか、再び無数の火球を召喚する“神坂ロイ”。それを追加で“クリムゾン・フレア”にぶつけて、その大きさと威力を更に増幅させた。奥義を更に強化するという、こちらも人間離れした術の改変。
それを見た植村もここが勝負所と感じたのか、“ネメシスガンド”に残るオーラ全てを注ぎ込み竜頭を巨大化させる。
そして、巨大な竜頭は向かってきた豪火球を呑み込もうと“クリムゾン・フレア”に噛みついた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ぶつかり合う二つの巨大なエネルギーの塊。
「まさか、こいつ……俺の術式を吸収するつもりなんか!?」
「うおおおおおおっ!!」
それこそが、植村の導き出した答え。
“ネメシスガンド”で“クリムゾンフレア”を呑み込み、吸収することで周囲に余波を与えることなく敵の攻撃を無効化させるというもの。
光と火、両方の属性を併せ持つ“ネメシスガンド”だが如何に敵の術式が火属性とはいえ術を吸収する術など前代未聞だ。しかし、それを“入神意モード”による植村自身の増強と、互い稀なる想像力で強引に実現の域にまで持っていった。
互いが己の術式に力を込めて、ぶつかり合う。
そして、長いようで短い衝突のあと……競り勝ったのは、“ネメシスガンド”だった。
“クリムゾンフレア”を呑み込むと、“ネメシスガンド”はオレンジ色に変化し更に肥大する。
すると、植村の頭上に一つのテキストメッセージが浮かんだ。
「ネメシスガンド」が、「ネメシスガンド・エクサ」に進化しました
(相手の術式を吸収して、進化したのか?悪魔から継承した術とはいえ、こんな能力は聞いたことがない)
“ネメシスガンド”の可能性に驚きつつも進化した“ネメシスガンド・エクサ”は敵の最大術式を吸収すると、そのまま“神坂ロイ”へと突撃していく。
ロイも即座に“クリムゾン・スプレッド”で迎撃しようとするも、その全ての火球を受け止めてなお“ネメシスガンド・エクサ”の進撃は止まらない。
その隙に、植村は最後の詠唱を開始した。
「我が一振りは悪しきを清め、我が一振りは呪いを制す。活人の極み、闇討ち払う聖なる白刃……」
【近接戦闘(刀剣)】がrank100に代わりました
【応急手当】がrank100に代わりました
【精神分析】がrank100に代わりました
【聖女の加護】が発動しました
今、この場に“朝日奈レイ”はいない。もしも彼の暴走が“久遠寺レオ”の時と同じようにチートコードが原因によるものだとしたら、通常の活人の刃では完全に除去することはできない。
そこで植村は“龍宝サクラ”との深愛ボーナスである【聖女の加護】を使って、聖なる光の力を『輝剣アガートラーム』の刃へと集めた。それは活人剣に聖なる力が加わった救世の剣。
“植村ユウト”の発想を“入神意モード”の力でことごとく実現させてしまい、人智を超えた戦術を創造する。それこそが、【虚飾】という大罪スキル最大の武器にして脅威なのだった。
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