薬莢人形 或いは二つのシュール

凍てつく時間ときの弾丸が

私の五感をたおやかに撃ち抜いていく……


かつ天翔あまがけた歓喜の髑髏しゃれこうべ

あわを噴いては須臾しゅゆにして腐り

大地を穿うがつ悲哀の踵骨しょうこつ

墜ちた月にもたれる詩人の首頚くびねる


屈辱にえた煙突に

ブラリと下がる薬莢人形プーペ・カルトゥーシュ

空虚な壁を這う焼身の蜘蛛に

意識という名の糸をプツリと断たれ ────




鳳凰の肢体を望む獅子の群れ

精神界の小童こわらわを圧していわ

(この時 彼らは

 大輪のほのおを咲かせる太陽の台座ピエドゥーシュ

 存分に喰らい続けていた)

  お前は今宵 月の光クレール・ドゥ・ルーヌの柱となって

  早速 朝を惹き寄せる詩人を此処ここに呼べ

  人間界の五音ごいんを手早く身に付け

  の詩人の首頚を斬り落とせ




──── 嗚呼!

頬を伝う全き闇に

心がズブリと溺れながらも

我らの小童はしかと踏んだ……

良識の稲妻エクレールの荒れ狂う洞窟を抜け

「絶望」の通り名にて知られる大地

行先不明の時間ときの氷面の上を 


足の自由を盗られる極寒の氷床に

おお 小童は今

たった独り 夢を見始めたらしい

紅々として黒々しい駱駝らくだの夢を

未知という鈍色にびいろ道程みちいざなわれつつ

爆撃の足跡みたような灰色の舌先を

あたかも 愛する花を刻むが如く

細やかに 恐々と震わせて



そして











                 さあ

            親愛なる読者よChère lectrice, cher lecteur 

       全ては あなたの心なのだ

     きっとsûrement きっと ここから先は


(詩情にえた罪のブランコバランソワール・ドゥ・ペシェ

 ブラリと揺れる薬莢人形プーペ・カルトゥーシュ

 虚空会こくうえの宝塔をむ焼身の蜘蛛に

 意識という名の糸をプツリと断たれ ────)






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