第12話 珍妙メイド、トゥイ

「本当に申し訳ありませんでしたあぁ……」


 部屋に入ってくるなり跪き、声を震わせながらトゥイが言った。


「わ、わ、私、ヘーゼルとサラがお嬢様の部屋にいた時に注意したんです。そしたら二人が「ならそのお嬢様を呼んできたら?」って言ってきて、あのそのまさかそれがわざとお嬢様を誘い出すためだったとは思わなくてすすすすすみませんでしたぁー!!」

「怒ってないからちょっと落ち着いて……」


 ハフーハフー! と息も絶え絶えに謝罪を繰り返すトゥイを見ていたら、ツバキの方まで落ち着かない気分になってきた。胸に手を当てて息を整えるトゥイの背中をなでてなだめてやる。


「トゥイが悪くないのは知ってたよ。それにあの後心配して追いかけて来たんでしょ? 人を呼んできてくれたし、むしろ感謝してるよ」

「お、温情をぉぉありがとうございます……一生忘れません……」

「大袈裟だな……」

「申し訳ありませんお嬢様。この子は仕事は出来るのですが、いかんせん小心すぎるきらいがありまして」


 後ろにいたメイド長のダムラが呆れた顔をしている。


「ダムラさん、本当にトゥイは悪くないんです。火傷したのは自分の不注意でもあるし」

「この子が悪くないことは分かりました。ですがヘーゼルとサラは別です。本当はクビにしても足りないくらいなのですけど……」


 ダムラが語り始めた。二人がツバキの部屋に来たのは、一連の事件について説明するためであった。

 サラとヘーゼルは厳正に処罰された。窃盗を働いた上、故意ではないにしろ公爵家の人間に傷を負わせたのだ。ダムラの言う通り、初めは解雇が言い渡される予定だったが、レオノーラの温情により1ヶ月の停職で済んだらしい。


 二人曰く、日頃からレオノーラに無礼な態度をとっていたツバキに腹を立て、箱だけ燃やして驚かせてやろうと思ったのだとか。自分達が勝手にやったことだと言い張っているらしいが、真実は定かではない。もし主を庇っているのだとすれば大層な忠誠心である。


「あの二人の停職が終わったら、性根を一から叩き直しますわ。この度の奥様の判断について私から言えることは限られますが……また何かあった時は、いつでも頼ってください。これでも奥様が嫁いでくる30年も前からこのお屋敷に勤めているんですもの! お嬢様の言い分が間違っていない限り、私はいつでも味方ですからね」


 言葉は濁したが、ダムラもレオノーラに対して思うところがあるらしい。屋敷の女主人に逆らえばただでは済まないだろう。それでもツバキの味方になってくれると言葉で示して貰えたことがとても嬉しかった。


「ありがとう、ダムラさん」

「当然のことです。しかしお嬢様、この際ですから私の忠言を聞いてくださいませ」

「は、はい」

「使用人に対しもっと毅然きぜんと接するべきです。お嬢様はあまりに腰が低すぎます。お優しいのはよろしいけど、このままでは侮られてしまいますよ」


 確かにそうだ。ダムラには知られていないが、若い使用人達からのいじめがどんどんエスカレートしてしまった理由の一つでもあるだろう。ツバキは神妙に頷いた。


「ありがとうございます。これから気をつけます」

「お嬢様」

「あ……気をつける」

「それでよろしいのですよ。ではお嬢様の専属メイドは、後任が決まるまでトゥイに任せようと思います。よろしいですか?」

「うん。よろしくね」

「はいい! 誠心誠意お仕えします!!!」


 再びズサァ! と床に跪いたトゥイを呆れ顔で見て、ダムラは部屋から出て行った。

 部屋に残された二人はダムラの足音が完全に聞こえなくなるのを確認してから、同時に小さく嘆息した。


「その、お嬢様がいじめられてる間、何も出来ずに申し訳ありませんでした。メイド長にも結局何も言えず……弁解の余地もありません……」


 トゥイは床に座り込んだまましょんぼりと肩を落としている。ツバキは軽く作り笑いをして、平気だよと答えた。


「どうせ夫人が若いメイド達をそそのかしてたんでしょ?」

「はい……金品を渡したりして、メイド達を味方に付けていました。私は恐ろしくて受け取れませんでしたが……」


 まあそういうことだよなぁ、と苦笑する。


「ずっと傍観していた私も同罪です。リーズなら絶対に立ち向かっていたはずなのに」

「……リーズと仲が良かったの?」

「はい。年は私のほうが少し上でしたが同時期に働き始めたのでぇ……あ、あのでも今どこにいるかは分からないんです。突然追い出されて、仕事に困っていなければいいのですが」

「旦那さんがいるから大丈夫だと思いたいけど……そうだね。色々教えてくれてありがとう」

「とんでもないです!!」


 バタバタと両手と顔を横に振っている。面白い人だなあと、しばしその様子を観察した。

 臆病だが、きっと根が優しくて嘘をつけない性格なのだろう。レオノーラに懐柔される心配はなさそうだ。


「私はトゥイが嫌がらせに加担して居なかったってだけで十分嬉しいよ。それにこれからは私の味方でいてくれるんでしょ?」

「ももももちろんです!!!! お嬢様がいじめられてるのを見かけたらすぐに公爵にチクリますぅ!」

「うん、じゃあ今日からよろしく。後任が決まるまでって言ってたけど、よかったらずっと専属メイドでいてほしいな」

「私でいいんですか!? ひゃああお給料が上がります……どうしようありがとうございます……一生ついていきます……」


 嘘はつけなさそうだが、素直すぎて少し心配になってきた。










 その日のうちに、レオノーラは家族が揃った場で仰々しく謝罪してきた。私のメイドが申し訳なかったとか、私があなたを尊敬しているのを悔しく思ったみたい、だとか。自分のせいでもあるの、と涙を流す彼女をセドリックが支え、エルネストが代わりに赦しを乞う。うんざりするような光景だった。


 ツバキに嫌がらせをしていた使用人たちはというと、昨日までが嘘のように大人しかった。予想以上の事件に繋がってしまい、流石に頭を冷やしたのだろう。全員クビになればいいのにと思わないこともなかったが、これ以上大事にしてレオノーラやエルネストを刺激したくはない。


 一件落着とまでは言えないのかもしれない。だが使用人からの陰湿ないじめが減っただけで随分気が楽になった。嫌味やいじめはレオノーラから受けるものだけでお腹がいっぱいだったのだ。これ以上の改善を望むのは強欲だろう。


 それに今は、少しだけ楽しみができたのだ。嫌なことよりも楽しいことに考えていたかった。











「湖の傍の家……? 知っているか」

「ええ、薬師の老婆と、そのひ孫が住んでおります。珍しい薬を調合できるため、何度か取り引きをしたことがございますよ」


 セドリックが目を細め、スティーブが答えた。

 夕方、仕事から帰ってきたセドリックは、スティーブと共に昨日の発言を謝罪しにやって来た。至極真摯しごくしんしな謝罪をツバキは驚きながらも素直に受け入れ、自分も謝ることがある、と切り出した。


 ツバキはあの日、無断で家を出たことを白状した。そしてあてもなく森を歩いていたら湖畔でアーシャに出会い、火傷の薬を塗ってもらったこと、その薬のおかげで火傷の跡が殆ど残らなかったのだと力説した。勿論、魔法のことは内緒だ。


「お礼を言いに行きたいんです。寄り道せず真っ直ぐに行って帰ってきますから、外出させていただけませんか?」


 ふむ、とセドリックは口元に手を当てて黙る。そしていつもよりも随分短い思考時間で返答した。


「いいだろう。そろそろ町へ行かせてやろうと思っていたところだった」


 え、とツバキが気の抜けた声を出す。


 自分で言い出したことだが、それでも意外だった。最悪、一生自由に外出できない可能性すら考えていたのだ。ぽかんと口を開けるツバキにセドリックが続ける。


「ただし行く時にはエルネストを伴って行け。人前では些細な魔術でも絶対に使うな。マナ過剰適応者であることを誰にも知られてはならない。魔術師には近づくな。特に王家の関係者からは距離を取りなさい」

「わ……分かりました。ありがとうございます」


 マナ過剰適応であることは、実は良くないことなのだろうか。なぜこれほど周囲にひた隠しているのかは分からなかったが、あれこれと尋ねてセドリックの気が変わったら困るので大人しく従っておくことにした。

 だがアーシャの元へ行くのにエルネストがいるのは嫌だ。自分の弱みを知っている人に彼を合わせたくないような、聖域のようなあの場所を誰にも知られたくないような。


「薬師のおばあさんの所に行く時は一人で行っても構いませんか? 周りに民家はなかったので他の人に会うことは無さそうですし、エルネスト様も忙しいでしょうし……」


 もじもじしながら控えめにお願いをする。セドリックが険しい顔でこちらを見ている。

 やっぱりダメかなぁと思うと、少し悲しくて顔が俯きがちになった。ツバキの潤んだ瞳が無意識に上目になり、セドリックを静かに貫いた。


「……いいだろう」

「やっぱりそうですよね……ってええ!? 本当ですか?」


 セドリックが目を見開き、発する言葉を間違えたかのように口元に折り曲げた指を当てている。やはりだめか、と再びしょんぼりとしたツバキを見て、セドリックは反射的に口を開いた。


「私が先程言ったことに気をつけるならば、一人で行ってもいい」

「公爵閣下……ありがとうございます!」


 ツバキは頬を紅潮させ、満面の笑みで今にも飛び跳ねそうなほど喜んでいた。

 流石にもう言葉を取り消すことはできない。セドリックは唇をへの字に結んで腕を組み、喜びに浸るツバキの様子を見守る。


「本当によろしいのですか」

「……ああ」


 スティーブの耳打ちに重々しく答える。非常に心配ではあるが、ツバキの真面目さや今までの努力を高く評価している。それに褒美を与えてやりたい気持ちは前々から持っていたのだ。


「お前を信用して特別に許可する。言いつけは必ず守りなさい」


 信用という言葉がツバキの胸にじんと沁みた。力強く返事をし、何度も礼を告げ、執務室を後にした。


「……甘やかしすぎただろうか」

「よいのではありませんか。嘘をついて遊び回るような方でもないでしょう」


 険しい顔を動かさないセドリックに、スティーブが穏やかな口調でそう言った。やがて小さな声でそうだな、と呟いた主に安堵する。


「ところで、薬師の老婆の孫が何歳か分かるか」

「そうですね……数年前に街で会ったことがあります。今は15歳ほどでしょうか」

「あの子と同年代か」

「ええ。可愛らしいお嬢さんでしたよ」


 それを聞いたセドリックは、やや安堵したように息を吐き出した。











 次の休日、エルネストから受けたお茶の誘いを用事があるからとかわし、ツバキは一人森の中を歩いていた。


 先日口喧嘩をしたせいで彼と顔を合わせるのは気が重かった。だがやや気まずそうにお茶をしようと言ってきた彼の顔すらろくに見ずに誘いを断ってしまったのは、流石に罪悪感が湧いてきた。

 後でちゃんと謝ろう。そして自分の言い分もあらためて聞いてもらおうと考えているうちに、湖が見えてきた。


 昼間の日差しを受けて柔らかく佇む湖のすぐ近くに、石造りの小さな一軒家があった。雪のない畑の中央の道を通り、玄関の扉をノックすると、はぁい、とのんびりとした声が帰ってきた。少しドキドキしながら数秒待つと、きぃ、と軋む音がして扉が開いた。ツバキは勢いよく頭を下げて、手に持っていたバスケットを突き出す。


「あの! 先日はありがとうございました! おかげ様で火傷はだいぶ…………あ、こんにちは」


 扉を開けたのは、アルウェンの方だった。


「…………」


 むすっとした顔でツバキを睨みつけている。


 気まずい沈黙が流れる。

 

「あら、ツバキじゃない。火傷の具合はどう?」


 アルウェンの横からアーシャが顔を覗かせた。ツバキはほっとしてバスケットを差し出す方向を彼女の方に変える。


「見ての通りだいぶよくなりました! 少し引き攣るくらいで、痛みももうありません。お医者さんもすごい薬だって驚いてました。……えへへ、魔法のおかげでもあるけど」

「本当に? それは何より良かったわ。跡が残ったらどうしようかと心配だったの。ねえアルウェン?」

「はあ?」


 不機嫌さがありありと伝わってくる声を上げ、アルウェンは家の中へと入っていった。


「まあ照れちゃって。ツバキもお上がりなさいな。嫌じゃなければ老人の話し相手になってくれるかしら?」

「嫌なわけないです! お邪魔します」


 招かれるままに家に入る。アーシャはツバキから受け取ったバスケットをテーブルの上で開け、中に入っていた白いパンを見て嬉しそうに笑った。


「まあ美味しそう。気を使わせたわね」


 パンは、屋敷を出る時にダムラが持たせてくれた。お礼の品を買うお金も時間もなかったのでありがたく預かったのだ。


「顔色が良くなったのね」

「え?」

「少し環境が改善したみたいね。前みたいに暗い顔じゃないもの」

「……アーシャさんのおかげです。言われた通りちょっとだけ甘えてみたら、だいぶマシになりました」

「それはよかった。素直が一番よ」


 そう言って台所に向かったアーシャの背を眺めてから視線を戻すと、いつの間にか肩に白いふわふわが乗ってることに気がついた。驚きの声を上げると、アーシャが何事かと戻ってきた。


「あら、妖精がくっついてきたのね」

「妖精?」


 おとぎ話の中に出てくる妖精は、羽が生えた手のひらほどの子供のような外見だったが――それとはだいぶ異なる見た目のようだ。大きなたんぽぽの綿毛にしか見えない。


「嫌なところからは離れて好きなところに向かって行くだけの、知能が無い魔力の塊よ。白い子は珍しいわね……まあ、害はないけど鬱陶しいなら追い出しましょ」


 アーシャはひょいとふわふわの妖精をつまみ、窓を開けて外に放り出した。扱いの雑さに苦笑しつつ、ツバキは何気なく室内をキョロキョロと見回す。

 大きなソファに小さな暖炉、不思議な形の黒い机、台所にはダイニングテーブルに二脚の椅子。壁や天井には様々な花や野草が吊るされており、乾燥したハーブのいい匂いがする。


 明るい部屋の隅にある作業台には、干からびた根っこや白い粉末、匙やすり鉢が置かれている。薬を調合していた最中だったのかもしれない。


「気になる?」


 アーシャが手を払いながら言う。


「じろじろ見ちゃってすみません」

「いいのよ。頭痛薬を作っている途中だったの。少しお手伝いをしてもらえる?」

「はい!」


 頼られたことが嬉しくて、促されるまま作業台の脇にあった椅子に座る。知らないことが広がっている机を見ているとうきうきしてくる。アーシャは目を輝かせたツバキを見て笑い、机の上のすり鉢を渡してきた。

 中には乾燥した灰色の塊が二つ。これは何だろう。


「ヤケアトガエルの肝よ。そのまま食べたらお腹を下すから気をつけてすり潰してちょうだいね」


 へっ、と声が出た。そんなものを薬に使っていいのかと固まっていると、考えていることを汲み取ったアーシャが説明してくれた。


「素材には一つ一つ役割があるの。この肝には頭痛を和らげる効果があるけど、お腹を下す。でもシロバイナモの根と一緒に飲むと副作用が相殺されるのよ。そして頭痛緩和の効果を高めるバミリマスの骨を焼いたもの……この白い粉ね。これを混ぜたらとてもよく効く頭痛薬が出来上がるわ」

「へえぇ。毒も混ぜたら薬になるんですね……」


 ゴリゴリと肝をすり潰しながらツバキが感嘆する。結構硬い。


「この前いただいた軟膏には何が入っていたんですか?」

「あれはなめくじのゆで汁を煮詰めたものとホドキグサの葉で作ったの」

「なめくじ……」

「ウフフ。内緒にしておいた方がよかったかしら?」

「ちょっと抵抗はあるけど……でも凄く面白いです。薬がどんなふうに作られているのかなんて考えたこともありませんでした」

「若い子に興味を持ってもらえて嬉しいわぁ。後で薬草の見分け方と簡単な傷薬の作り方も教えてあげる」


 魔術師さんなら役に立つことがあるかもしれないものね、と言われ、ツバキは思わずどきりとした。先週アーシャに泣きついた時に、自分の経歴を勢いのままに伝えてしまったのだ。セドリックに知られたらこっぴどく叱られそうだ。


「あの、私が魔術師ということは内緒にして貰えませんか?」

「もちろんよ。色々事情もあるのでしょう」


 ほっと胸を撫で下ろす。


「アルウェン、あなたも誰にも言わないであげてね」

「んー」


 アーシャの言葉にどきっとした。そうだった、あの少年もいるのだ。ソファに寝転んでお茶をちびちびと飲んでいる彼の姿からは、真面目さを感じることができない。誰かにバラされたらどうしようと失礼な不安を抱いた。


「あの子なら意外と素直だから大丈夫よ。さ、もう十分すり潰せたわね。今度はこの粉とよく混ぜてちょうだい」


 この老婆にはいつも考えを見通されている気がする。じっとりと睨んできたアルウェンに下手な笑顔を返して、作業の手を早めた。











 室内に差し込んだ西日が目に刺さり、ようやく我に返った。それくらい没頭していたのだ 。

 アーシャの手伝いをしながらこれはどんな効能があるだのあれは危険だのと教わっていたら、あっという間に時間が過ぎた。

 新しいことを知るのはたまらなく楽しい。加えてツバキが何かするたびに「上手ねえ」「助かるわ」と合いの手を入れてくれるのが嬉しくて、つい夢中になりすぎてしまった。

 アーシャと二人で同じタイミングで伸びをして、顔を見合わせて笑った。アーシャの真っ白な髪が夕焼け色に染まっている。


「随分と手伝わせちゃったわね。ありがとう。とっても助かったわ」

「いえ! 勉強になったしすごく楽しかったです。自分でも薬のこと勉強してみます」

「知りたいことがあればまた教えてあげるから、また来週にでもおいでなさい。私ももう一人ひ孫ができたみたいでとっても楽しかったわ」


 暗くなる前に帰らなければ。ぱたぱたと帰り支度をしていると、台所からアルウェンがやってきた。魚とハーブが煮えたようないい匂いがする。


「ごはん」


 意訳するなら、もう夕食だからとっとと帰れ、だろうか。


 言われなくともすぐに帰る気でいる。相変わらず向けられるじとっとした目に会釈する。そういえば今日の彼の瞳が赤くない理由を尋ねていなかったなと思ったが、余計なことは聞かないことにした。


「アルウェンは料理上手なのよ。ツバキも一緒にどう? 三人分あるのでしょう?」

「……一応あるけど」

「いえいえ帰ります! 遅くなったら家の人が心配するので」


 こういう社交辞令に甘えるのはたぶんよくないのだ。ツバキはアーシャにお礼を言って忙しなく家を出た。


「せっかく作ったのに」

「あら。食べてほしかったの?」

「……別に」


 つまらなそうに唇をとがらせるアルウェンを眺め、アーシャは嬉しそうに微笑んだ。

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