第6話 川越の隠れ観光スポット伊佐沼

 年に3、4回ほど川越に行っている。

 目的は観光。川越城本丸御殿や喜多院、蔵の街、川越氷川神社といった有名観光地を巡っている。梅雨時限定で川越八幡宮というアジサイのきれいな神社にも行くことがある。

 特に川越城本丸御殿が好きだ。玄関にある立派な大広間。広い廊下。これだけでも小江戸川越の威容が伝わってくる。また、派手な装飾が無いので、侘び寂びを感じられるのもいいところ。

 この立派な御殿を見たいがために、私は1年に1回川越へ行くことにしている。自転車もしくは東武東上線の急行列車に乗って。


 川越のような人気観光地ともなると、通な人にしかわからない観光地というのも存在する。

 そんな観光地を、去年の秋(2022年)の川越サイクリングで私は見つけた。

 三芳野神社で猫に会えなくて傷心していた私は、次の行き先を考えた。

 時刻は午後4時。どこへ行っても閉館ギリギリ。川越祭りに行ったときに見つけた武家屋敷に今行っても、公開時間の関係であまり楽しめないだろう。最悪閉館しているということもあり得る。けれども、時刻はまだ午後4時。どこかへ行っていい風景を撮るには、まだまだ大丈夫な時間帯だ。むしろ、秋の夕方なので、いいものが撮れるのは間違いない。

 Google Mapを開いた。どこかいいところが無いかを調べるために。


 東の方を見てみたら、田んぼの真ん中に伊佐沼いさぬまという沼があった。ため池ぐらいの大きさの沼だった。

「え、こんなところに沼なんてあったの?」

 伊佐沼という謎の沼に興味を持った私は、行ってみることにした。

 国道を挟んだ先にある農道を東へ進む。三芳野神社からそう離れていなかったから、すぐに着いた。

 見晴らしのいい沼だった。対岸にある家々と真っ赤な夕焼け空がいい。葦原もいい味を出している。

 私はウエストポーチからカメラを取り出し、写真を撮った。夕焼けと周りがほとんど畑ということもあってか、寂しげな写真が撮れた。

 湖の周りをまわってみる。

 湖には小さな鳥がたくさんいた。ほとんどは名前も知らない鳥だった。鳥は餌を探したり、空を飛んだりしていた。

 そんな鳥たちの中に、一際目立っていた白く、首の長い鳥がいた。沼の周辺を飛び回っている鳥の2、3倍大きいところから、白鷺だろうか。

 沼の中にいる餌を食べるため、白鷺は水面にくちばしを近づける。そしてゆっくりそれを飲み込む。

 その優雅な動きを私はずっと見ていた。あまりにもきれいな動きだから、白くほっそりとしたスタイリッシュな外見がより際立って見える。

 岸に木造の船があった。使われている材木が古かったことから、昔から使われている物なのだろう。

 使用目的は、おそらく漁だと考えられる。少なくとも、舟遊びとかそうしたものには使われていなそうだ。近くに網みたいなものが張られているから、何かしら養殖しているのか、もしくは湖に住む魚でも捕まえているのだろうと私は推測した。

(ここでどんな生き物を養殖もしくは捕獲しているのか?)

 同時にこんなことも考えた。湖や川などで食べられる生き物といえば、鯉やフナ、ドジョウ、モクズガニぐらいしか思いつかない。可能性は低いが、琵琶湖みたいにそこにしかいない特別な種がいて、そんな生き物を養殖したり捕まえたりしているのではないか、という考えも薄っすら浮かんできた。

 考えれば考えるほど、いろんな説が出てくる。なので、何か養殖したり捕まえたりしてるんだろうな程度に思考を留め、私はまたカメラを取り出し、沼と夕焼けの写真を撮った。

 自然の美しさを残した景色のいい場所が川越にあったことに、私は感心してしまった。


 後日川越に住んでいるフォロワーさんに、伊佐沼のことを聞いてみた。

 フォロワーさん曰く、

「伊佐沼は古代蓮がきれい」

 と答えていた。

 気になった私は古代蓮についてGoogleで検索した。

 件の古代蓮は、いつもの見ている上野の不忍池に咲いている普通の蓮よりマゼンタの強いピンク色をしていた。

 私は実物を見てみたいなと思った。だが、蓮の花が見れる時期は暑くて湿気が多い。それに梅雨でもあるから、暑さに弱い私の体が持ちそうにないので無理そうだ。

 また、川越に住んでいるフォロワーさんは、

「あそこいつも白くて大きな鳥がいるんだよね。白鷺っていうのかな?」

 とも話していた。どうやら伊佐沼には、白鷺がよくいるらしい。

 その後川越に住んでいるフォロワーさんとシラコバトなんかの話をして、話が終わった。

 また機会があったら、伊佐沼へ行ってみたい。今度はもっときれいな夕焼けを撮るために。

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