第26話 交わす拳とジャンジャンブルティーと剣
5月終わり頃
太陽が地平線より昇り始めた頃、首都クラウディウスの数ある一つの大き目の公園の中にて私とハオシュエンさんが組手をしていた。
「はぁ!」
その渾身の一撃を両腕で防ぐ。
だが、受け止めきれず後ろに倒れてしまう。
「そこまで!」
シンユーさんが止めの声をかける。
毎日指導を受け、鍛錬を重ねてるが共に鍛えてるから全然勝てない。
悔しい。鍛錬を積んでも勝てない。
「大丈夫?」
ハオシュエンさんが私に手を差し出す。
「大丈夫。まだ続けられる。」
私はその手を握り立ち上がる。
「君はもっと小さく素早い一撃を混ぜるべきだ。」
シンユーさんがそう言いながらこちらへと来た。
「前にも言った通りこれからは元の硬い物に有効打を与える技だけでは無く布だけを纏った者に有効な腕などを使った小さく素早い一撃を使っていくべきだ。」
私はそれに少し思う物があるものの同意の返事をした。
シンユーさん曰く私が使う格闘技‐お父様から教わった格闘技は鎧を付けた相手を想定したものであると指摘された。
確かにそうだ。
お父様曰くこれは自らの
だが、この国での万全の装備は少し前に出回り出した魔力を弾く染料を塗布した衣服を着る事だと聞いた。
ピンと来ないが。
ともかくそういう事で鎧に対する有効打の為大振りで隙の多い攻撃ばかりではなく小さく確実に当たる攻撃で痛みを蓄積していく攻撃をしていくのが望ましいとの事でショーテイという掌で殴る技を教えてくれた。
ただ、普段しない行為なので意識しないと出来ないので咄嗟の行動が出来ないのが課題だ。
「それとここの所動きが以前と比べて鈍いぞ」
「………………」
私は閉口した。
理由はある。
ただ‐
「ふぅ。一旦休憩しよう。」
シンユーさんにそう告げられる。
私は邪魔にならないように端の方に置かれてる段差に腰掛ける。
空を見上げてボーと考える。
悪いと思っていたもので誰かが救われている。
その事実に未だに考えが纏っていない。
「ほら。どうぞ。」
そう声をかけられた。
視線を向けるとそこにはハオシュエンさんが両手に木のコップを持っていた。
「ありがとう。」
私はコップを受け取る。
コップの中身は私の髪のような黄金色で匂いは少し苦味のある柑橘系の爽やかな香りと強い、ほのかな甘味を持った香りが混じった匂いだ。
初めて嗅いだ匂いだ。
私は一口含み、驚きにより咳き込んでしまった。
「なに、これ!辛い!」
口内に広がるピリリとした味わいに蜂蜜のような独特な甘さを含んだ味わい。
こんなの初めて飲んだ。
そう文句を言った後彼は笑った。
その後、解説をしてくれた。
「キョウ茶。この国の言葉ではジャンジャンブル茶だね。」
ジャンジャンブル。
確か地面から葉っぱだけ出ててその根茎は淡い黄色をしていて風味付けなどに使われる物だったはず。
「これは飲むと痛みが和らぐからよく持たされてるんだ。どう?味は?」
「不思議な味。ピリピリ。後に甘い。」
そう伝えて改めて一口飲む。
うん。不味くはない。
ただ、こう頭の中が混乱する味だ。
「さて、悩みがあるなら聞くよ。」
ハオシュエンさんがそう訪ねてきた。
話すべきだろうか?
……………………話そうかな?
私は友達を失った。
どうしてあんな結末になったのか未だに分からない。
もし、あの3人ときちんと話し合っておけばあんな結末にならなかったのかもしれない。
だから私は拙いながらも少し前に起きたことを話した。
「悪い事で人が救われたか。」
ハオシュエンさんがそう呟く。
私は話を続ける。
「悪い事。悪い。でも。助かってる。良いのか?」
「…………人はバランスが大事だと母さんが言っていた。」
そうポツリと呟いた。
続けて話す。
「この世界は混沌とし、様々な物が混ざり、なりたっているて。光と闇。剛と柔。男と女そうやって別れ、相反しつつも一方がなければもう一方が崩れてしまうと言っていた。」
バランスか。
分かったような分からないような。
「まぁ、良いんじゃないの?良いも悪いも自分で決めて。ただ。」
そう一旦区切って話出す。
「その行為をして親しい人に顔を出せなくなる事はするなて両親に言われてる。」
そう言って立ち上がった。
親しい人に顔を出せない事はするな。か。
その言葉がスッと心に入った。
「おーい!そろそろ休憩はお終いだ。リーティエ!君は木剣を使ってくれ。」
シンユーさんにそう声を掛けられた。
「さぁ、行こうか。また相手をお願いするよ。」
彼は私に手を差し出したのでそれを握り、立ち上がる。
私は持ってきた木剣を持ってハオシュエンさんと向き合い構える。
「始め!」
シンユーさんの掛け声で私は距離を詰め木剣を振り下ろす。
それをハオシュエンさんは横に避けたので素早く斬り上げて追撃をする。
それを彼は素早く蹴りで弾いた。
だから私は弾かれた力を殺さず、回って勢いを増し横斬りを振るう。
彼はその一閃を倒れて避けた。
彼は私の体に両脚を絡めて体全体を回して投げた。
それを私は受け身を取るように転がり距離を取る。
立ち上がった時には彼は既に拳が振りかぶっていた。
避ける事が出来ないと判断したので片手を上げる。
「ッッ!!」
拳が前腕部に当たり少し後ずさる。
私は痛みの余り受けた腕を振る。
「大丈夫かい?」
「大丈夫。」
これは強がりだ。
腕は痺れてしばらく使えそうにないし、魔法は詠唱が必要だから近距離での戦いには不向きだ。
こうなればやる事は一つだ。
背筋を真っすぐし半身になるように立ち、使えない腕を腰に当て、拳を額まで上げ、剣先を彼に向ける。
これは片腕を怪我した時の構え。
これならどんな攻撃にも対処できる。
私と彼は構えたまま見つめ合う。
お互いどちらかが動けば釣られて片方も動くだろう。
「はぁ!」
ハオシュエンさんが先に動きだした。
また先程と同じで距離を詰めて来た。
確かに剣は刃に触れねば脅威になり得ない。
だから刃が当たらぬ至近距離である懐に飛び込むのは合理的だ。
だから私は
下がりながら斬る。
避けられこちらへと踏み込んでくるが構わず下がる。
下がりながら相手が向かってくる瞬間に斬る。
何度か繰り返して相手が私の行動が理解したと判断した時私は相手が踏み込んだ瞬間に私も
剣技に距離を詰められた時の対処方が無いと思ったか?
ハオシュエンさんも私が近づいたのに合わせて肘で殴ってくるが私は上に飛び、回りながら剣を振る。
木剣は背中に当たり彼は倒れる。
「そこまで!」
シンユーさんが止めの合図を送る。
着地して木剣を構え、相手が立ち上がり再度攻撃してくるのに対処出来るようにする。
「あー。負けた負けた。」
彼は寝返りを打って上体を起こして両手を上げて笑いながらそう言った。
私はそれを聞いて剣先を降ろした。
「やっぱり剣を持ったリーティエは強いね。何度も挑んでるのに勝てないよ。」
「ハオシュエン。剣。振るう?」
「いいや。武器は性に合わないからいいや。」
「なに。お前達はちゃんと成長してるぞ。」
そう言ってシンユーさんがそう言いながら近づいて来た。
「まず、ハオ。お前はちゃんと斬撃に対処出来てたぞ。距離を離されても詰めてたのは良かった。」
「ヘヘっ。」
ハオシュエンさんは照れながら後頭部を掻く。
「だが、調子に乗るな。驕りは足元を掬われる原因だぞ。」
「分かったよ。」
「次にリーティエ。君の動きも良かった。距離を詰められたら下がる。突然近づいて交差しながら攻撃をする。いい判断だ。だが、足元が不安定な時の対処法と交差した時の攻撃を考えておいてくれ。分からなければ二人共私に相談してくれ。」
私達は返事をした。
その後、帰らなければならない時間なのでお開きとなり、今日のお菓子である酸っぱいジャムを甘くしっとりとした生地に包まれてるお菓子を貰って別れた。
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