第21話 未知の頭脳
石を通して伝わる感情。
不安。
拒否感
妥協。
だが、一際大きな思い。
必ずあの厄災の獣を封印する。
そんな強い思い。
「ーちゃん?リーちゃん!」
私は揺さぶられ途切れていた意識が覚醒する。
今のはいったい?
まるで何か別の場所に行かなければならないそう思わせるような一瞬だった。
「大丈夫?」
2人が心配そうにこちらを見る。
「大丈夫。心配。無い。」
私は笑って誤魔化す。
「じゃあ、一度休憩としてここのカフェに行かないか?」
「良いね!それ!行こうよ!」
私も首を振って同意する。
石をもう一度見る。
石に込められた思いは伝わった。
だが、私には家に帰るという何よりも優先する目的があるんだ。
だから、石の指し示す地に行く事はないだろう。
だが、強い思いを込められたエーテルをこの石があった地に届けなくてはいけないという思いが心に残る。
私はその思いを振り切るようにその場を離れ2人の後を追う。
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その後カフェで食事と休憩した後にメダル室を見た。
メダル室では歴代の使われていた貨幣や記念に使われたメダルが飾られていた。
何故、貨幣や記念に作られたメダルが飾られていたのか分からなかったがトーマスに説明され、ようやく理解出来た。
あれには思い出が込められてるのだ。
皆が交わした日々。
何かの
私は今まで贅沢は身を滅ぼすと教わっていた。
人は身に余る物を持つとその重さに縛られ、その身を滅ぼすと。
だが、思い出は記憶の中に留めてるのだから物として残している必要はないのではと思うのだがこの地の文化なのだろうと思い、口に出さなかった。
その後、ミイラ?という包帯を巻いた死体の部屋に来たが、
「なんかこの部屋気味が悪いよ。」
確かにこの部屋は空気が気持ち重めで長時間居たくない雰囲気だ。
そのため私達はその部屋を通り抜けた。
次に訪れたのは昔の髪を模した被り物、かつらという物らしい。
さっきも見たけどなぜかつらという物があるのだろうか?
髪は生えてるのだから髪を伸ばして髪型を変えればいいのに何故そんなのが必要なのだろうか?
そう疑問に思ったがクーちゃんがそれは口に出しちゃだめと初めて見た凄みで思わず分かったと返事をしてしまった。
次に向かったのがテュッレーニア室だ。
そのテュッレーニアだが、なんでもこの国がある島とは別に海を挟んだ大陸という土地のある地の古の文化との事だとの事。
そこには茶色の壺や青銅で作られた像や独特の絵が飾られてる。
その後、鉱物室に来た。
そこでミスリルとアダマンタイトを棒状の物体にして展示されているのに驚いた。
次に訪れた所は版画の部屋である。
そこは人物の絵や風景を描いた絵が飾られている。
「ねぇ。リーちゃん。何か手がかりは見つかった?」
絵を一通り見た後クーちゃんにそう尋ねられた。
それに私は首を横に降って見つかってない事を伝える。
「そうか。となるともうあるとしたらあそこしかないかな?」
あそこ?
それから私達二人は地図を見ながら進むトーマスに着いて行く。
「ねぇ、トーマス〜。何処に行くの〜」
クーちゃんが尋ねる。
「図書館だよ。」
トショカン。また私の知らない言葉が出た。
「トショカン?なに?」
「図書館ていうのはうちにある書斎の大きな物と思ってくれていい。」
大きな書斎。大体想像出来るが何がすごいのか分からない。
そうこうしてるうちに図書館についた。
そこは高い天井があり、丸い天井になっている。
そして広い室内を壁一杯に本棚が置かれ、本がぎっしりと詰められていた。
そして床の方には中央に円状に並べられた机が置かれており、その周りに花びらのように机を並べられていた。
確かにすごい。
トーマスの家の書斎よりも広く本の数も多い。
「さぁ、いつまでもここに立ってると迷惑をかけるから本を探そうよ。」
トーマスに促され私達は歩き出す。
歩きながら視線は机の方に向く。
座っている人は仕立ての良いスーツの男性や煌びやかなドレスを着た従者を連れてる女性もいれば、汚れてはいないものの服はくたびれており、恐らく暑いのか袖を捲ってその袖から傷だらけの腕を出している男性や作りはあまり良くない服を着る女性など様々な人がここにいる。
「あぁ!あそこに次の舞台の原作がある!読んでいい?」
クーちゃんが高い位置にある本を指差す。
「んー?あそこの本に手が届かないな。」
トーマスが背伸びをして取ろうとするが届いていない。
とすると私とクーちゃんでも届かないだろう。
「待ってて。取ってくる。」
私は二人にそう告げて離れた所に立てかけてあるハシゴに向かう。
「ひひひ!お嬢さんやお嬢さんや!」
ハシゴがある所に着くとそう声をかけられた。
途端に鼻に突き抜ける酸っぱい刺激のある臭いが突き抜ける。
『臭い!』
私は思わず叫んでしまった。
鼻を抑え振り向く。
そして驚愕した。
その風貌はボサボサの手入れも何もされてない白い髪。
色褪せ黒く変色し擦り切れ襤褸を纏いそこから覗く腕は枯れ木のように細くくすんだ黒い肌の老婆がそこに笑顔で立っていた。
『ほうほう。お前さんこの言葉が分かるのかい?』
その言葉は!
『その言葉話せるの!?』
『あぁ、話せるとも。それどころかこの言葉がどこの地の言葉か知っているとも。』
嘘!ずっと探していた手がかりがようやく目の前に!
『早く教えてなさい!』
『あぁ、じゃが。』
老婆は手を上げ、私の顔の前で振る。
その瞬間
私は一瞬立ち眩みを感じた。
今のは何だ?
私は顔を触ってみるが何も変化はない。
『ふむ。おぬしの物語はなかなか奇怪なものじゃのう。』
その声を聴き、老婆に顔を向ける。
すると老婆はどこから取ったのか本を一枚ずつめくり読んでいる。
『途中から文章の綴り方が違う。まるで途中で書き手が変わったようじゃ。』
『分からない事を言うな!早く読ませて!』
老婆はしかたないという表情をし、私に本を差し出す。
私は本を受け取る。
本の表紙は水を思わせる透き通るような青に輝く白、題名は....
『な!』
私はその事実を否定したくページをめくる。
だが、いくらめくっても、めくっても
『文字が読めない。』
その事実に驚愕する。
正確にいうと文章はこの地の文字で書かれてるので少しは読める。
でも飛び飛びで文章の大部分が読めず全てを理解出来ない。
その事実に愕然としてると本を老婆にするっと取られる。
『これはお前さんがまだこれを知る必要はないという意味じゃ。』
老婆は本を閉じ、表紙を撫でる。
何故かむず痒い気分になった。
『この本はここにしまっておく。読む資格を得た時改めて読むと良い。』
そう言って本を近くの棚にしまう。
「励め。若うど。擦れば道は指し示させられるじゃろう。」
そう言うといきなり老婆は手を叩いた。
パン!という音に思わず目をつぶってしまった。
目を開くと老婆は居なくなり辺りに爽やかな酸っぱい匂いが辺りに漂っていた。
私はその後二人を連れてきて本を読んでもらおうとしたがそこにはあの本はなかった。
だが、その棚は本が入る隙間が無く、まるで最初から本はなかったようだ。
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