第2話 突然現れた少女
「はぁ、全く法律を変える事1つだけでこんなに大変なのはなんとかならないのか?」
向かい側に座る彼が笑う。
「お疲れ様です。屋敷に戻ったら一杯やりませんか?北の方で作られた良い琥珀酒がありますよ。」
今、私は中立派の議員の説得の帰りに着いてる所だ。
私は向かいに座ってるジミー・ルトゥハウに最近の地区の事を聞く。
「なぁ、ジミー。最近の地区の様子はどうだ?」
「はい。最近は新しくC12通りの6人に仕事を斡旋しましたよ。それぞれ農耕地に3人。工場地帯に3人紹介しました。」
「農耕地に送った3人の素性は?」
「身寄りの無い男2人に同じく女性が1人です。農耕地の管理人は信用に足る人物です。酷い仕打ちは無いでしょう。工場地帯に送った3人にはそれぞれ妻がいる者、妻子がいる者に妹がいるものです。工場長は真摯な女神の信仰者です。労働者全員に昼食出す人格者ですよ。」
彼は私の統治するメイルボーン地区の
裏の管理者と聞こえは悪いが彼は他のその手の者達と比べるのも彼に失礼だ。
まず、彼は家なき人々の為に職の斡旋。
しかも、ただ仕事の紹介をするのではなくその人物の素性に出来る事も考慮して長期で働けるように考えて紹介してるのだ。
他にも街を守っている者を統括してるのも彼だ。
街には首都警備騎士団が勤めてるのは当たり前だが、その者達だけでは手が届かない所等も受け持ってる。
「それで例の件だが。」
「はい。将来見込みがある子を集めてます。例えば、」
そこで事件は起きた。
「お前!止まれ!」
行者もしている我が家の騎士が叫ぶ。
続いて杖の硝子が割れる音が響く。
なんだと私と彼が窓から外を覗き込む。
外では見知らぬ男性が何かを抱えてこちらに走ってきて、
爆発音と魔導器の発動音である硝子の音が辺りに響き渡り、私は気絶する。
「うぅ。」
なんだ。一体何が起きた。
キーンと頭に響く音を振り払う。
ジミーは大丈夫か?
彼を見ると頭から血を垂らした状態で懐から短杖を取り出して上の方を叩いてる。
よく見ると横に座席があり、上に扉がある。
どうやら馬車は転倒してしまったようだ。
私が状況を理解すると辺りで魔導杖の発砲音が絶え間なく鳴り響く。
「クソ!襲撃だ!」
彼がドアをどうにか開けようと叩きながら叫ぶ。
その時馬車の天井部に当たる所を外側から叩く音が聞こえた。
「ヘイデン様!ジミー殿!ご無事なら何か返事をして下さい!」
外から我が家の騎士の1人セドリックの声が聞こえた。
「我々は無事だ!」
私はそう大声で叫ぶ。
「もうすぐで扉が開く!援護をしてください!」
そう彼が叫ぶ。
「わかった!こちらも火力が足りない!扉を開けたら援護する!」
外にいるセドリックがそう返事を返す。
「聞きましたね。立ち上がって下さい。もうすぐ扉が開きます。」
「あぁ。」
私は立ち上がる。
「せーの!」
扉が開かれる。それと同時にけたたましい杖の発砲音が連続で鳴り響く。
「ご無事で!早く私の手を!」
外からセドリックが手を差し出す。
「行って!早く!」
ジミーが急かす。
私はセドリックの手を掴み、昇る。
下からジミーが押し上げてくれたのでスムーズに横転した馬車の上に登れた。
外ではアルフが盾で馬車の入り口を守りその他の騎士が馬車を盾に襲撃者達に反撃する。
私が昇るとジミーが登り始める。
その時。アルフの脚に矢が刺さり、前方の方へ倒れる。
「アルフ!」
私は叫ぶ。
だが、私はセドリックと共に馬車の影へと落とされる。
私は地面に落ちると同時に立ち上がる。
「アルフ!今助けに行く!」
私がアルフを助けに行こうとすると騎士に取り押さえられる。
「ダメです!」
騎士のアリスターがそう言う。その背後にジミーが落ちるように陰に隠れる。
「貴方が死んでは襲撃者の目論見通りです。早く安全な所へ!」
「しかし!」
「旦那!」
ジミーが叫ぶ。
「行きましょう。」
ジミーが何かを堪えるように移動するよう促す。
「ジミー。」
私が呟く。
歯を力強く噛み締める。
「皆、移動だ。」
他の皆は了解と言い、近くの裏通りへと進む。
すまん。そう心の中で謝罪し、走り出す。
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今、俺達は騎士達4人が旦那を守るように前後で挟むような陣形で裏通りを進んでいる。
相変わらず襲撃者達はしつこく追っている。
「えぇい!いつまで追って来る。」
旦那がそう呟く。
旦那の気持ちも分かる。大通りで襲撃してこんな裏通りに逃げられたのならもう失敗と呼んでも良いだろう。
普通なら騎士が来る前に逃げるはず、いったい狙いはなんだろうか?
「この先を抜ければ大通りに出ます!もう少しの辛抱です!」
先頭を走る騎士の1人がそう叫ぶ。
その時、爆発音と硝子の割れる音が響く。
その爆風で俺と旦那が吹き飛ぶ。
「・・・下さい!起きて下さい!ヘイデン様!起きてくださいませ!」
騎士の旦那を起こす声で目を覚ました。
「うぅ。」
なんだ。いったい何が起きた。
周りを見渡す。
俺達が進もうとした道は瓦礫で埋もれて進めない。
そして後方の方から追手が来た。
「なんだよ。無事じゃねぇか。」
追手の1人がガッカリしたように言う。
「貴様ら!皇国議員にしてメイルボーン地区の統治を任せられているヘイデン様と知っての狼藉か!」
後方で殿を勤めていたセドリックがそう吠える。
「あぁ、知ってるよ。」
「な!?」
「お前達は邪魔になったんだ。だからこうして
そう言って追手の6人全員が短杖をこちらへ向ける。
「動くなよ?弾がもったいねぇから。」
「貴様ら!」
セドリックが剣を抜いて追手へと駆け出す。
行くな。そう思って手を伸ばすがセドリックは追手の一斉射に呆気なく死んでしまった。
「ふん。つまらん。次はお前たちだ。」
そう言って全員がこちらに短杖を向ける。
ここまでか。
そう思った時。
カタッカタッと一定の間隔で靴音を響かせながらこちらへ何かが近づいてくる。
それはセドリックの近くの道からヌラッと現れた。
背は子供と言っていい程低く、服装は茶色の長袖のワンピースを着てる事から少女とわかる。
だが、体は濡れており服が体に引っ付いており、顔を隠すように垂れた灰のような銀髪がまるで亡霊のようだ。
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