第14話 杏子先生はくるみのお姉ちゃん!?
「実は私はくるみちゃんのお姉ちゃんなの。
だからわたしのこともくるみちゃんだと思って
遊んでいいんだよ」
(!!)
俺もくるみも驚きが隠せない。
うそまでついて懐かれようとする杏子先生におどろく。
「ちょっ、」
俺が声を出そうとすると杏子先生は唇に人差し指を
当てて『しー』と黙っててと指示する。
俺もくるみも教育者がついていい嘘なのかと
呆れている。
「あんずちゃんはくるみおねえちゃんのお姉ちゃんなの?」
じんのがくいつく。
「そうだよ。だからおねえちゃんとも仲良くしてね」
「うん、わかった。あんずおねえちゃんだね
そっか!くるみとあんずでなまえがおいしい食べ物なんだね」
じんのは杏子先生をくるみのお姉ちゃんだと思い込み
心を許し始めた。
悪影響はない、結果オーライだと俺は思うようにした。
じんのは杏子先生ともやりとりができるようになったが
くるみ>未知さん>杏子先生という序列は変わらなかった。
「杏子先生、お土産も食べましたし、部活動として
今からなにをするんですか?」
お土産もひと段落してくるみは本題について触れた。
「あれっ?言ってなかったっけ?」
全員が口を揃えて言う。
「なにも聞いてません」
「ごめん、ごめん、この合宿は親睦を深めるだけだよ」
「えー!」
みんなが口を揃えて呆れる。
「あっ、来年度の活動についてと新入部員の勧誘について
くらいは話しましょう」
思いついたかのように話す杏子先生。
「わかりました。リビングでも和室でもどちらでもいいので
話し合いしましょう」
結局決まったことは、新入部員の勧誘は俺とくるみの役割。
未知さんはそういうことが不向きということでやりたくないとのこと。俺は内心、(それは部員が増えないわけだ)と思った。
部としては、未知さんは小説を書く。くるみも小説を書く。
そして俺は2人の作品の読む………
それと2人の作品と部活動の広報活動をすることになった。
夜になり、女子3人で晩御飯を作ってくれることになった。
じんのを連れて4人で買い物に出かけた。
それぞれが一品を作る。
おれはご飯さえ炊いておけばいいとのことだった。
未知さんは肉じゃが、
くるみはきんぴらごぼう、味噌汁
杏子先生は正体不明の料理、
じんのも同じく正体不明。
「ごめーん、たまーに料理失敗するんだけど
たまたま今日がその日だったの……」
未知さんもくるみも俺も『本当は料理できないんだな』と
不出来の烙印を杏子先生に押した。
未知さんもくるみも薄味でおいしい。
くるみの手料理は何度も食べたことがあるから相変わらずおいしいと思う。
びっくりしたのは未知さんだ。
正直、くるみより美味しかった。
料理をしている様も美しかった。
さらにびっくりしたのは杏子先生の料理下手だ。
なんとも言えない得体の知らない料理を完成させた。
じんのは子供のおままごとの料理だった。
「おいしい、ほんとうにおいしい」
未知さんの料理を食べた瞬間に俺は声が出た。
杏子先生もくるみも俺の声に誘導されて食べる。
「おいしい」
「おいしー」
それぞれ驚嘆する。
未知さんは照れもせず何食わぬ顔で
料理を食べている。
さらに未知さんは杏子先生の料理もじんのの料理も何食わぬ顔で食べていた。
「工藤さん、杏子先生の料理はどう?」
「まずいわ、でも食べられなくもないわ」
杏子先生はこめかみがピクピクしている。
まずくても食べ切ろうとしている未知さんは作ってくれた人に感謝できる人なんだろう。
くるみは優等生でなんでもこなすけど
料理の腕で未知さんに負けたことが言葉には表さないが
悔しそうだった。
「くどうさん、将来いいお嫁さんになりそうですね」
おれは明るく話しかけた。
「………」
一瞬照れたのがわかった。
「これくらい誰でも作れます」
いつもの口調をキープしようとしているのがわかる。
おれはくるみがやきもちを妬いている感じがした。
俺が工藤さんにそう言うことを言って、
工藤さんも照れてるからだろう。
「先生の料理は不味かったわね。
つぎはちゃんとしたの作るから」
杏子先生は次こそはみんなを唸らせてやるモードに入っている。
工藤さんとくるみは全て食べ切る。
流石の2人。たとえ不味くても先生とじんのが嫌な思いをしないように食べ切っていた。
あとでわかることだが未知さんもくるみもお互いが意識していた。自分の方が気の利く女性を演じたかったようだ。
言い換えるとお互い負けたくなかったようだ。
それが全てを食べ切るという方向に向かったのだ。
夕食後は先生の発案で過去の生い立ちを話すことになった。
そこで未知さんとくるみの生い立ちが明らかになる。
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