第31話 主人公の資格-創作論

 妻と、今日お出かけした時に娘が静かにしてたよ、という話をしていた時。

「しずか……のぶた?」

「野豚?」

 なぜ野豚が出てくるのか。そういや野ブタをプロデュースというタイトルのドラマがあったっけ。タイで流行ったって話は聞かないけど。

 そんな思考が頭の中を駆け巡った直後、ふと理解が走る。

「のび太? ドラえもんの?」

「そう、それ」


 さてそんな野豚、もといのび太君ですが、彼は『ドラえもん』という作品の副主人公です。連載初期は人物紹介で主人公と書かれていたとか、ドラえもんとのダブル主人公だとする話もありますが、作者である藤子・F・不二雄氏が複数回言及してるので、作者はそのつもりだとしていいでしょう。

 しかし、ネットで見ていてものび太が主人公だと思っている人は決して少なくない様子。私自身、子供の頃は普通にのび太を主人公と考えていました。


 この作者と読者の認識の差がどこからくるのか。

 それを考えた時に行き着いた答えが、視点の違いかなというところ。

 読者、というか視聴者は単話のアニメを見るのです。いじめられたのび太がドラえもんの道具で見返したり、調子に乗りすぎてしっぺ返しをくらったりといった各話の基本パターンでは、のび太が主人公。

 一方、作者は『未来の世界の猫型ロボット、ドラえもんがタイムスリップしてダメ少年の更生をする」という連載全体を貫くストーリーを見ているので、難易度の高いミッションを与えられたドラえもんが主人公になる。

 やはり物語とは変化する事が大事なのであり、その主体となる者が主人公だと思います。

 のび太も、いきなりロボットを送りつけられて更生させられるのではなく、自分の運命を知って主体的に更生を選べば、堂々と主人公だったのではないかなと。

 一度、ある作品の感想で「この作品の主人公は誰か」の意見が作者の方と合わなかった事があります。

 作者の意識として誰を主人公においても自由ではあるのですが、それを読者に認められるには、変化を意識してちゃんと主人公らしい活躍をさせてあげないとな、と思います。

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